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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
八章 夏休み ~沖縄編 3日目、最終 『決意』~
172/204

俺より可愛い奴なんていません。8-23


 ◇ ◇ ◇ ◇


沖縄 最終日、Bloomブルーム


あおい達は遂にBloomへと到着すると、一番の世話になったまゆずみへと挨拶をした。


これまで世話になったお礼と、本番である修学旅行の際には、よろしくと頼み込み、各々に詰まる話をそれぞれ始め、集団はばらけ始めた。


葵は終始、しずかの様子が気になっていたが、彼女は依然となんら変わりなく、葵にも親しげに接してきていた。


これが静の気遣いなのか、昨日の事を理由に、幼馴染としての関係さえも壊れる事を嫌ったのか、葵には分からなかったが、葵は依然と変わらず接してくれる静に感謝していた。


葵は他の生徒同様、Bloomで世話になった先輩の従業員と話をしていると、不意に黛に呼ばれた。


なんだかんだで、一番、黛と接点のあった葵は、個別で礼を伝える為、素直に彼女の申し出を承諾し、無言で手招く彼女の方へと向かって行った。


「よッ! 今日で最後だね!」


「はい、なんだかんだ色々お世話になりました」


「いやいや、何度もお礼言わなくてもいいって!

てゆうか、そんな事より、昨日……、静から聞いたよ?」


ニヤニヤと急に大事な事を話し出す黛に、葵はヒヤッとしながら周りを確認すると、葵と黛の会話を聞いているような、あるいは聞こえているような人は誰も見受けられず、内容が内容だったため、葵はほっと落ちくように肩を降ろし、一息ついた。


流石の黛もそこらへんの配慮は怠っておらず、葵を自分の方に招いたのも、会話の内容を聞かれないようにするためだった。


「なんですか? 急に……」


「なんですかも何もないでしょッ!?

昨日、あんな連絡を私に入れといて~……」


「あれは……、すみません。 助かりました……」


静の向かいに来させるように、メッセージを送ったことを引き合いに出され、この話をしたくないと言わんばかりに、少し不機嫌な態度を、始めとっていた葵だったが、自分の非を認めた。


「まぁ、男の対応としては及第点なんじゃない? 知らないけど……」


黛の言う及第点がなにを基準としたものなのか、さっぱり分からなかったが、興味も尋ねる理由も無く、Bloomに訪れてからしきりに気になっている静へと、自然に目線がいった。


そんな葵の視線に黛は気づき、話し始めた。


「心配いらないよ? 

確かに、昨日はショックだったろうけど、静は強いから……。

乗り越えたわけじゃないだろうけど、葵が気にしているほど、引きずってはないよ」


「そうですか…………」


「なになに? そんなちょっと残念そうな声だしてぇ~……。

まだ、自分の事引きずってるのかとか考えちゃってた??」


黛は本心で葵がそう思っているとは、思っていなかったが、それでも場を和ますとともに、葵の心配も紛らわせるようにと、わざと嫌味たらしく、ニヤニヤと笑みを浮かべ、葵を挑発するように尋ねた。


そして、黛の思惑通り、葵は静から視線を切り、黛へと視線を戻し、明らかに不満そうな表情を浮かべた。


「別にそんな事思ってないですよ。

ただ、あれでよかったのかどうか……」


葵は不満をぶつけつつも、昨日から感じていた一抹の不満を、つい零す様に発した。


「あれでいいも何も、静にとっては最悪でしょ?

でも、葵にあれ以上何ができたの??

好きでもないのに、好きだと答えて付き合うの??

恋愛なんて、成功しなきゃどう転んだって、苦い思い出にしかならない。

好きになった時点で辛いもの、傷つくものなのよ」


葵は黛の言葉に何も言い返す事は出来なかった。


しかし、黛の言葉の内容とは裏腹に葵は、葵の行動を肯定するわけでは無かったが、自分が責められているようには感じなかった。


ただ、なるようにしかならないのだと、そう言われているように葵は感じていた。


「まぁ、静の事は別に葵が心配することないよ?

本州からこっちに来た時からの付き合いだもん! あの子の根っこの強さはよく知ってる。

それこそ、葵よりもね!

なにより、経験豊富な私が付いてるからね!!」


「そうですか」


葵は黛言葉のおかげか、少しずつ彼女とのいつものやり取りの調子を取り戻し、テキトーにあしらう様に今度は答えた。


「てゆーか! 私はあんたの方が心配だよ!?」


「は? なんでですか??」


「高校生のがきんちょの癖して、恋愛観が中年オヤジみたいだから……。

その割には、頑固な面が強すぎて、小学生並の経験しか積んで無さそうだし……。 

下手したら小学生の方が恋愛経験豊富なんじゃない?」


葵は黛の言葉にムッとしたが、自分の姉に似た、何故か言い返せない雰囲気を黛から感じており、言い返せたとしても、再び余計に言い負かされそうなそんな気がしていた。


葵はそんな予感を感じつつも、黛に言葉を返していった。


「流石に小学生よりかは分かってると思いますよ?」


「最近の小学生は凄いんだぞ? 彼女、彼氏を持ってる小学生だっているんだから。

それと……、じゃあ、ついでだから聞くけど、葵はこれからどうするつもりなの?

静を好きじゃないから、ただ振ったってわけでもないでしょ?」


「どういう意味ですか??」


葵は一瞬、昨日静に自分の好きな人がいる事を告げた事を思い出し、静はあの後、事の経緯を説明する流れで、そのことを黛に伝えたのかと葵は考えたが、静がたとえ近しい人間だからと言って、無断で伝えるとは葵は思えず、とぼけた様に、そして黛が何を言わんとしているか探るように尋ねた。


「好きな人がいるから振ったんでしょ??」


葵は黛の言葉に一瞬、ドキッと胸を跳ねらせ驚き、表情は固まり思考すらも一瞬固まった。


「静に聞いたんですか?」


葵は一番ないと思っていた選択制を恐る恐る黛に尋ねた。


「静が言うわけないでしょ。

冷静に考えれば何となくわかるわよ。

誰も好きな人がいなければ、幼馴染な事も相まって、その場で振るなんてこと、あんまり考えられないし。

最初は別に好きじゃ無くたって、付き合っている内に好きになる恋愛だってあるでしょ。

だけど、葵はそれをすることは無く、曖昧に断ることも無かった……。

考えられるのは、それしかもうないでしょ??」


葵は黛に見透かされているような、そんな感覚を感じ、誤魔化しは通じないと悟った。


「別に、好きな人がいなくたって、振った可能性もあるんじゃないですか?」


「それは絶対にない」


葵は最後に引っ掛かった点を黛に尋ねると、きっぱりと堂々とした物言いで言い放ち、続けて葵に向けて話し始めた。


「静の恋愛相談は私が受けてたからね!

まさか昨日、告白しちゃうとは思わなかったけど、告白する時の方法とかも色々と伝授してたし……。

例えば、相手に好きな人がいなかった場合は、そのまま済し崩しな形で、無理やり付き合っちゃえッ!みたいなね」


葵は全てに合点がいき、黛が昨日の事の流れを、大体すべて把握している事も分かると、体の力が抜けていき、これから様々な質問攻めにあうかと思うと、少し憂鬱に感じていた。



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