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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
八章 夏休み ~沖縄編 3日目、最終 『決意』~
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俺より可愛い奴なんていません。8-11


 ◇ ◇ ◇ ◇


あおい亜紀あき美雪みゆき真鍋まなべ、そしてしずかがそれぞれBloomへと戻ると、時間はそろそろ葵達が泊るホテルへと戻る時間に差し迫っていた。


葵と亜紀がBloomへと戻ると、Bloomを離れるために吐いた口実もあって、戻るなり長谷川達に取り囲まれ、説明を要求され、更には具体的な話を問い詰められた。


しかし、誤解を生む発言をした葵は、特にそういった事に関心が無く、質問されてものらりくらりと生返事をするだけで、結局のところ必死に弁明することになったは亜紀の方だった。


葵達は美雪の後を付けていたため、美雪達より先に、Bloomに返ることが出来ず、長谷川達に追及される自分たちを、美雪に見られる事になったが、Bloomを離れたのも美雪達が一番初めであった事から、美雪は長谷川達がなぜ興奮気味に、葵達に質問をしているのかが良く分かっていない様子だった。


そんなこんなで、葵と亜紀に追及していると、すぐにホテルへ帰らないといけない時間になり、真鍋は賑やかな長谷川達を制し、まゆずみに一言、いつも通り礼を告げると、自身の生徒をまとめホテルへと戻った。


ホテルへ戻る間も、亜紀への追及は終わらなかったが、亜紀の必死な弁明と、男子には殺気にも似た圧力で、半ば力づくで亜紀の証言を認めさせ、ホテルに着くころにはしっかりと、その話題は再び出ることなく、誤解を解くことに成功していた。


そうして三日目ともなれば慣れた形で、夕食、入浴と次々にこなしていき、最終日に備えるため、早めの就寝となろうとしていた。


ホテル宿泊最終日も例によって、ロビーの一角を借り、簡単に最終日のミーティングを行っていた。


最終日と言っても、この三日間で葵達の働きもあり、この事前旅行中に行わなければならない事は、ほとんど終わっており、ほぼほぼ一日フリーな時間になる予定だった。


真鍋から簡単な明日の予定の確認を終え、いつも通りに確認が終わればミーティングも終わるため、葵達はそれぞれが集中力を切らし始め、話が終わり次第部屋に戻ろうと考えていると、真鍋はミーティングを終えることなく違う話題を切り出し始めた。


「あぁ~、お前ら……。

何かもう気が抜けてる奴もいるけど、今日はこれで終わりじゃないんだ……」


時間も夜20時を周り、ぼちぼち部屋でゆっくりしようかと思う生徒が多くいる中、若干乗り気でないような様子の真鍋が、少し面倒くさそうに、葵達にそう話し始めた。


「実はな、夜にしかできない事で、事前旅行中にお願いされてる事の一つをこれからやって貰いたいんだ」


どこか少し不穏な空気が流れ始め、嫌な予感を感じた生徒達は怪訝そうな表情や、不安そうな表情を浮かべ、互いに顔を見合わせた。


そんな葵達に真鍋はゆっくりと、これからすることを告白した。


「え~っとな、今からお前らには肝試しをしてもらう」


真鍋の一言に、瞬時に反応できる生徒はおらず、呆然とその場に立ち尽くしていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


真鍋の告白から数分。


あれから、呆然としていた葵達はそのまま真鍋の説明を聞かされ、内容を理解しつつも、拒否権は葵達には無く、そのまま現地へと行くことになっていた。


教員たちは、ホテルから割と近い位置に、肝試しの候補箇所を考えており、真鍋の話を聞く限りでは、どうやら候補箇所として考えているのは3箇所だと、葵達は伝えられていた。


真鍋が道柄説明しながら生徒を引率していくと、すぐに一つ目のスポットへと到着した。


「ここだな……」


真鍋が小さく呟くと、生徒達はその場に立ち止まり、葵を除いた男性陣はワクワクした様子で興奮しており、女性陣は乗り気でない者が多く見受けられた。


葵が女性陣の方へと不意に視線を向けると、意外にもこういった類の事に強そうな亜紀がぶるぶると小さく体を震わせ、顔色を悪くし、晴海の方はケロッとした表情で、見た目からは恐怖心をを感じられなかった。


美雪も不安げな表情を浮かべながらも、自分以上にビビっている亜紀の姿を見てか、彼女の事を落ち着かせる事で精一杯のようにも見えた。


葵は珍しそうにその光景を見た後、再び真鍋の方へと視線を戻した。


「え~~と、一応、ここのスポットが先生たちの一押しになってます。

暗くて良く見えないと思いますが、この林を抜けると、ちょっとした廃墟があるんで、そこを回って、ココとは別のゴール地点に到着してもらう予定になってます」


真鍋の説明を聞きながら、長谷川は前野まえのは、少し冷やかすような歓声を上げ、廃墟と聞いて、亜紀の顔色は増々悪くなっていた。


「ちなみに、ここが最押しだから、ここのルートが安全に回れることがわかればここに決定させて、他は回らなくてもいいかなって思ってます」


「えぇ~~ッ!! 回ろうぜ~~!!」


「そうだよ、せっかく外に出てきたんだからさぁ~~」


真鍋の話を聞くと、すかさず長谷川と前野がブーイングを入れ、他の候補箇所であるスポットも回ろうと抗議し始めた。


「ダメだ。

明日もあるんだし。できれば、この肝試しにあまり時間を掛けたくない」


「なんだよ~~、まなべっち怖いのか??」


「ハイハイ……、もう何でもいいから…………。

ちなみに、途中の廃墟は別に曰く付きとかは無いから安心するように……。

ただ、雰囲気は出てるから、そこだけ注意するように。

はいッ! じゃあ、本番同様にやって貰う様、男女ペアになって!」


真鍋は注意事項にもならないような事を告げると、今度は男女ペアになるように指示を出し始めた。


すると、晴美は美雪の方へと視線を不意に飛ばし、美雪が遅れて晴海に視線を合わせると、晴美はニコリと一瞬、笑みを浮かべ、すぐさま美雪から視線を外し行動し始めた。


「はいッ、は~いッ!! それじゃあ、私は前野君と組もうかなぁ~?

長谷川君こういうの得意なんでしょ? あっちゃんビビりぃ~だから、よろしくねッ!?」


晴海は唐突だったが、言いたいことを全て言い終えると、前野の隣へと移動し、このペアで行く気満々な態度を周りにアピールした。


亜紀も珍しく、恐怖で頭が上手く回っていないのか、晴海の言われるがまま長谷川の隣へと移動し、既に誰かに捕まっていないと不安でしょうがないのか、長谷川の服の袖をキュッと握った。


「ご、ごめん……、し、しばらくだけだから…………」


亜紀は申し訳なさそうに長谷川に伝え、強気の彼女がしおらしく、隣で小さくなるように、少しばつの悪そうに控えた。


長谷川はそんな亜紀を見つめ、葵や前野に驚いた表情を浮かべ、どういう反応をしていいか、わからないという様子だった。


そして、しばらく目を点にしていたが、自分がようやくおいしい状況にある事を理解したのか、天を仰ぎ、泣いていた。


「あ、あまっちゃいましたね…………」


長谷川の奇行に目を向けていた葵だったが、不意に隣から、聞き馴染のある女性の声が聞こえた。


「あぁ、そうだな……」


状況からして美雪の声だと、葵は理解したが昨日の夜に、仲たがいしたこともあってか気まずく、上手く返事を返すことが出来なかった。


葵はその時初めて思い返したが、想えば美雪とは昨日からろくに会話をしておらず、尾行していた負い目も若干感じていたため、余計に美雪を悪く意識していた。


「お~~し、それじゃ、ペア分けも決まったことだし、早速やり始めるか」


少し揉めるかと心配していた節もあったが、様々な条件が重なり、思いのほか上手く事が進み、様々な問題を抱えながら、肝試しは始まっていった。


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