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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
八章 夏休み ~沖縄編 3日目、最終 『決意』~
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俺より可愛い奴なんていません。8-6


ピンクのハート形サングラスに、柄の派手なキャップを被るあおいと、黄色の星形サングラスに、同じく葵とは違った柄の、派手なキャップを付ける亜紀あきは、引き続き距離を詰めながら、美雪みゆき達の後を追っていた。


美雪達にバレないように追う二人は、傍から見れば不審者か、おかしな行動をしているカップルの、どちらかに映って見えたが、葵と亜紀は集中するあまり、あまり周りの視線を気にしていなかった。


この島の地理にそこまで詳しくない、真鍋まなべと美雪は、まゆずみから貰った簡単な手書きの地図と、ケータイなどといった道具を駆使し、お互いに目的地を探しては、道を相談し、ゆっくりゆっくりと目的地に向かっていた。


「結構迷ってるわね……。

行先ってどこなのよ?」


葵達の目標は、ゆっくりと進んでいたため、すぐにある程度の距離を詰めることが出来、現在立ち止まっている美雪達を見ながら、亜紀は少しじれったい様子で近くにいた葵に話しかけた。


「俺が知ってるわけないだろ?

買い物を頼まれたわけでもないし……。

とゆうか、この場所じゃ全然話聞こえないな…………」


葵達と目標である美雪達の距離は、最初に比べれば変装したことにより、近づけていたが、それでも会話が聞き取れる程の位置までには達しておらず、目標も動いていることから、二人の行動から予測することしかできなかった。


「ねぇ……、これ、失敗じゃない??

後は、二人で目標のお店まで到着して、買い物を済ませて、Bloomに戻るだけよ?

美雪と真鍋だし、何か行動を目に見える大きい行動を起こすとも思えないんだけど…………」


一向に目的を果たせない現状に、葵も若干感じ始めていた事を遂に亜紀は口にし、咄嗟の行動だったとは言え、あまりにもプランが無さ過ぎた事に葵は後悔し、亜紀の言葉に何も答えを返すことが出来なかった。


「ねぇ……、ちょっと、聞いてる?」


苦い表情を浮かべるだけの葵に、亜紀は怪訝そうな表情を浮かべ、葵を追求するように、続けて尋ねた。


葵と亜紀がそんな問答を繰り広げると、不意に目標であった真鍋と美雪は、近くの屋台へと足を運んだ。


「ちょ、ちょっと待て……」


葵に視線を向け、不満そうな表情を向ける亜紀に、葵は一言そう告げ、目標の観察に集中し、葵のそんな態度に亜紀は不満を残しながらも、再び美雪達へと視線を送った。


葵達が美雪達を見ていると、二人は屋台でデザート、ソフトクリームを手にし、買い物をしていた。


「え? アイス……??」


葵も疑問に思ったが、葵よりも亜紀が声に出し、葵と同じく不思議に思っている様子だった。


そして、美雪と真鍋はソフトクリームを手にしたまま、近くのベンチへと腰を下ろした。


「ねぇッ! これって……」


「あぁ、俺たちも行くぞ」


亜紀が全てを言い終える前に、葵も事態を察していたため、言葉を遮りすぐに行動に移した。


美雪と真鍋が休憩を兼ねて座ったであろうベンチの周りには、多くのベンチが備わっており、大人しくしていれば、美雪達が座ったベンチの近くに座り、話を聞く事が出来る可能性があった。


葵はテキトーに、近い位置へと場所を取り、美雪と真鍋の会話に聞き耳を立てた。


そして、そんな葵に対し、亜紀は少し遅れて葵の座っているベンチへと腰を下ろした。


「何してた?」


「いや、アイス買いに……。

美雪の買ったやつおいしそうだったし」


遅れてきた亜紀に葵は、当然の疑問をぶつけると、亜紀は飄々とした様子で、特に悪びれる様子も無く、「当然でしょ」と言わんばかりに答えた。


「はぁ? 何しに来たんだよ……。

てゆうか、俺の分は?」


「あるわけないでしょ……。

お金貰ってないし……、貰ったとしても買わないし…………」


葵は亜紀の答えを聞くと、大きなため息を付きながら、亜紀から視線を切り、再び美雪と真鍋に視線を向け、会話を聞くことに集中した。


「なんか、それっぽい話はしてた?」


「いいや、特に当たり障りのない感じだな……」


亜紀が到着するまでも葵は、真鍋や美雪の会話を聞いていたが、葵と亜紀が望む会話をしては無く、本当にたわいのない学校の話ばかりがメインだった


しかし、そんな会話の中でも葵は、美雪が真鍋と話している時の表情がやけに気になり、目を引いていた。


美雪はとても楽しそうに、いつも笑顔を真鍋に向け、時折視線が合うと、恥ずかしがるように視線を逸らしたり、こういった行動だけでは断定はできなかったが、そうと決めつけれて観察すれば、美雪のそんなちょっとした行動すらも、判断材料に見えてきていた。


そんな、亜紀と葵が会話に聞き耳を立てていると、真鍋は思い出したかのように話し始めた。


「あぁ~~、そういえば!

橋本はしもと! ずっと気になってたんだけど、立花たちばなとどうやって仲良くなったんだ??」


「え…………」


真鍋の言葉に、美雪は驚いた表情を浮かべたまま、思わず声を漏らし、会話を聞いていた、葵と亜紀も、声は出さなかったが、驚きの表情を浮かべ、益々聞き耳を立て、二人の会話に集中し始めた。


「いやさ、先生がここに前に赴任した時はさぁ、立花って結構とっつきにくいというか、まず、女子に対して基本辛辣だったからさぁ~……。

それが、戻ってきたら前ほどひどくないし……。

何よりも、あの橋本と仲良くなってるからな~~」


「あ……、そうですね。

確かに、先生から見たら結構珍しい組み合わせですよね……」


「で? 何かあったのか??」


真鍋は、ずっと気になっていたのか、美雪にその話題を追求するように尋ね、美雪も別に隠す事でもなかった為、真鍋にゆっくりといきさつや、葵との間で起きた出来事を話した。


美雪は、真鍋に葵とのことを話す中で、期間にしてみれば一年も経っていない、最近の出来事ではあったのだが、葵と知り合ってから色々な事があり、その時間はとても濃く、懐かしい気分にさせられていた。


そして、美雪の話す今までの出来事を聞き、葵もまた同じような気持ちにさせられていた。


「なるほどなぁ~、短い期間でいろんな事があったんだなぁ~~。

てゆうか、立花もバカだなぁ~~。

桜祭の時に初めて葵が女装をしている事を知ったけど、まさがそれが原因で誘拐されてるとは…………。

橋本も災難に巻き込まれたんだな」


美雪から簡単ではあったが、これまでの出来事を聞き、真鍋は最初、ニヤニヤと笑みを浮かべ、少し葵を小馬鹿にするように答えていたが、葵が原因で様々な事に巻き込まれてきた美雪を想い、呆れた口調でため息交じりに続けて答えた。


「そうですね……、確かに当時は少し怖い思いもしましたけど、今思い返せばどれも良い思い出ですよ?」


「そっか……、まぁ、橋本がそう思えるなら、良かったのかもな……」


美雪は優しい笑みを浮かべながら、当時の事を思い返す様に呟くように話し、美雪のそんな反応を見て、美雪と葵の思い出が苦い物になっていないことを理解した。


葵も美雪の口からあの当時の、東堂とうどうとの間に起きた出来事を、どのように思っているか聞いた事が無かったため、そんな風に当時の事を捉えているとは思っても見なかった。


「ねぇ、ちょっと……」


葵が集中して美雪達の話を聞いていると、葵の隣で同じように、聞き耳を立てていた亜紀が、不意に話を持ち掛けた。


葵はそれに気づき、美雪達の話に集中していたため、若干嫌な思いをしたが、それでも亜紀に視線を向けると、亜紀は先程と同じように不満げな表情を浮かべたまま、続けて葵に向かった言葉を放った。


「美雪がそう思っていても、私にとっては良くないから……!」


「言われなくても分かってるよ……。

あんときは悪かった……」


葵は亜紀の表情から、彼女の真剣さを感じ取り、当時の事は今思い返しても、美雪に大きな迷惑をかけており、改めて罪悪感と二度と巻き込まないようにと、心に再び誓った。


葵と亜紀は、その程度で会話を中断し、再び、美雪と真鍋の会話に集中し始めた。


そして、二人が美雪達の会話に集中したその時だった。


「う~~ん……、ちょっと前から思ってたんだけどさ……。

もしかしてなんだけど、橋本は立花と付き合ってたりするのか?」


「え……?」

「はぁ……?」


真鍋は淡々とした様子で、美雪にその質問を投げかけ、美雪は目を見開き驚いた様子で真鍋を見つめ、声を漏らし、盗み聞きをしていた葵達までもが急な質問に驚き、隠れている状況だという事も忘れ、思わず声を漏らした。



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