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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
八章 夏休み ~沖縄編 3日目、最終 『決意』~
153/204

俺より可愛い奴なんていません。8-4


 ◇ ◇ ◇ ◇


「で? どうゆう計画なわけ??」


あおい亜紀あきに、美雪みゆきの本心を確認させる計画を立てている事を伝え、昼食が終わり、再び真鍋まなべと共に島を歩き回っていた。


島を歩き回る中で、亜紀は葵に、昼食の際に話した事の続きを葵に尋ねた。


「いや、別にまだどう聞き出すとかは……、あんまり考えてない」


「はぁ?? やる気あんの?」


尋ねられ、少し気まずそうに頼りなく答える葵を見て、亜紀は不満を全面に出した表情で、悪態を付くように葵にそう答えた。


いつもであれば、葵も言われっぱなしにはならず、何かしら嫌味を返していたが、今は八方ふさがりであり、美雪の真意を確かめるには亜紀の協力が必要不可欠だった。


「お前から直接聞けないのか? 友達なんだろ??」


葵は嫌味を言ってくる亜紀に対してイラっと感じながらも、我慢し、亜紀を頼るように尋ねた、


「無理よ。

あの子、あんまりそうゆうのはっきりと言わないし……。

聞いても教えてくれない。

昔、聞けたのは偶々だったし、はっきり好きな人って答えたわけじゃ無いから……」


最後の頼みと言わんばかりに、早速亜紀を頼るように亜紀に尋ねたが、葵の望みは叶わず、亜紀は難しい表情のまま、素直に葵の質問に答えた。


「はぁ?? ホントに友達かよ…………」


つよ??」


今まで立場が弱く言われたい放題だった葵は、頼みの綱がまったく役に立たなかったか事が分かると思わず、今までの事もあり、ため息交じりに悪態を付き、そんな葵の嫌味を聞き逃さなかった亜紀は、利き手である右拳を強く握りしめ、睨むようにして葵にそう発した。


そうして、なんの意見も打開案も出ないまま、二人は難しい表情で静かに考えこみ、時間だけが経っていった。


「完全に八方ふさがりね……」


長期の思考を経て、亜紀はそれでも案が何も浮かばず、ため息を付きながら、そう呟いた。


葵の返事は返ってこず、亜紀の呟きはただの独り言となってしまい、無視されたことにイラっと感じつつ、「ちょっと」と不満気に言いかけながら、葵の方へと視線を向けたところで、亜紀はその言いかけた言葉を呑んだ。


そこには、亜紀の言葉に気付かない程に、難しい表情のまま、考え込む葵の姿があった。


「ねぇ、アンタ」


葵の表情を見た亜紀が、再び葵へと呼びかけると、葵はようやく亜紀の言葉に反応し、亜紀へと視線を向け、亜紀は言いかけた言葉の続きを葵に言おうと口を開いた。


しかし亜紀の言葉は、音にはならなかった。


(アンタは美雪の何になりたいわけ?)


亜紀はその言葉を葵にぶつけたかったが、その質問はあまりにも残酷で、それを尋ねる勇気が亜紀にはなかった。


「あ、いや、なんでもない」


亜紀はすぐに取り繕う様に、質問を取りやめ、葵は眉を顰め怪訝そうに亜紀を見つめたが、追求する事は無かった。


亜紀が質問を取りやめると、今度は、考えがまとまったのか、葵が亜紀に提案をし始めた。


「なぁ? この旅行まだ三日目だろ??

今日もまだ半日だし、最終日の明日もある……。

それに、明日は主に自由時間が設けられてる。

そこで、なんとかアイツと真鍋を二人きりにできないか??」


「――――頑張れば無理じゃないかもね。

でも、二人きりにしてどうするつもり?

仮に美雪が好きだったとしても、行動を起こすタイプじゃないわよ?」


葵の言った作戦は、亜紀も考えなかったわけではないが、あまり有効的に思えず、すぐに考えから外した案だった。


「別に行動を起こさなくてもいい。

反応を見れればそれで……」


「強引ね」


葵の意見に少し文句を言いながらも、亜紀はその作戦には否定的ではなく、むしろ何もいい案が出ない今、この作戦を行う事しかできなかった。


「アイツ、昨日の夜、言ってたんだ。

真鍋と同じグループに分けられたのに、何もできなかったって……。

不用意にデリケートな話題を振って、アイツの口からそれを言わせて、惨めな思いをさせた」


葵は昨日の事を思い出しながら、亜紀にその話をし、葵の話し方からは、彼の思わず口を付いて言ってしまった言葉への後悔の念が、亜紀にはよく伝わった。


そして、それと同時に、亜紀は何処か葵のその話に、違和感を感じた。


「それの償い??」


亜紀は思わず、想ったことがそのまま口を付いて出た。


そして、亜紀の質問に葵は間を置くことなく、すぐに短く「そうだ」と答えると、二人の会話はそこで途切れた。


美雪の真意を確かめる案を考える葵の姿は、亜紀の目には、自分の気持ちに気付かない為に、必死に何かの理由を付け、気づく前に諦めようとしているように見えた。


そして、亜紀は最後の葵に問いかけた質問で、葵に彼が動く理由を与えてしまったようにも思えた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


午後15時 Bloomブルーム


挨拶周りが終わり、2グループ共、集合場所であるBloomへと戻ってきていた。


沖縄に来てからというもの、毎日、訪れていた場所でもあったため、迷う者がなく、知らない者がいないと理由で、挨拶廻り終了後に集合する場所として、朝のうちに真鍋から指示が出ていた。


真鍋のグループはもちろん、しずかの同行した美雪達のグループも、きちんとBloomへと戻ってきていた。


そこまでの大所帯では無かったが、形式的に真鍋が点呼を取り、軽く真鍋からの今後の行動の指示を受けると、葵達に自由時間が訪れた。


自由時間になったことで、ほとんどの生徒がはしゃぎ喜んだが、計画を立てた葵と亜紀だけは、適度に遊びに参加しつつも、機会を伺っていた。


そして、そのチャンスは意外にもすぐに訪れた。


長谷川はせがわ前野まえのの提案により、3人3人でチームに分かれ、ビーチバレーを楽しんでいるところに、不意にこちらに、少し焦った様子でまゆずみが駆け寄った。


「はぁ……、はぁ……。

遊んでるとこ悪いね……。

ちょっとお店の従業員が手を離せないから、ちょっと誰かに買い物を頼みたいんだけど……」


黛はバレーをする葵達の元へとたどり着くと、少し息を切らしながら、単刀直入に葵達へ、話を持ち掛けた。


葵達は一度、バレーを中断し、黛へと視線を向け要件を聞き終えると、お互いに顔を見合わせ、そして、その中で葵と亜紀は不意に目が合い、目が合うと同時に、お昼時に話した計画を実行する事を決意した。


「あ……、じゃあ、私、行きます」


黛がお願いをして、すぐに立候補する者が出ないことが分かると、美雪は性格から、自分が行くと名乗りを上げた。


そして、それは亜紀と葵にとって好都合だった。


「ごめんね~、美雪~……」


「いえいえ、大丈夫ですよ!」


黛は申し訳なさそうに、美雪にそう告げたが、美雪は笑顔で気を遣わせないように答え、そのまま、黛の頼みは美雪が叶える事に決まる流れになった。


その時、すかさず亜紀が声を上げた。


「流石に、美雪一人じゃ……。

買い物なら男手も必要なんじゃない?」


普段の亜紀であれば、自分も行くと名乗りを上げたであろうが、今はそうはせず、わざと美雪と男性を一人つけるように、声を上げた。


亜紀がそれを口にすると、黛は難しい表情で「確かに」と一言呟き、今度は男性陣に視線が向けられたが、そこで次に声を上げたのは葵だった。


葵が声を上げる前、美雪と目が合った葵だったがその視線を切り、近くにいた真鍋へと視線を向けた。


「生徒だけで行くのも、どうかと……」


葵はこの一連を見ていた真鍋に、「お前も行け」と目で訴えかけるようにして、少し嫌味っぽく、いつも葵の調子で答えた。


「おぃ~~、立花……。

その目はやめろ……。

なんか、先生が責められてるみたいだろ?」


「教育者としての教示を見せてください」


「嫌味か…………。

というか、その言い方……、まるでいつもは、しゃんとしてないみたいじゃないか……」


真鍋は葵の言い方に不満を感じながらも、美雪と共に買い物に付いていくような意思を見せた。


「よし、それじゃあ、行くか橋本?」


「は、はぃ」


亜紀と葵の思惑通り、真鍋と美雪を二人きりにさせる事が出来、真鍋の言葉に美雪は少し恥ずかしそうに、小さく答えた。


葵はその二人を見ながら、計画が成功してひとまずは良かったと思いつつも、心は晴れなかった。


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