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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
八章 夏休み ~沖縄編 3日目、最終 『決意』~
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俺より可愛い奴なんていません。8-1

 ◇ ◇ ◇ ◇


沖縄旅行三日目。


沖縄の滞在期間も残すところ後一日となり、あおい達は再び、真鍋まなべの指示のもと、2グループに分かれた。


しかし、この三日目に関しては、一日目と二日目では少し様子が変わる。


本来であれば、真鍋と民泊でお世話になる地元民の方々への挨拶をする班と、まゆずみの運営するBloomブルームを手伝う班で別れていた。


ただ、今日に限ってはBloomがそこまで忙しくならないという事だったため、二グループ共、挨拶廻りをすることになっていた。


そして、葵は真鍋と亜紀あきの三人のグループで島を回っているところだった。


三人は朝から班分けが決まり、目的地に向かって歩き始めて数分が経っていたが、会話一つなくただ黙々と歩き続けていた。


「――――いや、なんかしゃべれよッ!!」


沈黙に耐え兼ねたのか、終始、亜紀や葵の様子をチラチラと伺っては、落ち着きのない様子でいた真鍋が、ようやく沈黙を破るように声を上げた。


「別に話すこともないです……」


「真鍋先生が話題振ればいいんじゃないですか?」


亜紀と葵は、真鍋から注意気味に声を掛けられたが、真鍋の意見に好意的では全くなく、お互いに冷めた様に言葉を返した。


清水しみずさん? 話す話題は作る!!

立花たちばなは何故、俺に振る?? 先生、立花にはもっと社交的に成長してもらいたいんだけどねッ!?」


この旅行には、もちろん社会学習としての側面もあったが、ある程度楽しく、みんなで仲良く行いたいと真鍋は考えていた。


しかし、今の三人での旅行はまるでその感じが感じられず、まさしくお通夜状態だった。


「あんまりワイワイはしゃぐのも、どうかと思いますけど……。

礼儀正しく、黙って従う生徒なんて、教員からしたら理想的じゃないですか?」


「そんな生徒は可愛げないぞ…………、清水……」


亜紀はそれでも真鍋の意見には賛同せず、屁理屈を返されるだけであった。


そして、葵から帰ってくる返事も屁理屈だけだった。


「別にベラベラと無駄にしゃべることが、社交的というわけではないでしょ?

空気が読めず所狭しと会話を挟む人を、人づきあいが良い人とは呼べないでしょう??

会話に程よい間を持たせる。

先生が心配しなくても立派に社交的に育ってますよ……」


「いやいや、間っしかないよッ!?

もういい、先生が話題を振るから…………」


意地でも仲良くする気が無いように見える葵と亜紀に、真鍋はようやく折れ、真鍋から適当に話題を振る事に決まった。


「立花も清水も、昨日はなんかイベント出てたんだろ??」


真鍋は少し話題を考えた後、すぐに二人に共通の話題を振った。


亜紀も葵も、黛にイベントの事は教員に内緒だと口止めをされていたため、一瞬「あっ」と心の中で呟き、少し返答に気を遣おうと注意する。


しかし、そのように少しだけ張りつめた二人の緊張は真鍋の次の言葉により、容易に解かれた。


「まぁ、先生、昨日、長谷川はせがわ前野まえのが会話をしているのを聞いたから、知ってるんだけどさぁ……」


続けて話した真鍋の言葉により、二人は少しだけ張りつめていた緊張を解き、そして、長谷川達の注意力の無さに呆れた。


「なんか水着のコンテストに出たんだろ??

はぁ~~……。

後で他の子にも言うけど、この話学校ではホントに禁止な~~?

他の先生とかに聞かれたらまずいから。

色々と…………」


真鍋は大きくため息を付きながら、疲れた様子で亜紀と葵にくぎを刺した。


そして、そんな真鍋の言葉に、二人は二つ返事で素直に答え、真鍋のため息のつき方と、声色から、彼の気苦労が伺え、真鍋がなんだか可哀想にも見えていた。


「俺らよりも、長谷川達の方にはきちんと、釘指しておいたほうがいいですよ?

前科あるし……」


「だよなぁ~~、きちんと言っとかないと……。

でも、あいつら間違えなく口滑らせるよなぁ~~。

はぁ~~~…………」


ため息を付きながら真鍋は話すと、一度吐いた愚痴から、次々に愚痴は止まらなくなり、一人でブツブツと話し始め、葵と亜紀は完全に会話へ置いていかれ、先頭を歩く真鍋の垂れ流れる愚痴をただ聞くだけとなってしまった。


そうして結果として、無駄な会話をする必要がなくなった葵は、真鍋の愚痴を聞き流しながら、周りの美しい景色へと視線を移し、かなりミスマッチな状況だったが、それでも景色を楽しもうと辺り見渡した。


葵がそうして早々に会話から離脱し始めると、葵の思わぬ方向いから声が掛けられた。


「ねぇ……。ちょっと話があんだけど……」


掛けられた声と周りの状況から、声を掛けてきた人物は亜紀以外におらず、亜紀の声がどこか不満そうな雰囲気を感じさせていた。


葵は敵意すら感じる亜紀の声に、少し嫌な感じを感じつつも、無視をすることは無く返事を返した。



「珍しいな、お前から話しかけてくるなんて……」


亜紀が葵に対して好意的でないという事は、葵もよく知っており、偶然にも今回の班分けで一緒になってしまったが、必要最低限の会話しかお互いに交わさないと思っていたため、話を振ってきたのは葵にとって少し意外だった。


「アンタが変な事するからでしょ……?」


「はぁ?」


話の内容が見えない葵からしてみれば、亜紀の言葉は言いがかり以外に聞こえず、思わず不快感を顔に出しながら、聞き返した。


葵のそんな態度に、亜紀は大きくため息を吐いた後、少し間を空け、葵へと視線を向け、言葉を放った。


「美雪の事よ……?

昨日の夜、なんかあったんでしょ? 言いなさいよ……」


葵は触れたくない話題に、朝から触れられ、そして亜紀からその話が出てくるとは思いもしなかった為、すぐに何か言葉を返す事が出来ず、表情も驚いた表情のまま固まった。




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