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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
七章 夏休み ~沖縄編 2日目~
144/204

俺より可愛い奴なんていません。7-21

◇ ◇ ◇ ◇


あおいしずかは、椿つばきと共に、出店通りを抜け、浜から少し離れた、人通りの多い大きな通りへと出ていた。


その通りには、様々なお店が立ち並び、葵達が自由に行動できる時間では、あまりに足りない程、魅力が詰まったところだった。


「うわぁ~~、凄いね、ここ……」


椿は周りをキョロキョロと見渡しながら、感動するように声を漏らした。


「でしょ~~、結構面白いものとか置いてあるよ~~。

まぁ、変な物も多いから、お土産とかでしか買わなかったり……」


「ふ~~ん」


椿に対して親切に静は色々と伝えたが、椿は最初の感動したような楽し気な声とは違い、素っ気なく、関心が無さそうにそう答えた。


椿のその反応は、誰から見ても敵意を放っているような、静の事をよく思っていないとわかる反応だった。


静はそんな椿に苦笑いを浮かべるしかなく、乾いた笑いを零していた。


「はぁ~~……、椿?

お前、いくらなんでも初対面の相手に、それは冷たいんじゃないか?」


葵は椿の静への態度を今までのも思い返しても、少し問題があるように見え、先程から何とか椿と、友好的に接しようしている静に、助け舟を出す意味も含めて、ため息交じりにそう告げた。


「あ……、いいよ、葵……。

別に私は何とも思わないし…………」


「いや、良くはないだろ?

椿の為にもならないし……」


葵は気をまわしてそれを告げたつもりだったが、静はあまり望んでいない様子で、少し暗い表情のまま答えた。


静のその姿は、まるで自分が不当に扱われる事が、仕方が無い事だと言っているようにも見え、葵はそのような態度を取る静にも納得がいかなかった。


葵の知る限り、昔の静と椿は仲が良く、年上の静を椿は、姉のような存在に思い慕っていた。


椿の実の姉である、らんがそれを見て、「なんで、実の姉よりも慕っているんだ」と嘆いていたのは、印象的だった為、葵もよく覚えていた。


現状では、確かに椿は静の事に気づいていないとはいえ、本来であれば、二人は気の合う関係であるはずだった。


にぃさん? 妹を前に、イチャつかいないで貰えます??」


椿はにこやかに、笑顔を浮かべながら葵にそう告げていたが、目の奥はどう見ても、心から笑っているようには見えず、椿の怒りがにじみ出る様に、ふつふつと感じさせていた。


「い、いや……、別にそんなつもりじゃなかったんだが……。

悪い…………」


葵は、椿が感じていることは勘違いだと、やんわりと否定しながらも、椿の圧に押され、素直に謝罪を口にした。


「う、うん、ごめん……」


静も椿に終始強く出れない為か、委縮したまま、葵の謝罪に乗っかるように謝罪した。


しかし、その静の謝罪は納得がいかなかったのか、椿はまたもやムッとした表情を浮かべ、機嫌が悪くなったように見えた。


雰囲気は一層悪くなり、空気の重さに葵は、深くため息を付きながら、二人に提案するように、声を上げた。


「なぁ? そういえば忘れてたんだけど、姉貴にお見上げ頼まれてて、何あげればいいかわからないから、手伝ってくれないか??

選ぶの面倒だから買わないつもりだったけど、買わなかったら、めちゃめちゃうるさそうだし……」


葵はその時の事を少し想像しながら、何とかこの雰囲気を変えようと試みた。


「あ、あぁッ! らんさんッ!?

そうだね! 選ぼうッ!!」


「まぁ、昔から姉貴の趣味ってそんな変わってないけど、静は最近の姉貴のこと知らないだろうから、品物と言うよりも、品ぞろえの良い店を、紹介してくれるとありがたいな。

椿には、その店で姉貴の喜びそうな物を選んで欲しい……」


「うんうん! いいね!! 了解ッ!!」


静は気丈な振る舞いで、無理に盛り上げようと楽し気に声明るく、葵の意見に賛同し、葵は静が少し無理にしているようにも見えていたが、今は雰囲気を変えようとしている事もあり、その行動はありがたかった。


「悪いな……。

椿も頼めるか?」


「別にそれはいいけど……。

まぁ、お姉ちゃん変だから何を与えても喜びそうだけどね……。

むしろ、変な物であればあるほど喜びそう……」


「色々と酷いな…………。

姉貴が聞いたら泣くぞ……?」


葵は椿の表現の仕方に、姉に対する扱いに少し疑問を感じつつも、椿が同意してくれた事で少し安心もしていた。


◇ ◇ ◇ ◇


葵の提案により、椿と静は蘭のお土産選びに協力する事となり、静のお勧めで、周りのお店よりも比較的に様々な物が、置いてある雑貨屋へと訪れていた。


お店に訪れる前に、静や椿と、葵は色々とどういったジャンルの物を買えばいいのかを話題にし、近くに食べ物メインのお土産屋さんもあるという事で、静はこのお店をピックアップした。


「凄いなここ……。

色々あり過ぎじゃないか? てゆうか、これ誰が買うんだ……??」


葵はそういって気になったお土産を手に取り、静にソレを見せるようにして尋ねた。


葵がもったそれは、沖縄の守り神のシーサーをモチーフにした、マスクの様なお土産だった。


色々と文字が書かれており、ただの面白くマスクかと思いきや、美容グッズを銘打っており、マスクでは無く美容パックとして使う物だった。


「えぇ〜!? 結構人気なんだよ〜??

普通に美容マスクとしても優秀だし、それに付けてみると意外と可愛いんだよぉ〜!?」


「え……? 正気かお前…………。

てか、その口ぶり……、まさか愛用者……?」


葵はマスクを良く思ってなく、少しギョッとした様子で静に訪ねた。


「い、いや、愛用者って程じゃないけど……。

それでも使った事はあるよ…………? 次の日、肌の調子も良かったよ!?」


「マジか…………」


静の好評を聞き、葵は少しだけ考えを改め始め、手に持つシーサーマスクを呟きながら凝視した。


「写真も撮ったよ? ほらッ!」


興味深そうにジロジロと、シーサーマスクとにらめっこをしている葵に、静は携帯をささっと操作し、本当に使ったことを証明する様に、以前使用しているところ撮った、写真を葵に見せた。


葵は静のその声に反応し、静がこちらに向けている携帯の画面へと視線を移した。


「うわ、マジだ…………。

シーサーだ…………」


葵は別に疑っているわけでは無かったが、静の動かぬ決定的な証拠見て、呆然としながら、画面に映る笑顔でシーサーマスクを付ける静を見つめた。


静のその写真は、「シーサーマスクを使ってみたよ」と自分の友達に見せる為に撮ったような、そんな写真であり、かなり自然体の楽しげな笑みを浮かべていた。


「あ…………」


葵がしばらく黙り込んだまま、携帯を凝視していると、静は小さく声を漏らし、急に少し焦った様に、携帯をこれ以上葵に見せないよう、自分の方へと戻した。


葵は充分その写真を見れていたが、何の断りも無く、何なら今まで見せていたのに、静が急にこれ以上見せたくないといった様に、振る舞うような態度を取ったように見え、少し不思議感じていた。


そして、静の方へと視線を向けると、静は顔を赤く染めており、視線が合わなかった。


「あの……、兄さん?? またですか???

私が少しでも離れたらもう我慢できずに、イチャつくわけですか??」


「いや、だからイチャついてないって」


蘭のお土産を探すために、一時的に静や葵から離れていた椿がいつの間にか、二人の元へと戻ってきており、何とか少しずつ戻りつつあった機嫌が再び悪くなっていた。


葵は、椿の言葉を再び否定したが、椿は小さく「どうだか……」と呟き、まるで信用していない様子だった。

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