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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
七章 夏休み ~沖縄編 2日目~
142/204

俺より可愛い奴なんていません。7-19

「お連れ! みんなッ!」


水着コンテストに出場したしすか達が、まゆずみ達の談笑する場所へと来ると、黛は出場した彼女達に開口一番、労いの言葉を掛けた。


「はぁぁ~~ッ、ほんと疲れました……。

待ち時間も緊張するし……、美雪みゆきはこんな事をやってたんだね……。

楽しい事もあったけど、一回で充分かな……」


亜紀あきはどっと疲れたように、重たい息を吐きながらそう告げ、桜木さくらぎ高校の学際での美雪の気持ちに近いものを体験し、彼女の苦労をひしひしと痛感していた。


「えぇ~~!? 

私はまたやりたいと思うけどなぁ~~。

ねぇ? 静ちゃん?」


「うん。

出る前はすごく恥ずかしいけど、メイクとか髪をセットしたりとかして、完成した自分を見ると、やっぱり出て良かったかな?って毎回思うよ……。

まぁ、でも次出たら三回目だし、私ももう出ないかなぁ~~……」


晴海はるみに話を振られ、静も晴海の意見に賛同しながらも、次回出ることは無いと、苦笑いを浮かべながら答えた。


「みんな本当にお疲れ様よッ!

チーム『新生Bloomブルーム』で、二位、三位独占、他の子達もインパクトあったし、午後からは繁盛する事間違いなしよッ!!」


一位を取れなかった事を、黛は悔いている節もあったが、それでも結果で見れば、黛の言うチームBloomは大健闘であった。


そして黛の言う通り、午後からイベントで輝いた彼女たちを一目見ようと、Bloomに足を運ぶ者が多くなることは、容易に想像できた。


静達を含めて、しばらく大円団で会話を交わしていたが、時間が経つにつれ、亜紀と奈々(なな)、晴美と香也かやと言うようにコーディネートを担当した者と、された者の組み合わせへと会話をする相手が変わっていった。


黛は、他の静以外のBLOOMの従業員で参加していた者を集め、必然的に葵と静がその輪から溢れていた。


清水しみず松野まつのも色々と、話したい事があるんだな……」


葵は少し不器用ながらも、2人で居るのに沈黙なのも気まずかったため、楽しげに笑顔で話す亜紀や晴美静に会話を振った。


「ねぇ、葵……。

結構何度か感じたけど、昔に比べてコミ障になった??」


「は?」


葵の下手な社交辞令から入る会話に、静は少しニヤッと笑みを浮かべながら、半ば葵をからかうようにして、そう尋ねるように言い、葵は自分でも変な事を、言っている節を若干感じていたため、見事に図星を付かれていた。


「な、なわけねぇだろ。

まぁ、その、まだあんまり慣れてないだけで……」


「コミュ障じゃん……」


「だから! 違うってッ」


小馬鹿にしたように言う静に、葵は少し声を大きくし、強くそれを否定した。


葵は自分を陽キャラや陰キャラと、他人に部類されるのは、心底どうでもよく、気にもしなかったが、自分が女子と話す時に、気後れしているとは絶対に認めたくなかった。


「てか、そんなんどうでもいいよ……。

まぁ、ひとまずお疲れ……」


「うん。ありがと」


葵はこの手の話題では自分が不利だと察し、疲れた雰囲気で半ば諦めるような様子で、話題を切り上げ、まだ彼女を労った言葉を掛けていなかったため、少し恥ずかしくも思いながらも、それを静に伝えた。


静は一瞬驚いたような表情を浮かべながらも、すぐに表情は柔らかくなり、笑顔で微笑みながら優しく答えた。


「惜しかったな……、優勝。

まぁ、あれは予想外だったけど…………」


「そうだねぇ〜……、まさか本物が出場するとは……。

しかも、それが椿ちゃんだったなんて……。葵は勿論知らなかったんだよね?」


「何も聞いてない……。舞台裏でなんか話したか?」


「う〜〜ん、人が多くてわちゃわちゃしてたから話せなかったかなぁ〜……。

それに、椿ちゃんの周り人が沢山いて、忙しそうだったし……」


葵の質問に、静は少し表情を曇らせ、声にも少し暗さを感じさせ、答えた。


静のそんな雰囲気を葵は、気づいたがそれが何から来るものなのか、更に自分の勘違いかも分からなかったため、特に気にする事はなかった。


「まぁ、椿ちゃん、多分私の事あんまり良く思って無いだろうし…………」


「ん?」


静は誰にも聞こえないくらいの、自分にしか聞こえないくらいの声で、暗い表情のまま呟き、案の定、静の声は葵には届いておらず、聞き取れなかった葵は、不思議そうに聞き返すように静に尋ねた。


「ううん。何でもないッ!

あ、そういえば、葵が担当した参加者の人が葵の事を探してたよ?

なんかしたの〜??」


静は今までの少し影のある暗い表情を一気に、笑顔へと変え、取り繕うようにそう葵告げると、話題を切り替えた。


「マジか……。いや、何も心辺りは無いけど…………」


「葵は昔からデリカシーが無いからな〜……、なんか失礼な事言ったんじゃない?」


静はため息を一つ付きながら、少し呆れたような口調で葵にそう伝えた。


そして、静は視線を先ほどのイベントの関係者達が、よく出入りしている、舞台裏へ入るためのいる口付近へと視線を飛ばした。


「ほら、葵。 あそこにまだいるよ?」


静は偶々話の流れから、舞台裏近くへと視線を向けると、話に出ていた二人組の参加者を見つけ、その場所を指さしながら、葵にそう告げた。


静の話を聞き、葵が静の指先に導かれるようにして、舞台裏付近へと視線を向けると、そこには確かに葵が、一人目に担当した女性と、二人目に担当した女性がその場にいた。


二人は何かを探すようにして、辺りを見渡しており、葵はその二人を不思議そうに見つめていたが、不意に偶然にその二人の内の一人と目が合った。


そして、一人目が葵に気付くと、もう一人の女性の方を軽く叩き、葵を指さして、目当てのものを見付けたかのように、喜んでいた。


「あッ……、バレた……」


静も二人組の女性がこちらに気付いている事がわかり、思わず声を漏らしていた。


二人の女性は、葵を見つけるなり笑顔で手を振りながら、こちらへと近づいてきていた。


そして、そこまで遠く離れてはいなかった為、二人の女性はすぐに、葵達と自然に会話をするくらいの距離へとたどり着いた。


「やっと見つけたよぉ~~!!

お礼を言おうと持ってたのに、舞台裏に戻ったらいないから、ちょっとびっくりして焦っちゃった!」


「あ、それは、すいません……。

他の先輩方も抜けるという事だったで……」


葵の担当した女性が気さくに話しかけると、葵は申し訳なさそうに、丁寧な口調で、普段よりも声のトーンを上げて答えた。


葵の普段女装している時の、中世的な作った声に、静は初めて聞いたという事もあり、「おぉ……」と小さく声を上げながら驚き、その後にも葵の事を、何とも言えない微妙な表情で見つめていた。


「優勝できなかったね……

結構アピール頑張ったんだけどね。

ごめんね、化粧終えた後はイケイケ!ドンドン!って感じだったんだけどね~」


「いえいえ! こちらこそ、力に成れずにすいません……。

――楽しんではいただけました?」


葵の恐る恐ると言ったような尋ね方に、女性陣二人はキョトンとした表情を浮かべた後、そのままお互いの顔を見合わせた。


一観客としての葵であれば、特に他人の順位等には関心も無かったが、出ている側の事を考えれば、せっかく参加したにも関わらず、賞を取れなかった事に、不満を感じている可能性も無くはなかった。


静から冗談とは言えど、先程嫌な話を聞いていた手前、葵はそのことだけは気になっていた。


葵が答えを待っていると、その答えはすぐに返ってきた。


「そんなわけ無いじゃん! 新人君ッ!!

めちゃめちゃ楽しかったよぉ~~!」


「うんうん! 舞台裏から出て、君の事を探す間にも、何人かの男性からナンパ受けちゃったしねッ!!

効果絶大だよ!!」


二人の女性はお互いに顔を見合わせた後、葵へと視線を戻し、その表情は晴れやかに、言葉には少しの高揚感を感じさせていた。


葵は桜際のミスコンの際にも感じていたが、本当に楽しめているのだろうかという不安をずっと抱え、それが晴れた時の感覚は本当に安心し、不安を抱えた時も含め、この瞬間は嫌でなく、とても心地よいものだった。


「そうですか……、よかったです!」


葵は安心した表情で自然と、こぼれ出る笑顔を浮かべながら、二人にそう告げた。


「君、メイクされてる時にも思ったけど、ホントに可愛いよね!?

普段は、綺麗顔なんだけどさぁ、ふとした笑顔とか……。

なんか、女の子でも好きになっちゃいそう!」


「え……」


葵は、あまり良くないことではあったが、二人には女装をしていることはもちろん伝えておらず、更には葵の女装の出来は言うまでも無かったため、万が一にもバレるなどという事は無かった。


静以外の女性陣は、冗談半分本気半分といった様子で葵にそう言い、どっちなのかわからない葵は少し困惑したように、声を漏らした。


「そうそう! なんか不思議な魅力あるよね~~。

なんなら、さっきのナンパの男達よりも全然魅力的というか~~。

あの人たちの遊ぶより、断然この子といた方が面白そう!」


「あ……アハハハ……、そうですかね……」


バレる様子はなかったが、妙な方向へと話は進んでいき、葵は若干手詰まり状態になっていた。


そして、そんな葵を尻目に女性二人は、共感したことで話が盛り上がっていき、葵と静は少しの間、会話に置いてけぼりを食らっていた。


「イテッ!」


少しの間が出来、一息付けそうな葵が、ため息のように息を吐くと、隣にいた静が葵の脇腹をつねってきた。


葵は驚きと相まって、思わず声が漏れ、何事かと静に視線を送るとそこには不満そうに、葵を見つめる静の姿があった。


「な、なに……?」


葵はつねられた事は不満だったが、静の機嫌が良くないことを悟り、それを指摘することは無く、まずは事情を、声を押し殺しながら、静に尋ねた。


「い~や? 別にぃ~。

ただ、ずいぶん楽しそうだな~~って……」


葵の予想通り、静は機嫌が悪く、昔からの彼女の機嫌が悪い時にやる癖である、語尾を伸ばしたような話し方も出て来ていた


「楽しくない。 バレて変な空気になったら最悪だぞ??

二人ともいい人だから嫌われたくもないし……」


「へぇ~~ッ! ふ~~~んッ!!」


葵が弁明すると、静は更に機嫌を悪くさせ、やたらと語尾を伸ばし、明らかに力が入った様子で答えた。


葵は何故彼女が不機嫌になっているのか、皆目見当もつかなかったが、静の機嫌の悪いまま、そのまましばらく四人での会話は続いた。


丁寧な誤字脱字報告、本当にありがとうございます!

自分でも気を付けてはいるのですが、中々気付かず(泣


それと、気付けばブックマーク250を超えまして、こんなに多くの方に読んでもらえるとは思ってもなかったので、本当に有難いです。

これからも、暇つぶし程度でよろしいので、よろしくお願いします。

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