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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
七章 夏休み ~沖縄編 2日目~
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俺より可愛い奴なんていません。7-15

「いやぁ~、それにしてもやっぱり綺麗だねぇ~。

まぁ、プロの人なんだから、当たり前ではあるんだけど……」


椿つばきの登場から、色々な情報を取り入れ、改めて舞台に立つ椿を見て、まゆずみは、感慨深くそう呟いた。


「東洋人モデルの起用が少ない海外、しかもアメリカでモデルをしていたんだもん!

美人じゃないわけないよねぇ~!」


黛に釣られるようにして、奈々も同意するようにそう告げた。


椿の見た目は、言うまでも無く素晴らしく、自分の魅せ方もよくわかっていた。


ポージングは海外で好まれそうな、クールなポージングでありながら、彼女の笑顔は、海外からよく『kawaii』と言われる、日本人らしい愛嬌のある笑顔で、一見アンバランスにも思えなくもないが、不思議ととても魅力的に映っていた。


水着のコンテストでもあったため、スタイルの良さがそのまま直に魅力になっていた。


「なるほどねぇ……。

やっぱり、日本人が海外でモデルとして活躍するのって難しいの??」


奈々の言葉が気になっていた黛は、自分も生きていく中で色々な話を耳にし、そんなような話を聞いたことがあったため、奈々に確認するように尋ねた。


「難しいですよッ!」

「めちゃくちゃ難しいです!」


奈々だけでなく香也かやあおいですらも、口をそろえて、強い口調で、それぞれの言い方で同意した。


「本当に大変です。

まず、圧倒的にスタイル! 身長も違えば骨格も違います。

どうしても、特にファッション雑誌なんかでは、見劣りしてしまう部分が大きいんです!」


「海外と日本のモデルの在り方も全然違います。

日本のモデルは、モデルがメインになることが多いです。

特にファッションショーとかはまさにそれに近い。

でも、海外のモデルはあくまで、ファッションをよく見せるためのものに過ぎない……。

モデルの地位もそこまで高いものじゃないです、むしろカメラマンやスタイリストの方が上。

知名度があれば多少は変わるかもしれないですけど……」


熱く語る奈々に補足を入れるようにして、葵も自分の知っている限りの事を黛に伝えた。


「いや、葵……、詳しいね」


「当たり前です! 美しいものには偏見無く、興味がありますから。

ましてや、海外なんて美の宝庫です」


プロ顔負けの談義に、香也は苦笑いを浮かべつつ葵にそう伝えると、葵は至極当然と言った様子で堂々と答えた。


「確かに、海外のモデルはちょっとレベルがねぇ……。

日本は日本でまた違った魅力があるけどね! それに私たちには馴染み深くて、何より真似しやすい!

海外のモデルの真似は、逆立ちしたって無理だからね……」


世界中をスタイリストとして仕事しているため、当たり前だが、奈々も葵の言わんとしている事をよく理解していた。


「確かに話を聞く限りでは大変そう……。

でも、それなのに海外でスカウトされて雑誌に載るって凄くない?

身長もそこまで大きくないよね??」


黛の言った通り、椿の身長は、日本の平均女性からしたら確かに大きいかもしれなかったが、世界的にしかも、身長で競う事の多い、モデルの世界ではかなり低い方の部類であり、奈々や葵の半紙を聞く限りでは、とても該当しそうには思えなかった。


「椿ちゃんはスタイルが良いから、当たり前だけどすらっとしていて、胸の大きさもちょうど良い。

出すぎてもいなければ、ぺったんこでも無い。 まぁ、男の子からしたらもうちょっと欲しいとかにもなりそうだけど……。

それに、やっぱり一番は、椿ちゃんらしさが一番伝わってくることが、なによりも魅力かな」


「らしさ?」


奈々の言葉にピンと来ていない黛は、聞き返すようにして奈々に尋ねた。


「椿ちゃんの載ってる雑誌とかも何度か見てたけど、一番椿ちゃんに個性を感じたんだよね。

周りはエグいようなスタイルを持つ海外の人達が大勢いる中、椿ちゃんはそれになびかずに、自分を貫いてた。

結構、モデルに関わらずいるんだよね、合わなくてもそれがトレンドだから、流行だからって合わせちゃう子……。

気持ちはわかるけど、せっかくなんだから自分を大切に、自分が一番よく見える形でいて欲しいと思うんだけどねぇ~。 なかなか難しいよね……」


奈々は今のファッションの業界、あるいは世間の流行に不満があるのか、少し暗い表情で、それでいて少し悲し気な雰囲気を纏い、呟くように答えた。


そして、少し重くなった雰囲気を紛らすかのように、奈々は続けて今度は香也に声を掛けた。


「それはそうと、香也?

香也は、どうしてあんな感じに椿ちゃんをコーディネートしたの??」


「んん? あ、あぁ、あれね!

結構いいでしょ? まぁ、私一人で思いついたというよりは、椿ちゃんにあれこれ言われて二人で、作ったって言ったほうが正しいけど……」


奈々の質問に、香也は自慢げに話した。


椿の髪は、バストに掛かるか、掛からないかぐらいのセミロングに部類する髪の長さで、茶色じみた色入っており、軽くパーマの当てられた髪型だった。


女性らしいその髪は美しさと、ふんわりと柔らかいイメージから来るやさしさを感じさせた。


メイクもそこまで濃いものでは無く、あくまで、椿の魅力を引き立てるもので留め、葵から見れば細かい点で、評価できる箇所がたくさんあったが、全体的に見れば控えめなメイクだった。


「これは、結構決まりかもね」


奈々は椿を見つめたまま、苦笑いを浮かべて呟くようにそう告げた。


椿は今までの参加者と比べようがない程に、やはりレベルが違く、生まれ持つ美も確かにずば抜けていたが、それよりもなにより、自分の一番綺麗に見える魅せ方がよく理解していた。


一般人も多くいるこの大会での勝敗は、どうなるかわからなかったが、葵、奈々、香也の三人は間違いなく椿が優勝を取ることになるだろうと考えていた。


そして、葵達はそのまま黙ったまま、椿に見とれるようにして、ステージを見つめていた。


「いやぁ~~、凄い歓声ですねぇ~~ッ!

流石はモデル!」


葵達が舞台を見つめていると、司会は会場の反応に驚きながら、椿と会話をし始めた。


「今回、撮影の合間という事で、参加いただいたいう事ですが、どちちらの雑誌の撮影なんですか??」


monモンmoです!

9月号に載りますので、チェックお願いします!!」


司会の質問に、椿は今までの参加者とは全く違い、自信あふれた様子で、余裕のある感じで笑顔を振りまきながら答えた。


「椿……、完全に場慣れてるな」


葵は、椿と会わなかった3年間で、人前に出る事をここまで慣れている事を知らず、少し驚いた様子で呟いた。


椿が海外でモデルをしている事は知っていたが、彼女の仕事は、見たことが無く、質問に堂々と答える椿を見て、椿の成長をまじまじと実感していた。



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