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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
七章 夏休み ~沖縄編 2日目~
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俺より可愛い奴なんていません。7-14

エントリーナンバー19番の参加者が呼ばれると、会場は一気に盛り上がり、今までの1、2を争う程の大きな声援と共に、エントリーナンバー19番として立花たちばな 椿つばきは舞台に現れた。


「うわぁ~~ッ! まさかのプロッ!!

ん? てゆうか椿って、私知ってるよ?」


椿の紹介を受け、奈々(なな)は衝撃を受けた後、何か思い出したかのように、続けてそう言った。


「有名なの?」


「いや、海外とかではそこまで有名じゃなくて、マイナーな部類なんですけど……。

一応、そうゆう業界の人間なんで、情報とかは詳しいので知ってます。

後、日本人がやっぱり小さなことでも海外で活躍してるって、嬉しいじゃないですか!?」


奈々の発言から興味を持ったまゆずみが、奈々に質問すると奈々は、椿についてそれなりに、知っている事を話した。


椿の事を話す奈々は楽しそうで、奈々は椿のファンなのだという事が、よく伝わってきた。


「へぇ~~、奈々知ってたんだ彼女の事……」


「うん! 結構知ってるよ? 雑誌取り寄せられるときは見てたし。

日本でモデルデビューしたわけじゃ無くて、初デビューが海外の雑誌だったんだ!

元々、日本生まれで留学で、海外に行っている時にスカウトされたらしい」


「ふ~~ん。

今度、私もちょっと見てみようかなぁ~、雑誌……」


熱く語る奈々に乗せられるようにして、香也かやも椿に興味を持ち始め、呟くようにしてそう答えた。


そんな会話を繰り拾える中、あおいは一人舞台を見つめ固まっていた。


(なんで、椿がここにいるんだ……? 

雑誌撮影とかって言ってたな? 雑誌?? なんのだ?)


葵は目を丸くしたまま、驚愕の表情を浮かべ、呆然と舞台に当然のように立っている、自分の妹を見つめていた。


そんな葵の視線に気づいたのか、おそらく偶々であったが、舞台に立つ椿と目が合った。


椿は葵の姿を確認すると一瞬、驚いた表情を浮かべながらも、すぐに表情はコロりと変わり、満面の笑みを葵に向けた。


葵はそんな椿に笑顔を返せるほど、心の余裕はなかったが、そんな葵に代わり、椿の笑顔を見た、主に男性の観覧者達が野太い、雄たけびに近いような歓声を上げ、盛り上がった。


(椿には、沖縄に行くことを伝えてはいたが、まさか椿も沖縄に来てるとは……。

そういえば、行くことを伝えてから、やたらと椿に連れてけだの、私は置いて行くんだだの嫌味を言われてたな……)


葵は今思い返してみれば椿に、沖縄に発つ直前までの事を思い出した。


沖縄を同じ日に訪れ、出会えたのは流石に偶然だろうとは思いつつ、葵は盛り上がる会場の中、その熱に一人取り残されていた。


「ん? どうかした葵??」


会場が盛り上がる中、一人呆然と舞台を見つめる葵に気付いた黛は、不思議そうに葵にそう尋ねた。


「え? あぁ、いや……、別に……」


葵はこれといって舞台に、今現在立っている椿を自分の妹だと、隠す理由は特になかったのだが、無意識に自然に隠すような態度を、取ってしまっていた。


もちろん、葵の様子は普通ではなく、葵の様子がおかしい事に黛は気づいていたが、平静を装う葵を、これ以上問い詰めたりはしなかった。


そして、そんな葵と黛のやり取りを他所に、今度は奈々が椿を見つめながら、ぼんやりと呟いた。


「んん?? どっかで見た感じがするんだよなぁ~~」


「やっぱり? 奈々もそう思った??」


唸るように難しい表情を浮かべ、首をかしげながら話す奈々に香也も同じことを感じていた様子で、確認するように尋ねた。


「うん。 なんか知り合いの子に似てるような、そんな感じ?

あんだけ可愛い子だったらすぐ思い出せそうでもあるんだけどなぁ……」


奈々と香也の感じた通り、椿と葵は兄弟でもあるためよく似ており、奈々と香也の既視感は、葵から来るもだった。


ただ葵は今、女装をしている事もあり、椿と兄妹だとはすぐに見破られる事はなかった。


今の舞台に立つ椿に、あるいは観覧で見ている葵の女装に、どちらかが寄せてコーディネートをすれば、一発で見破られたが、今はお互いがそれぞれコンセプトがまるで違っていた。


「う~~ん! もやもやがぁ~~ッ!!」


どうしても、誰に似ているのか思い出したいのか、奈々の唸り声は大きくなり、頭を抱えるようにして悩んでいた。


そんな奈々を尻目に、葵は別に暴露するつもりもなかったが、このまま隣で唸り続けられれば、水着コンテストに集中できないのと、どのみち、いずれかはバレる事でもあったため、大きくため息を一つ付いた後、奈々達に話す事を決意した。


「奈々さん、実は今舞台に立ってるのって……」


葵が呟くようにして、ゆっくりと話していると不意に、葵の声を遮るようにして、隣の黛が大きな声を上げた。


「妹さんでしょッ!? やっぱりねッ!!

似てると思ったんだねぇ~~!」


葵が答えを言い終える前に、ギリギリセーフと言わんばかりに、滑り込むようにして、舞台に立っている椿が、葵の妹だという事を言い当てた。


「あぁ~~~ッ!!」

「なるほどねッ!!」


黛が少し自慢げに、ドヤ顔で答えると、奈々と香也は一瞬黙り込み、葵と椿の顔を何度も見比べた後、納得したように大きな声を上げた。


「なんで、遮って言うんですか?

まぁ、当たりですけど……」


大した決心でもなかったが、少し覚悟を決めてから言おうとしていた葵は完全に、肩透かしを食らった形になり、不満げに黛にそう伝えた。


すると、黛は申し訳なさそうな表情を浮かべ、片手を顔の前に出し、ごめんと言った様子で、ジェスチャーで謝罪をした。


「確かに似てるッ!! 今、葵がギャルっぽい見た目だから、すぐにはわからなかったけど似てるわッ!」


「そうだねぇ~……。

言われていれば、メイクとさせてもらってる時とか、結構細かい注文多かったし、そういう美に対して厳しいところとかそっくり!」


奈々は、椿が出ていた雑誌を買っており、陰ながら彼女の事を応援していたためか、少し興奮気味で話し、香也は椿のコーディネートをしていた際の事を思い出し、性格の面でも葵と似ている部分があったと、思い返し笑っていた。


「ちょ、ちょっと葵ッ! 後で紹介してよ!!

てゆうか、香也ッ!! 椿ちゃんをコーディネートしたなんて羨ましいッ!! ズルい!」


「いやいや、私は奈々が葵の妹さんのファンだなんて知らんかったよ……」


「くぅ~~~ッ!! 羨ましすぎる!!」


奈々は今度は悶え始め、奈々にとっては、羨ましすぎるポジションにあった香也に、嫉妬しながらそう告げた。


「これ終わった後に会わせますよ……。

香也さんには、妹がお世話になってますし……」


「おッけーッ! 約束だよッ!? 葵!」


葵が椿と会わせることを確約すると、奈々は喜び、更に念を押すように葵にそう告げた。


はしゃぐ奈々を見て、葵は内心、会わせると言った事を少し後悔していた。


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