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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
七章 夏休み ~沖縄編 2日目~
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俺より可愛い奴なんていません。7-12

浜のミスコン『水着コンテスト』はその後も恙なく進み、一人一人簡単に紹介しいていき、ついに参加者は残る4人となった。


今まで様々な参加者が出ており、それぞれが高いレベルのものを発表していたため、会場は盛り下がることがなかった。


あおいまゆずみの知り合いでいくと、亜紀あき晴海はるみは出番終えていた。


他にも、Bloomブルームで働く店員達の殆どが出番終え、紹介が終わった参加者はそのまま舞台からはける事は無く、舞台端で控えるようにして、横並びに並んで参加者と共に、水着コンテストを観覧してた。


「もう、結構出揃って来てるねぇ~」


葵に誰が優勝しそうか、聞いてからというもの、ミスコンを隣でずっと見ていた黛がそう声を上げた。


「そうですね。

まぁ、ミスコンの開催時間も比較的に短いですし、時間的にはそろそろ終盤ですよね……」


隣で他の観客と同じように少し興奮気味の黛に対して、葵はケータイで時間を確認した後、冷静に淡々とした様子で答えた。


「誰が優勝かな~。

今のところで言うと私的には、晴海かなって思うんだけどねぇ~~。

ねぇ!? 葵はどうよ!? 誰が優勝すると思うよ!?」


「またそれですか…………。

さっきも二人前の参加者が舞台に上がってる時に、それ聞いたじゃないですか……。

まだ、全員舞台に上がってないんで分からないですよ……」


黛は葵とミスコンを見るようになってから、逐一葵に、誰が優勝しそうか、あるいは優勝候補か尋ね、葵の答えを聞いては何度も、「くぅ~~~ッ! やっぱりそうだよなッ!!」と謎のうめき声と同意をし、悶絶していた。


「さっきはさっきだよッ!!

人の心なんて、逐一変わっていくんだからッ」


「はぁ~~……。

そうですね、まぁ、今のところだとさっきと意見は変わってないですけど、一番有力なのは松野まつのじゃないですか??

周りの反応も良かったし……」


「いや~~、やっぱり葵も晴海を推すかぁ~~」


葵は冷静に私情を挟むことなく、純粋に美しさや魅力を判断し、今一番優勝に近いのを晴海だと判断した。


桜木高校でも、異性から人気を誇る彼女は、この大会でもその魅力は伊達じゃなく、スタイリストの奈々(なな)が担当したことで、より一層魅力を増していた。


少し茶色みがかった長い髪は、首辺りから細かく、波打つように一定にウェーブがかり、巻き髪ではあるため、ふわっとした印象がありはしたが、ファッション雑誌にある横に広くなるような、ゆるふわ系とは少し違った。


どちらかと言えば、可愛いという印象よりも美しいと思わせる、外国人モデルがよくセットしてそうな、そんな雰囲気を待つ髪型だった。


「松野はどちらと言えば、アイドル的な感じの可愛さの魅力があるんで、そっちに寄せた、彼女の魅力を更に増させたコーディネートで来ると思ったんですけどね……。

でも、これはこれで凄いですよ。

可愛らしくて、クールというか……」


「確かにねぇ~~、あれは可愛いッ!!」


葵は純粋に晴海の仕上がりを見て、感心しているように答え、黛もまた葵の意見に賛同するようにして、唸るように声を上げた。


葵と黛とで話していると、二人の声が聞こえたのか、コーディネートをした当事者である、奈々も会話に入ってきた。


「えっへへぇ~~ッ!!

葵に褒められちったぁ~ッ!

まぁ、二人目の葵の担当した参加者には、結構驚かせられたからねぇ~~。

こっちも負けてられないよ!」


奈々は純粋に褒められたことを嬉しそうに、笑みを浮かべながら、得意げに自慢するように、香也かやに報告した後、続けて葵に視線を向けそう伝えた。


「驚きました、ほんと凄いです……。

今度、あの髪とかどうやってるのか教えてほしいです」


「ホッホッホ~~ッ!!

いいぞ~、わが愛弟子ッ! おねぇちゃんが教えて進ぜようッ」


既に発表を終えて、舞台の端に立つ晴海に再び視線を戻し、素直に褒める葵に、奈々の調子は最高潮へと達し、機嫌によく、葵に答えた。


「もう、奈々?

あんまり調子乗らないの……」


「お? なんだなんだ? 香也ちゃんは葵に褒められてないから嫉妬かにぁ??」


「ムッッか…………」


スタイリストに限った話ではないが、腕をそれなりに持っている、あるいは才能がある者からの良い評価は、それなりに嬉しく、一般の方から綺麗や上手などと言われるのも嬉しかったが、やはりそれ以上の喜びがそこにあった。


有頂天になっている奈々をクールダウンさせようと、香也は奈々に呼びかけたが、逆に壮大な煽り文句を食らい、香也は口から思わず声を漏らす程の怒りを奈々に現した。


そこからというもの、二人は激しく言い合い再び始まりだしていた。


そんな二人を他所に、葵と黛はそんな二人のやり取りが慣れてしまったかのように、気にすることは無く、ミスコンの会場へと視線を戻していた。


「ねぇねぇ、葵?

さっき、晴海が優勝に一番近いかもって言ってたけど、他の子はどうなの??

ワタシ的にはさぁ~、亜紀とかも結構いい線いってると思うんだよねぇ~。

ほら、一番最初に聞いた時も、亜紀は優勝候補かもって葵も言ってたじゃん??」


黛のそんな問いかけに、葵は今度は晴海から亜紀に視線を移し、少し間を置いた後、ゆっくりと答え始めた。


「確かに清水しみずが優勝してもおかしくは、全然ないと思いますよ?

ただ、これは好みの問題になってくるかと思いますけど、清水は綺麗な女性にも見えますけど、カッコいい女性にも見えますよね?

あのカッコよさは、清水の魅力でもありますけど、少し高圧的に見えなくもないんですよね……」


「そう? 私にはカッコよくて美しい女性に見えるけどなぁ~」


「そこは男女の考え方にも違いが出てくるんでしょう。

女受けも男受けも両方するとは、思えないです。

大して、松野は両方にうけると思いますよ?

愛嬌がありすぎると、女性からはあんまり良くは見えないかもしれないですけど、松野はあのメイクと髪のセットでどこか大人びた印象もありますからね……」


葵は黛の何度目かの質問だったが、それでも丁寧に自分の考えを黛に伝えた。


普段、面倒くさがりで、口数もそこまで多いほうではない葵だったが、事この分野においては、葵は饒舌になり、本人も話していて苦ではなかった。


「葵はよく見て考えてるねぇ~~。

私らでもそんなに、深く詳しく見ないかもよぉ~?

ねぇ、香也??」


言い合いがいつの間にか終わっていたのか、葵と黛の会話に奈々はそう告げながら入ってきた。


「うん! 廻りの観客の反応とかも考慮してるしね!

ホントに好きなんだねぇ~、メイクとか」


「いや、別にそんな持ち上げる程の事でもないですよ……。

それに、メイクが好きなんじゃなくて、女装が好きなんです」


純粋に褒める奈々と香也に葵は内心少し気恥しような、照れるような、そんな感情を抱いたが、それを表に出すようなことは無く、毅然とした態度で返事を返し、香也の最後の言葉ははっきりと否定した。


葵のあまりの清々しい程の言いように、黛達は何も言い返す事ができず、苦笑をすることしかできなかった。


「確かに、葵の言ったように8番の子……、亜紀ちゃんだっけ?

亜紀ちゃんは確かに万人受けではないかもね!

スタイル抜群だから、モデルとしては最高なんだけどねッ!」


奈々も葵と同じ事を思っていたようで、葵の意見に賛同するように答えた。


「まぁ、優勝が無いってわけじゃないから……。

どうなるかなんて、私たちにも全く分からないからね。

それに、こういうコンテストとかにスタイリストとかで着た事何回かあるけど、結構外れたりするしね??」


奈々の言葉に付け加えるようにして香也がそう告げると、丁度、タイミングよく14人目の参加者の発表の終わりを告げ、会場の司会の声が葵達の耳に入った。


「それでは、里奈りなさん! ありがとうございました!

続きましては、15人目の参加者の発表ですッ!!」


司会の高らかな声に釣られるようにして、葵達は会話をやめ、会場の方へと視線を戻した。


「次の15人目の参加者は、会場の観覧の皆様の中に、行ったこともある人があると思います!

Bloomで働く看板娘ッ!! 昨年もこのイベントに参加いただいておりました!!

小竹こたけ しずかさんですッ!!」


司会が宣言するように、声を上げると、地元の観覧者も多いためか、一際大きな歓声が上がった。


黛もずっと静の出番を待っていた様子で、彼女の名前が司会の口から発せられると、釣られるようにして黛も静の名前を叫んだ。


「それでは、登場していただきましょうッ! どうぞッ!!」


司会の合図で、静は会場の大きな声を一身に受け、舞台裏から舞台へと現れた。


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