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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
七章 夏休み ~沖縄編 2日目~
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俺より可愛い奴なんていません。7-10

◇ ◇ ◇ ◇


浜のミスコンこと、水着コンテストの準備を終えたあおいや奈々(なな)、香也かやは、舞台裏から出てぐるりと回るようにして、既に沢山の観客がいる方へと向かっていた。


舞台裏を出る前に葵は、開催までの少しの時間でも何かトラブル等があった際や、イベントの内容やスケジュールを知らなかったため、お色直し等が発生するのでないのかと思い、留まらなくても良いのかと、奈々達に尋ねていた。


しかし、葵の心配は杞憂であり、奈々と香也は心配ないと言わんばかり葵に答えた。


「あッ! 葵!!」


舞台裏から出て、少し歩くとすぐに葵を待っていたかのように声をかける人物が現れた。


葵は声の方へと視線を向けると、そこにはまゆずみの姿があった。


「あぁ、黛さん。

お疲れ様です」


葵は少し疲れたのもあって、元気なさげに黛に挨拶を返した。


「おぅッ、お疲れッ。

どうだった? 間に合った??」


葵を舞台裏を連れて来て、有里子ゆりこや奈々達に引き渡すと、お店の事もあり、黛はすぐに会場裏から姿を消していた。


そのため、葵のメイクをしている姿はおろか、スタイリストが足りないといった状況から、参加者のメイクが全て完了している事をすらもしらなかった


「ああ、大丈夫でした。

そっちこそどうだったんですか? お店の方……。

Bloomブルームの店員の参加者結構いましたよね? 清水しみず松野まつのも抜けてるし……」


「あ~、大丈夫だったよ?

忙しくなることは想定してたから、お昼だけ別の子達も呼んだし」


葵は自分が黛からの命令とは言え、忙しくなっていたBloomの状態がどれほどのものか知っていたため、少し気がかりではあった。


葵が黛に尋ねると、葵がそんな事を心配しているとは思っていなかった黛は、少し驚いた表情を浮かべて答えた。


「そうですか……。

それじゃあ、お互いにひとまずは一段落ですね……」


「うッ……、ま、まぁ……そうだね……」


葵がため息を付きながら答えると、黛は何か言いたげな様子で、歯切れ悪く葵に返事を返した。


葵も黛の様子に気付かないわけもなく、そのまま黛の言葉を待っていると、黛は続けて話し始めた。


「それでさぁ、葵……。

ウチのチームBloomはどうよ??」


「はぁ?? チームBloom?」


言葉を発するまでは、黛は少し深刻そうな表情を浮かべていたため、葵はどんな話が出るか少し腹をくくっていた部分もあった。


しかし、黛からは聞いたことも無いような言葉で、確実に足して重要でもない話題だと葵はすぐに分かり、敬語も忘れ素の反応で黛に問うようにして答えた。


「ウチの店から参加した子達だよッ!! 亜紀あき晴海はるみも含めた、チーム『新生Bloom』!」


「名前変わってるし…………。

それで? どうよ?ってなんのこてですか?」


葵は半ば呆れた様子で、ため息まじりに黛に尋ねた。


「どうよってそのままの意味だよ。

優勝できそう? ウチの娘達」


「ウチのむすめって……。

どうすかねぇ~、正直、忙しすぎてそれどころじゃなかったんで、わかんないですよ……。

全員の参加者を見たわけじゃ無いんですし…………」


「えぇ~ッ!! そこが一番重要じゃんッ!!

Bloomの午後の部に関わるよッ!? 売り上げに関わるんだよッ!?」


葵は少しめんどくさそうにしながらも、当時の事を思い出してみたが、やはり忙しく思い出ばかりで、きちんと全員の参加者の総評を下すことが出来ず、奈々(なな)と香也かやのメイクや髪のセットの腕前も関わってくるため、余計に分からなかった。


葵の評価を期待していたのか、黛は興奮気味に声も大きく、大きく落胆しながらも文句を言うようにして、葵にそう告げた。


(あぁ~、なるほどな……。

あん時、やたらと清水や松野にミスコンを勧めてた理由がわかった……。

賞金出るとか言って、その気にさせようとしてたしな)


葵の評価などただの推測にしか過ぎなかったが、黛の食いつきようを見て、葵はBloomの開店前、やたらと亜紀達を参加せせようとしていた事を思い出した。


ミスコンで優勝すれば、その優勝者を一目近くで見ようとしてくる客が必ず、一定数現れ、更には他にもBloomは数人、このコンテストに参加する女性がいたため、このイベントの成功は、Bloomの午後の売り上げに直結してくることが、目に見えてよく分かった。


「あんま、下手な事言えないですけ、Bloomの店員の参加者は、みんな美人多いですし、優勝は狙えるんじゃないんですか??

まぁ、水着コンテストじゃなければ、俺も出れたんすけどね。

俺なら優勝も固いですし……、残念です」


「すごい自信だな。

てゆうか、その見た目だとホントに冗談に聞こえないんだよねぇ~」


「冗談じゃないです」


ニヤニヤと笑みを浮かべながら、話す黛に対して、葵は真顔で当然といった様子で堂々と答えた。


「葵~~ッ!! そろそろ会場行かないと、人凄いよぉ~!!」


黛に声を掛けられ、その場で立ち止まり少しの間、話していた葵に、会場へと向かっていた奈々が、少し離れた位置から葵に呼びかけるように声を掛けた。


「わかりましたッ!

……、そろそろ行きますか……」


奈々からの呼びかけに葵は素直に応じると、奈々に返事を返した後、黛に会場に戻ることを促した。


「なんか、私と接す時と態度違くない?

スタイリストさんには従順じゃない??」


「気のせいですよ……、たぶん……」


不満そうな表情で尋ねてくる黛に対して、特に意識したわけではないが、態度に少しの違いがあることを葵は自覚し、黛に図星を付かれたことで、返事に若干言葉が詰まった。


「いや、たぶんて……。

今は私が、雇い主なんだけどなぁ~~。どゆこと?」


葵はそのまま、黛から疑うようなまなざしを受けながら、奈々の方へと向かって歩いていった。


◇ ◇ ◇ ◇


葵と黛は、会場の近くへとたどり着くと、いきなり会場の熱気を感じた。


南国の島という事もあり、元々気温は高かった。

それに加え、イベントで集まった観覧の人数がかなりいたため、人口密度による気温上昇もあった。


人が集まったことで、風通しも悪くなり、人ごみの端で、更には海側であれば、海風を感じることもできたが、それ以外では風を感じることはなかった。


「人凄いねぇ~~。去年よりも多いかも……。

なんでかな??」


「え? いつもこれぐらい入ってるんじゃないんですか??

割と人気のあるイベントなんだと思ってましたけど……」


葵は会場に到着し、黛の言葉を聞くまでは、地域イベントにしてはデカかったため、それなりに有名で人気のあるイベントなのだと、感心していた。


「いやいや、ただの地元イベントだよ?

まぁ、人は昔から集まってはいたけどこれほどじゃないよ……。

いつもなら今の4分の3くらいじゃない??」


「まぁまぁ、集まってるじゃないですか……」


「へへへッ、そかそかッ」


葵は例年ならばもっと小さいイベントなのかと思っていたが、黛の回答はそうでなく、呆れた様子でため息交じりに呟いた。


葵と黛は、人ごみの中へと入っていくと、すぐに奈々と香也の姿を確認でき、彼女たちと合流した。


偶然近くにも、Bloomで働く店員たちの姿もあり、ステージも近く、知り合いのまとまった位置で観覧することができた。


「おッ!? 立花たちばな~!!

やっと解放されたのか?」


葵が観覧予定場所にくると、先ほどまでお店で働いていた長谷川はせがわが、笑顔で話しかけてきた。


長谷川はキッチンでの作業であったため、Bloomが開店してからろくに業務以外で会話を交わすことが無かったため、少し久しぶりの感じを葵は感じていた。


「おう、生きてたか」


「いや~、ほんとめちゃくちゃ忙しかったぞッ!

人が足りないからって皿洗い以外で、厨房にも入ったし、まぁ基本手伝いだったけどな!」


長谷川の苦労話を聞きながらも、葵は長谷川の後ろの方に見えるBloomの職員の方へと視線を飛ばしていた。


「他の人も来てるんだな?

基本、Bloomは総出で観覧か??」


「ぽいな……、やっぱり結果によっては、午後に影響するからな…………」


長谷川は数分前の忙しかった時間帯を思い出すようにして、暗い表情を浮かべながらそう答えた。


先程、黛との会話で気づいた葵だったが、長谷川も他のBloomの職員もこのイベントの結果によっては、この後の忙しさに関係するため、気になって仕方がないといった様子だった。


この大会に出ているBloomの仲間達を応援したいと思うと同時に、ほとんどの職員が複雑な感情も感じていた。


葵も他人ごとではないため、この先の事を思いやられながらも、基本的には考えないようにしようと決め、ステージの方へと視線を戻した。


「あッ! 見つけたッ!!」


葵がそろそろかと思いステージに視線を向けると、不意に違う方向から、聞いた事のある声が不意に掛けられた。


かなり大きな声だったため、葵も内心では自分にかけられた声では無いと思いつつも、声のした方へと視線を向けた。


すると、そこには走ってきたと思われる、少し汗をかいている有里子ゆりこの姿があった。


大きな声を出したこともあり、有里子は様々な人の視線を受けながらもまっすぐ葵達の方へと向かって歩いてきた。


そうして奈々と香也の近くまでおもむくと、その場で立ち止まった。


「ごめんね! 香也ちゃん、奈々ちゃん!

もう一人、急遽だけど参加者が出てきて、今すぐメイクしてもらいたいんだけど、お願いできる?」


「え……、あ、はい、大丈夫ですよ。

奈々、私、行ってくるから奈々は待ってていいよ!」


有里子の少し焦って様子に、二人は最初は戸惑っていたが、すぐに香也が返事を返し、気前よく有里子の願いを引き受けた。


香也が引き受けたことで、有里子は何度も感謝をを告げながら、すぐに会場裏へと、香也を連れて向かって行った。


「葵、なんだか行っちゃったけど、葵は手伝わなくても大丈夫なの?」


有里子が香也を連れてい言った風景を見ていた黛が、葵に不意にそんな風に声を掛けてきた。


「大丈夫ですよ。

香也さんと奈々さんメイクは速くて正確ですんで。

香也さんも奈々さんにあぁ言ってたわけですし……」


心配して黛は葵に尋ねたが、葵は香也の腕も知っていたため、まるで心配していなかった。


ただ、急遽参加を申し出た参加者には少し気になっていた。


黛とそんな会話をしていると、急に音楽が流れ始め、葵は一瞬驚いたが、それがミスコンの開始をしらせるものであるとすぐに理解した。


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