Shoo-Bee-Doo-「わわっ」ってなりそうでもきみが笑顔をくれるなら世界はまだまだ大丈夫です。
やっている人がいるかなと思ったけどいなかったので勢いだけで作りました。あとから変更などは致しません!
ここはとある私立高校の下校時刻、つまりは放課後だ。友達と放課後を一緒に過ごすものもいればまっすぐ家に帰るものもいる。はたまた学校に残るものもいればリア充街道まっしぐらだったりするものも…。クソ、リア充は滅べ。っと、失礼した。とまぁ、放課後はいろいろすることができる。そんな中、一人の女子生徒がとぼとぼと帰っていく。その表情から察するに彼女は今日あまり運のよい日ではないのだろう。だが、そんな彼女でも笑顔になれる魔法の合言葉がある。それが「Shoo-Bee-Doo-Wap-Wap」である!
今日は朝からツイていない。いや、ツイていないのは普段もそうだが今日は特にツイていない。具体的にどういう感じにツイていないかというと…。
普段、私は7時に起きる予定だが今日はなんと7時半に起きてしまったのだ。せっかく昨日、明日はこの髪型に挑戦してみようと意気込んでいたのに…。これじゃあ、時間もないし髪型もぼさぼさのままで登校しなくてはいけない。登校中も通りかかる信号はすべて赤、昨日の雨でところどころに水たまりができているけどそれを避けようとして電柱にぶつかったり、車に水をかけられたりと散々である。学校についても日直の仕事があって日誌を取りに行くのに面倒ごとに巻き込まれて5分で着く職員室なのに15分もかかって先生に怒られる。授業中もなぜか私が解けていない問題だけを私に当ててくる。狙っているんじゃないかって思うようだがそんなことはないらしい。そんなことがありながら放課後、私は一人トボトボと帰り路を歩いている。
「はぁ…高校ではしっかりとしないといって言われているのに全然ダメだよ。描いていた理想の私って一体何なんだろう。」
自分でもわかっている。変わらなきゃって、でもそこにたどり着くまでの道も遠いってこともわかっているんだ。自分で何度も挑戦してみたけどアレもダメ、これもダメって自分で勝手に悩んでいることくらい…。
その時、ドスンと目の前の人に衝突した。
ああ…やっぱり今日はツイていないな。
私はもういいやと思いながら、倒れようとしていたが、寸前でぶつかった人に手を引かれる。
「大丈夫…ですか?」
その人は私よりも多分年上で好青年だった。私は助けられたというよりも手を引かれたということに観点を置いていた。
「あ、あの…はい…大丈夫です。」
私は内心ドキドキしながらも落ち着かない様子で返答をした。その言葉に青年はクスっと笑うと言う。
「あはは、そんな緊張しなくても、同じ高校のよしみですし。」
えっ…と私は改めて青年の来ている服に着目した。確かに、私と同じ制服を着ている。じゃあなんで年上って思ったんだろう。って、そんなことはどうでもいいの、ぶつかったのは私なのに謝らないと!
「あの…さっきはぶつかってすみませんでした。では、私はこれで。」
私はとにかく去ろうと思っていた。この人にまで私の今日の運のなさを移すわけにはいかない。せっかく助けてもらったのはありがたいけどここは退散させてもらおう。
と思っていたのだが、青年は私の手を離そうとはしなかった。
「あの…手を…。」
私がそういうと青年はああ、そうか。と言い、手を離した。そして青年は続けて私に言う。
「あの、よければ少し歩きませんか?」
それはどういう意味で?とはあえて聞かなかった多分、この人にとってはただの散歩ついでか登下校の道のりだろう。それくらいなら私も別に構わない。ただ、ほんの少しだけ遠回りになるだけだ。
「良いですよ。ただ…。」
「ただ?」
そう、言わなくてはいけない。私が今日物凄く運がないということを。
「今日、私はあまりツイている日ではないのです。」
私が言うと青年は再び笑い出した。その笑いからがあまりにも可笑しかったので私はついムカッと来た。
「あの!笑い事じゃないんですけど。」
私が言うと青年は笑いを静かにして私のほうへと向いた。よく見ると笑ったせいなのか目に涙がついている。
「いやー、ごめんね。笑うつもりはなかったけど、まさかそういうことを気にしている人がいるとは思わなかっただけなんだ。」
「それって思いっきりバカにしていませんか?」
「してないしてない。」
どうだか、こういう感じの男は内心『運が悪い?バカじゃねーの!俺そんなの気にしないし』とか思っているに違いない。
「ま、いいでしょう。今日の私の運の悪さを甘く見ないでくださいね。」
自分で言っててすごく恥ずかしいしくだらないことだけどこの人に今の私の運の悪さを分からせるにはこ
れが必要だ。
青年は表情を変えずに顔は笑っていながらも言葉だけは真剣になっていった。
「分かった。これからはバカにしないでおくよ。」
「約束ですからね!」
こうして、私はこの不思議な青年とこの憂鬱な街を共にすることとなった。
きっと素敵なことが待っていると信じて…。
学校からある程度歩いてから青年はふと呟く。
「僕ね、今日君と会えてよかったんだ。」
その青年の言葉の意味が分からない私は聞き返す。
「それは、どういう意味ですか?」
「今日、君と会えてからの会話。今日、君と見たあおぞらがすべて特別ならばすべて宝物になるんじゃないかなって思ってさ。」
「……だいぶスケールの大きい話ですね。」
「そうかい?僕は密かに願っているんだよ。『誰でもいい、この憂鬱な世界にキラメキを』ってさ。変な話だけどそれでも僕はそうなることを信じ続けている。」
青年の言葉、そして願いに私は自分が今日一日だけ不運になっていることがバカバカしく思えてきた。この人は私と同じで世界を憂鬱と感じている。なら、私のこの曇りがちな心なんてただのちっぽけなことじゃないかって。
青年は続けて言う。
「昔、ある人に言われたんだ。『どんな窮地なことが起きても、どんな不運なことが続いてもこれだけは覚えていて、絶対に大丈夫になれる呪文。』って。」
「絶対に大丈夫になれる呪文…ですか。」
「うん。その人の呪文は聞かされた時にはわからなかったけど今の君を見ているとよくわかるようになっているんだ。『Shoo-Bee-Doo-Wap-Wap』っていう魔法の呪文があれば。」
Shoo-Bee-Doo-Wap-Wap よくわからない呪文だけどなんでだろうな。聞くだけで不思議と笑顔になれるそ
んな気がする。
「『Shoo-Bee-Doo-Wap-Wap』いい言葉ですね。」
私が言うと青年は私の頬をつまんでぐいーと引っ張った。
「今、学校を出てから君が不運なことに遭遇していないことに気付いていた?」
「えっ?」
青年に言われて思い出してみると確かに学校からここまで3つ信号はあったがそのすべてで赤信号ではなかった。さらには雨雲がかかっていたのにいつの間にかその隙間から虹が出ている。これが…Shoo-Bee-Doo-Wap-Wapの効果?なのかな。
「その人は言っていなかったけど、僕はこう考えている。『この世の中で「わわっ」ってなりそうでもきみが笑顔をくれるなら世界はまだまだ大丈夫だ。』とね。忘れてはだめだよ。『Shoo-Bee-Doo-Wap-Wap』は合言葉だからね。」
青年はそういうと、私にとびきりの笑顔を向けるとそれじゃあね。といい、どこかへと去っていった。残った私は一人、この道とは反対方向の道を歩き始めた。名前もどこから来たのかもわからなかったけどあの人は私に勇気をくれた。それだけは確かなのはわかっていた。そして、私はつぶやくのである。
「Shoo-Bee-Doo-Wap-Wap……ふふっ!変なの!!あ~おかしい!!」
そういうと私はスマートフォンを取り出し、音楽アプリを起動させ、一つの音楽を聴く。
タイトルは『Shoo-Bee-Doo-Wap-Wap!』アーティストは『水瀬いのり』。
この作品で水瀬いのりさんを知った方はぜひ、ラジオを聞いてください。楽しいので。