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サーナの実力2 え~と……二刀流かな?

 とはいえ、サーナがそんなしょうもない嘘をつくわけがない。


 俺とクレールが無言で、元レンタル体育館ならぬ、現剣技場に足を運ぶと……そこには、しおたれた様子の男女三名が佇んでいた。


「おまえら、またあっさり負けたもんだな?」


 俺が直球で尋ねると、一番気性の激しいヴァレリーが、しょんぼりと低頭した。






「面目次第も……ございません。死にたい」


 おぉ……これは、重傷だぞ。

 そういやこいつ、割と剣技に自信あったよな。

 普通に、隊員の中では強者の部類に入ってるし、無理もないのか。


「まあ、うん。つか、そこまで落ち込まんでも」


 ちょっと活を入れてやろうかと思ったが、ヴァレリー達三名が本気で落ち込んでいるのを見て、さすがの俺も控えることにした。

 死者を鞭打つ趣味はない。


 考えようによっては、これで今後は、修練にさらに身を入れるようになるかもだし。

 おまけに、俺達の後をついてきたサーナ自身がちょっと後悔しているような顔付きなので、か細い肩を叩いてやった。


「サーナまで落ち込むことないって」

「は……はい」


「いやホント、ガランディア帝国のロイヤルガードといえば、他国からは『一騎当千』とか『帝国の最エリート戦士の集団』とか、『泣く子も黙る』とか噂されてて、どう考えても過剰な評価もらってたが。しかし、サーナがその隊員達を倒したとなると、こりゃもう大金星だ。生涯、自慢の種にできるぞ!」


 俺がせっかく慰めていたのに、クレールが横から「隊長、部下を殺しにかかってますね?」と半笑いで難癖つけやがった。


 しかしまあ……確かに俺がしゃべってる間、ヴァレリー達は頭を抱えてどかっと落ち込んだらしい。特にヴァレリーなんか、頭抱えるだけじゃなくて、「うあうあああああっ」とか意味不明の呻き声洩らして、頭を前後に揺すってるしな。


 美人が台無しである。


 先程は、驚きのあまり切腹がどうのと思ったが、よく考えたら練習試合なんだし、勝ち負けなんてどうでもいいと思うが……そんな考え方する俺の方に問題あるのかね。




「じゃあ、俺もちょっと相手してもらおうかな。見てなかったから、興味あるし」


 思い出したように言うと、なぜか敗残兵三名がぴたっと呻くのをやめ、希望に満ちた目で俺を見つめた。


「……なんだよ?」

「いえっ。ぜひ雪辱を果たしてくださいっ」

「お、おまえね」


 なにか勘違いしているヴァレリーに、俺は顔をしかめてやった。


「別に果たし合いじゃないだろ? 仮に俺が負けたっていいじゃないか。その場合、それだけサーナの才能と実力が凄かったってだけだ」


 しかし、これには思わぬところから異論が入った。


「セージさまに勝てるはずないですっ」


 結構な大声で言われ、俺が振り向くと……手で口元を押さえているサーナと目が合った。


「ご、ごめんなさい……つい」

「いや、いいけど。とにかく、適当に武器選んで始めるか」


 でもこれは、誤った評価を正してもらえる、良いチャンスかもな。

 俺に幻滅して、考えが変わるかもだし。



 

 剣技場とはいえ、前にレンタルしてた公民館時代の名残りで、未だにバスケットボールのゴールが前と後ろにあったりするが。

 でも壁には、木刀と竹刀と木剣とイミテーションの四種類が並んでいて、好きな武器で素振りの練習やら試合やらができるようになっている。


 ちなみに、ロイヤルガードの隊員達は普通にプラーナ、つまり生命力とか気とか呼ばれる力のコントロールくらいはできるので、仮に木刀が頭に直撃したって、刃がないなら軽い怪我くらいで済む。並の戦士には不可能な、身体強化が可能だからだ。


 その彼らを倒したのだから、サーナに「サーナは身体強化は知ってるよな?」などと訊くのは失礼というものだろう。


 だいたい、いざという時は俺が加減すればいいだけだ。

 万一負けた場合でも、俺なら怪我すらしないし。俺はこれまでにいろいろあって、特に意識しなくても、常時身体強化状態なのである。


 ……とはいえ、主にサーナに対する用心のために、俺はイミテーションを手にした。


 これは向こうの大陸で広く知られる練習用の武器で、光剣というのが正式名称だ。

 たんなる筒状の武器なんだが、スイッチを入れるとライトセーバーみたいに、付与魔力による光の刃が出る。ただし、ライトセーバー同様、その刃でスパスパ切れるわけじゃない。

 イミテーション同士が激突すると派手に音が鳴るものの、人体に当たってもちょっと押された程度の衝撃だ。


 配慮を必要とするこんな試合の場合、非常に使い勝手がよろしい。魔法文明ならではの練習用武器だろう。本当にライトセーバー顔負けの、実戦で使う光剣もあるけど、当然ながら、そんなのは練習で使わない。

 サーナも、俺がイミテーションを取るのを見て、自分もそれを手にした。


 しかしこの子――


「え~と……二刀流かな?」

 

 光剣のスイッチを入れて付与魔力を発動させた彼女を見て、俺はちょっと目を見開いた。両手に持ってるぞ、この子。



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