襲撃1 今日でまとめて決着を着ける!
ジェットコースターは、異世界の住人から見れば、かなり派手な乗り物なので、当然ながら、園内にたむろってた金髪男共も、こちらを見上げる。
見上げて……ものの見事に硬直していた。
「あそこだっ」
金髪の一人がようやく叫んだ。
「わっ、モロに指差された――て、うぉおおおおおっ」
捻りの入った回転来たっ、来た! 何回転あるのか、これ!
これは予想以上に効く。もはやおっさんの俺にはキツいっ。
「い、今はどうにもなりませんし――あ、あははははっ」
真面目なセリフ言いかけた割に、サーナは途中からころころ笑ってるが、信じられん。
ジェットコースターのスリルに、どうしても笑いが込み上げるらしい。
この子の長い金髪もちりぢりに舞っていて、俺の顔にバンバンかかるほどだというのに。本気で怖い物知らずだなっ。
「か、かつては俺もそうだったが、今は違うんだあっ」
「うふふふふっ」
この前観た、SWのルークのセリフをそのまま叫ぶ俺と、横でひたすら楽しそうに笑うサーナという、なんとも頭の痛いコンビである。
しかしもちろん、その間に連中は互いに声を掛け合い、続々とこの遊具の方へ走ってくる。こちらもそろそろ一週して元の入り口に戻って来ているが、タイミング的にはギリギリかもしれない。
「しかし、この遊園地で戦闘行動に出る気か! なんて節操のない連中だっ」
「セージさま、間に合わないですっ。もう鉄階段を駆け上がってきました!」
言われるまでもなかった。
王国側の連中は、どうやら手段を選ばずに俺達を押さえる――あるいは殺すつもりらしいっ。係員が「割り込み禁止ですっ」と制止しようとしたのに、「どけえっ」と喚いて突き飛ばす始末である。
「おいおい、こりゃ騒ぎがどんどん大きくなるぞ」
「天威こと、セージ殿と、皇帝アランの娘、サーナ殿とお見受けいたすっ」
ついに停止しかけた乗り物の前に至った一人が、長剣を向けて叫んだ。
「なにあれ、映画?」
「アトラクションじゃね?」
並ぼうとしていたカップルが脳天気な感想を言ってくれたが、金髪野郎は全く無視した。
「大人しく共に来て頂ければ、よし。さもなくば、ここで斬るがいかがっ」
「なにが『いかがっ』だよ」
俺は小声で文句をつけ、サーナに囁いた。
「戦うにしても、この遊園地内は駄目だ。裏手の丘の方へ誘導する。抱き上げて走るけど、いいな?」
「――っ! はいっ」
一瞬碧眼を見開いたサーナは嬉しそうに破顔し、自ら俺の方へ寄ってきた。
ちょうど、金属製のセキュリティーバーが上がり、ようやく身体が解放されたところで、俺は躊躇なくサーナを抱き上げ、その場で跳躍した。
「と、跳んだっ!?」
「相手なら、他でしてやるさ、間抜け!」
サーナをお姫様だっこしたまま、俺はそいつの頭上を跳び越え、待機列の手すりを一度足で蹴り、さらに大きく跳躍する。
「わあ、わああっ」
不安になったかと思いきや、サーナは心底幸せそうに笑っていた。
「舌噛むなよ、サーナ!」
「平気ですっ」
元気のいい返事に俺は一度だけ空中で笑いかけ、そのまま数回転ほどして、地面に着地した。そのままプラーナ(生命力)の力を限界まで引き出し、加速に移る。
こうなると、園内の客も敵も、ほぼ止まっているようなものだが、それでも敵の一部はついてきた。やはり、加速を使える程度の戦士はいるらしい。
さらに加速レベルを上げて引き離すのは簡単だったが、俺はあえてそうしなかった。
「もうアランやクレールに任せておけないっ。この際、俺が決着つけてやるっ」
高らかに叫び、そのまま園内を真っ直ぐに駆け抜ける。
どこかでサイレンみたいなのが聞こえたが、俺はそのまま外園の柵を大きく跳び越え、園外で着地した。
そのまま、遊園地裏手の小高い丘の方へダッシュする。
「すまないな、せっかくの遠出がこんなことになって」
斜面を駆け上りながら謝罪したが、サーナは優しい笑みと共に首を振った。
「だっこして頂きましたし、サーナは幸せですわ」
「はははっ」
どこまで本気か知らないが、その返事で多少は救われたかもしれない。
「いずれにせよ、今日でまとめて決着を着ける!」




