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デートという名のイベント1 これって、デートですよねっ


 とはいえ、クレール達が敵の所在を突き止めるまで、なにも部屋で正座して待っている必要はない。

 せっかくの時間を、俺は有効に使うことにした。


「なあ、明日は遊園地へ行くか? 平日で空いてるだろうし」


 レストランを出たところで持ちかけると、サーナは小首を傾げた。


「遊園地ってなんですか?」

「おぉ、そうだった……向こうの世界に、そんなのはなかったよなぁ」


 俺は頭をかき、急いで周囲を見渡す……こういうホテルならあるはずと思ったが、やはりロビーの隅に、インターネットコーナーがあった。

 数台のPCが並んだ休憩所みたいなところだが、俺のスマホだと画面が小さいから、こっちの方がわかりやすかろう。


 というわけで、サーナを誘ってPCの一台に座り、動画検索で適当に楽しそうな遊園地を選び、動画再生してやった。


 もちろん、音量絞り目で!






「遊園地ってのは、こんなのだっ」


 わざと大仰に両手を広げて宣言してやる。

 サーナは……最初は「なんでしょうか、ここ」と言いたそうな顔で見ていたが、そのうち可愛い唇が半開きになり、大きな瞳が爛々と輝き、しまいには隣の席から俺の方へ半ば身を乗り出すように眺めていた。


 帝国にも遊戯を目的とした公園はあるけど、ここまで「遊ぶものしかないっ」というタイプの遊園地は、確かなかったと思う。


 サーナの年代なら喜ぶだろうと思ったが、案の定だった。




「なんですか、ここ! 凄く楽しそうですっ」

「だろ? 実を言うと、俺もジェットコースターは好きなんだ」

「どういうものでしょうか、それ?」


 半端ないわくわく顔で訊くので、俺はまた検索して、ジェットコースターの動画を探してやった。しかも、カメラを頭に取り付けた、自分視点のものを。


「はははっ、これがジェットコースター! ほら、搭乗者視点からだ。明日、サーナもこんな体験できるぞおっ」


 調子に乗って声を張り上げ、再生ボタンを押す。

 直後に、そういや女の子にはジェットコースターがとことん苦手な子もいるな……などと思い出したが、幸い、サーナはそういうタイプじゃなかったようだ。


 もうおまえ、俺の膝に座った方が早くね? と思うほどこちらの席にがばっと身を乗り出し、「うわー、うわー!」と声を上げて見入っている。


 ばっちり気に入ったらしい。

 たまに年齢相応な面を見せるサーナだが、ここまで楽しそうに見えたのは、初めてかもしれない。

 動画再生が終わると、俺の服の袖を掴んで揺さぶり、「もう一度、もう一度、見たいですっ」とリクエストまでしてくる始末である。


「いいとも。ほら、ここをこうしてクリックすると、また見られるよ」


 俺は自分で実行してみせた後、サーナの腰を掴んで、ふわっと持ち上げた。


「あっ」

「席を替わってあげる」


 優しく言って、すとんと元の席にサーナを降ろしてやった。

 両手で掴んだ時、ウエストのあまりの細さにびびったが、なんとか顔に出さずに済んだ。

 ……もう少し、食事量を増やした方がいいかもな。


「ありがとうございますっ」

「なに、いいさ」


 俺は完全に見物モードに入り、サーナが動画再生してジェットコースに浸るのを、しばらく眺めていた。

 ……まさか、その後に二桁回以上も再生するとは、思わなかったけれど。





 ようやく満足したサーナとロビーを歩き、エレベーターホールへと向かう頃には、もうかなりよい時間になっていた。


「じゃあ、明日は遊園地でいいかな?」

「はいっ」


 元気に返事した後、サーナはふと思い出したように俺を見上げた。


「どうかした?」


 エレベーターを呼び出し、無人のケージに入ったところで訊くと、サーナは俺の手を握り、きらきらした瞳で爆弾を落とした。


「これって、デートですよねっ、ねっ!?」

「うっ」


 おお、思わず歩みが止まったじゃないか。


「ま……まあ、サーナの受け止め方でいいよ。そう難しく考えなくても」

「わかりました。じゃあ、デートです!」

 

 溢れ出る笑顔で断言され、俺はよけいに焦った。


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