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時間についての一考察

 えーっと…………



 突然ケンシロウの決め台詞みたいな事を言われて智也は焦った。

 死んでいる? いや死んでいた? 『いた』ってなんだよ? そんな事ばかり頭の中をグルグル回る。



「……アリス、前々から言ってたけど、君は少し前置きというのを使った方がいいよ」

「でも本題をズバッと言うのも良くない? 私はそっちの方が好きなんだけど」

「それも悪くないかもしれないけど、『時と場合』なんて言葉もあるだろう?」

「あら──年がら年中TPOを無視したウサギ頭のあなたに『時と場合』なんて説かれるなんて、私も舐められたものね」

「こんな頭をしていても、大人に刃向かう事はカッコいいと勘違いしている小娘よりかは常識があると自負してるからね……」



 智也の困惑など露知らず、アリスとジャックの間に激しい火花が散る。この現状に堪えきれなくなった智也は、ヒートアップする二人に待ったをかけた。




「待ってくれ……ちょっと俺を置いていかないでくれ……突然『死んでました』って言われて戸惑ってるのに、その上女子とウサギ頭の小競り合いとか、もう手一杯で堪えられねぇよ……勘弁してくれ……」


 その悲痛な声が届いたのか、幾分か落ち着きを取り戻したアリスは、オホンと咳払いをした後に再び口を開いた。



「ごめんなさい、少し我を忘れてたわ……じゃあ改めて説明しましょうか」

 アリスは横髪を掻き上げ、智也の方へ向き直る。


「最初に言っておくと、あなたは死んだといっても、本当に死んだ訳じゃない。ただそんな未来になるかもしれなかったの」

「そんな未来……?」

「えぇ……──薄々勘づいてるかもしれないけど、()()()()()()()()()()()()()()()。」



 この時代の住人ではない──生きているうちには、まず聞かない言葉であるだろうが、不思議と智也はその言葉に納得した。

 今いるこの部屋も──どこか現実離れしたこの場所も、この時代、すなわち現代で造られたものではないとしたら。


 それは、すなわち────



「要するに君達は……未来から来た、とか?」

「察しが良くて助かるわ。その通り、私達は今から500年後の、2517年の未来からやって来た、時間修復局の者よ」


 時間修復局──また聞き慣れない言葉が出てきた。



「俺の時代にある漫画には、タイムパトロールっていう未来の警察が出てくるものがあるんだけどさ。ひょっとしてお前らもその類いなの?」

「タイムパトロール……? 時間警察局の事かしら? 確かに私達も時間に干渉するけど、時間警察局と同じことはしないわよ。私達の役目は、時の流れを治すことだから」




 質問をあっさり否定され、智也は再び混乱し始めた。

 時の流れを……治す? そもそも時の流れとは? 治すってどうやって?


「どうやら、一から説明した方がよさそうだね……」

 コーヒーを飲み干したジャックの呟きを聞いたアリスは溜め息をついた。


「だから説明しなくていいって言ったのよ……」







 いい? 私達『時間修復局』の目的は、その名の通り時間を修復すること。

 時間なんて形の無いものを、どうやって修復するのか?とか、そもそも時間の修復って何なんだと思うだろうけど、それについては後で説明するわ。



 

 私達の時代では、既に過去や未来へ行ける時間航法が確立してるの。原理については……面倒くさいからパス。言っても分からないでしょう?……分かってくれたようでなにより。


 時間航法の確立によって、人間は画期的な進歩を遂げることが出来た。でもそれと同時に、今まで有り得なかった犯罪までも産み出したの。インターネットが普及してなかった頃には、ワンクリック詐欺やハッキングなんか存在しなかったのと同じように。

 


 それが『タイム・クライム』。日本語に直訳すれば時間犯罪。


 方法や手口は様々よ。過去に遡ってその時代の人間に、その時代には無かった詐欺を働いたり、絶滅した動物を捕まえて、裏のマーケットで売り捌いたり……


 そんな時間犯罪者を取り締まって捕まえるのが、さっき言った『時間警察局』ってわけ。でも私達の仕事はそれとは違う。




 私達の仕事は『過去の人間が未来に干渉する事で、未来が変わることを防ぐこと』。その仕事の一環として、あなたをここに連れてきたってわけ。






「分かった?」

 一通り話終えたアリスが尋ねる。

 智也は黙って、曖昧な笑みを浮かべた。


「分かってないって顔ね……」

 アリスが大きく溜め息をついた。「分かりやすくしようにもな……」と言って、髪を揺らしながら唸っている。



「つまりさ、過去が変わると未来も危険だから、そうなる前に対策を取ろうって訳だよ」とジャック。

「……? どういうわけだ?」智也は尋ねる。



 カチャリと音をたてて、ジャックはコーヒーカップをテーブルに置く。

「過去を変えるってことはつまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………」

「これらはほんの一例だ。でもこの地球は間違いなく、何度か崩壊の危機に瀕したことがある」

「…………」


「もし過去が何かの理由で変わってしまったら、どんなことが起こるか分かるかい?」

「………………………」

 智也は答えない。いや──答えられない。



「下手をすれば世界が滅ぶかもしれない」

 ジャックは淡々と言った。



 智也は呆然とした。そして同時に、その頭の中には一つの仮説が浮かんだ。


 自分が死んだという話。そして、未来が変わることを防ぐために過去へと飛ぶ彼らの役目。


 





「ひょっとして……()()()()()()()()()()()



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