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目覚めてウサギ頭

「あ、起きた?」




 目を覚ました瞬間、目に飛び込んできたのはウサギだった。

 いや、正確に言えばウサギの頭だ。頭だけウサギの被り物みたいだが、首から下は人間の形をしていて、ちゃんと手の指も五本──




「はぁっ!?」

 そこまで考えて、智也は目を見開いた。

 そのまま上体を勢い良く起こす。しかし頭を起こした先には、例のウサギ頭が待機していた。



「がっ!!」

「ごっ!!」

 互いの頭を見事にクリーンヒットさせあった智也とウサギ頭の人間(?)は、お互いの頭をさする。

 ダメージの大きい前頭部をさすりながら、ふと智也は自分の体をしげしげと見つめた。




「全く……起きるんならもっとゆっくりと起きて欲しかったな。そんなに急いで起きても誰も怒らないよ。人生はもっと余裕を持って生きなきゃ、ね?」


 ウサギの被り物が少しは衝撃を和らげていたのか、ウサギ人間(正確な名称が判明するまで、今後彼をそう呼ぶ)は色々言いながら智也の方を向いた。



「……で、どうしたのかな君は? そんなに自分の体が珍しいかい?」

「……いや、改造とかされてんのかなって……」

 智也は思わず口に出した。

 



「面白いことを言うね。安心して、改造なんかしてないから 。自分がよく分かってるだろう?」

 あっけらかんと答えるウサギ人間の言葉を聞いて、智也は益々訳が分からなくなった。いや、そもそもウサギの被り物を被った人間がいるこの状況に混乱しているが。




 智也は一度落ち着いて、周りの景色を眺めた。

 部屋は白い壁に囲まれており、周りにあるのは机と椅子と本棚、そして今智也自身が寝てるベッドだ。殺風景とまではいかないが、若干シンプル過ぎる気もする。



「ここ……どこ?」

 呻くように見たままの感想をそのまま口にした。見覚えは無い。自分の部屋はここまでシンプルじゃないし、友人にもこんな部屋を持ってる奴はいない。こんな独房のような……

 

 ………………


 独房のような個室でベッドで目を覚まし、傍らには不気味なウサギ人間。ファンシーな見た目で騙されそうだが、ひょっとしたら彼は智也を見張っていたのではないか?

 人質が逃げないように、見張り役をつけるのは鉄則なのではないだろうか?

 智也の頭の中で、「拉致」「監禁」「誘拐」「身代金」といった言葉がグルグル回る。自分にはそんなさらう程の価値は無いと思っていたが、まさか、まさか──



 

「どうしたの? まるで母親が電話口で『はい……はい、いつもお世話になっております』って言っていたのを聞いた時みたいな顔色になってるけど」

 ウサギ人間のよく分からない例え話はスルーして──いや、その例えは確かに背筋が凍るが──智也は再び部屋を確かめた。



 ベッドから身を起こした自分から見て、左奥にドアらしき物があるのを確認した。

 そこからの行動は速かった。今なら世界とも互角に戦えるんじゃないかってスピードで、ベッドから跳ね起きてドアへと向かう。



 ドアは自動だったらしく、目の前に来た瞬間ドアは勝手に開いた。

 ウサギ人間が「危ない!!」って叫んだのも無視して──危ない?



 ドアが開く。その瞬間、智也はドアの向こうにいたものと衝突した。

 勢いはそのままに、ぶつかった対象と共に智也は床へと倒れこむ。





「……ジャック、危険人物だと思ったら縄で縛っといてと言ったはずだけど」

 自分が覆い被さるようにして、下に潜り込んでいたもの──いや、人が喋りだす。

「あなたも、とっとと退いてくれないかしら? 起き上がれないんだけど」




 慌てて上体を起こし、喋った対象に視線を向ける。

 ウサギの被り物を被ってたらどうしようかと思ったが、そんな事は無い。下にいたのは、色白で栗色の髪をして──




「なに?」

 厳しめな切れ長の目をした少女が、智也を睨み付けていた。


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