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私とパーティの下準備

それから何となく距離が開いたままあっという間に22日を迎えた。

彼はいつも通りの様子を装ってたし私もそれに合わせた。

それでも何処か余所余所しくて何となく居心地が悪かった。


「今日は仕込みたいのでご飯は外で済ませてもらえませんか?」


明日の準備でそこまで手が回らないだろうなぁとお願いをすると快諾され見送る。

午前中には頼んでおいた大量の食材が届く手筈になっていて急いで掃除を済ませた。

宅配業者が来て荷物を置いていってくれたが物凄い量で呆気にとられた。


そのひとつひとつを確かめながらいくつか抱えてキッチンへと向かう。

まずは時間が掛かるものからやっつけよう。

デパートのしっかりとしたビニール袋に届いたばかりの鳥のもも肉を一口大に切って放り投げていく。

続いてオレンジを皮ごと薄くスライスしその中へ入れる。

全部切り終えると甘辛く合わせたタレをその中へとどばどば注ぎしっかりと口をしてから揉んだ。

それを冷蔵庫へ押し込んで次の仕込み。

玄関へと食材をまた取りに行き両手いっぱいに抱えて戻ってくる。

大きな鍋に両手に余るほどのセロリをスライスして入れて、パプリカも賽の目に切って入れる。

それから大根を2本、パプリカと同じ大きさに切って入れて、にんじんもたっぷりと入れた。

水を具材の半分ほど入れて蓋をして煮込み、火が通った所でトマト缶を中に入れる。

四つほどそれを入れると具は隠れて塩と胡椒で味を整える。

皿にすこし取って味見をし、うん、と頷いてそれはしばらく煮込むことにした。

次に余ったトマト缶を小鍋に入れて温め、オリーブオイルを入れてから煮詰めていく。

タバスコを入れてすこしスパイシーな味にしてから十分な固さにしてから火を止める。

これはそのまま冷やせばいいでしょう。

マッシュルームとサラミを取りに行き薄くスライスしてバットに移してラップをして冷蔵庫へ。

それからとじゃがいもの皮を永遠と剥き続け茹でたのち頼りないマッシャーでえいえいとどうにかこうにか潰す。

これも荒熱を取ったら冷蔵庫にいれようと布巾をかけてテーブルの上に大きなボウルごと置いておく。


ようやく四品の下ごしらえが終わるともうお昼をとっくに過ぎていてすこし休憩しようと椅子に座った。

足がぱんぱんでまだ汚れたままの手でふくらはぎを揉む。

朝作っておいたおにぎりを食べて伸びをして三十分ほど休んでからまたキッチンへと戻った。


大量の春巻きの皮を半分に切りひとつひとつに細長く切ったチーズを入れて細く巻いていく。

小麦粉を溶かした液できちんと糊付けしそれをバットに積み上げていく。

チーズは全部で3種類でどれがどれだか分からなくならないようにバットごとに付箋をつけておいた。

ようやく全部巻き終わりそれを冷蔵庫にまたしまってから、次はデザートだと玄関に取りにいく。


フルーツを抱えて戻り皮を剥いて一口大に切ると用意しておいた耐熱の小さな透明なカップに入れていく。

個数を間違えないようにひとつひとつ確認し、すべて盛り終わると、熱して溶かしたゼラチンにアセロラジュースを混ぜて荒熱を取ってからそれに一個一個注いでいく。

それらをトレーに乗せてラップをしてから冷蔵庫の最上段へしまい、付け合せのミントの葉を小さく個数分だけちぎった。


あとは当日でも大丈夫かなと冷蔵庫を開けて確認する。

ケーキはさすがに焼けなくてデパートに頼んであるので、明日佐久間さんにでも取りに行ってもらおう。


残った食材を玄関から引き上げ冷蔵の物はなんとか大きな冷蔵庫の隙間につめて、残りは床に置いておく。

それから廊下の納戸を開けて一番上にある食器の箱を取ってキッチンへ戻りそれらを丁寧に洗って食器洗浄機へと入れた。

さすがに全部は拭けないので乾燥はやってもらうとして、それでも、すべては入りきらず二回に分けた。

乾いたそれをテーブルに積み上げ食器棚からナイフやらフォークやらも取り出してひとつひとつ見ていく。

汚れているものはまた洗い、それ以外は細長い籠にリース絵柄がプリントされた布のナフキンそ敷いたところへしまっていく。


時計を見ると午前中から始めたにも関わらずもう夜の七時を指していた。

ぐぅっとお腹が鳴りさすがに晩御飯までは用意していなくて力なくソファへ座る。

もう今日はここまでにしよう。

これ以上やったら疲れて明日動けなくなっちゃう。





例年ならば仕込みから二人でやっているというのに、高松さんの都合がつかなくて結局一人でやらせてしまい、急いで仕事を終わらせて帰宅すると彼女はソファでぐったりと転寝をしていた。

テーブルには食器やらやりかけのボウルやらがひしめき合っていてさぞ戦場だったのだろうと思う。


「笹川君」


風邪をひかれては困ると揺り起こすとちいさく声を漏らしてから起き上がる。


「わ、佐久間さん。あれ、もうそんな時間?」


慌てて時計を見るとまだ21時という事にほっとしたように息を吐く。


「ごはん食べた?」


そう尋ねるより先に彼女のお腹がぐぅっと鳴る。

顔を赤くして俯く目の前の人物にはいっと隠していたビニール袋を差し出す。


「わ、ハンバーガーだ」


簡単に食べれるものと思い、チェーン店に立ち寄って買ってきたそれを彼女が嬉しそうに頬張る。


「大変だったでしょう」


コートを脱ぎながらそう尋ねるとすこしと控えめに答えが返ってきた。

ハンバーガーを食べ終え包み紙を丸めて袋に戻して今度はポテトをつまんでいる。


「明日は11時に集合だけど間に合いそう?」


うんうんと頷く姿に大丈夫かなぁと不安を覚えながら隣に座る。


「高松さんは8時には来てくれるって」


今朝言われたばかりの情報をそのまま伝えるとごくりと口の中の物を飲みこんでからよかったと息を吐く。


「それは大変ありがたいです。佐久間さんにお使いを頼みたいのですが」


遠慮がちに言われ何でもどうぞと答えると曰くデパートに大きなケーキを頼んだから取りに行ってほしいと言われた。

もちろんと答えそれぞれ別れて部屋へと戻る。

風呂を先に譲って彼女が出るのを待って入った。


料理全般は私が手配しますので、お任せくださいと、あの公園からの帰り道に言われて信じることにして祐樹に伝えるとひとつ返事で分かったと言われた。


ケーキくらいは頼みなよと大目に渡した材料費に彼女は頷いてその言葉通りにしたらしい。

明日の朝には酒屋が大量の酒を持ってくるし、まぁ、なんとかなるだろうと湯船に沈みながら思った。


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