小夜子 居候となる その1
「お帰りなさいませ」
その一言を発したメイド服の人物をしばし眺めやるなり、黒髪の少女は思わず叫び声をあげた。
「私以外の女を連れ込むなんてっ、マスターの浮気者っ!」
「えーと、私、…小夜子と申しましてですね。生ける屍やってますですぅ。でもでも従来のタイプと違って細胞全体が生きてたりするので”活ける屍”と呼んでやってくださいぃ。って博士が言ってましたですぅ」
「マスターが屍姦野郎だっただなんて、そんなぁっ!! 私はいったいどうすればいーのよぉっ! 生ける人形に生ける屍になる方法なんてあったかしら」
「えーと、れすねそれはそれは訳ありで本日、只今、今日よりこの家に居候させて頂くことになりまして、どーぞよろしくですぅ。しかし源十郎さんって幼女愛好趣味な方だったんですねぇ」といいつつ未だ上半身だけの小夜子さんは目の前の少女を眺めやる。
それは小学生とみまがうばかりの身長、発展途上の胸、成熟するはるか以前の形態を保ったままの堅さのみが強調されたような腰つき、極めつけは腰まであるつややかな黒髪を束ねるいやに自己主張の強いリボンが彼女の”少女”という形態を統括している。これで市内の高校の制服に身を包んでいなければとうていこれが高校生として生活しているとは信じがたい、いや彼女は齢、数百年を生きる生きた人形であるはずなのだが、その姿にはあるべきはずの年月の重みなど微塵も感じられない。そしてそれがまた少女然とした声で叫ぶ。
「マスター、源十郎様っ。いったい全体これはどういうことなんですかっ!!」




