おまわりさん現る その2
「…、わかり ました」
不満が顔にありありと出ていたが、初老にさしかかった先輩のただならぬ迫力におされてしぶしぶという形で戸川と呼ばれた巡査は源十郎の手にかけられた銀製のアクセサリーをはずした。
「ま、ありがとうとは言っておく」
「礼なぞいらんよ、関わりあいにならんのがお互いのためだというだけの ただ、それだけの話だ」
「ま、それでも恩は恩だからな」
それに対する答えは返ってはこず、二人は去っていった。
「ううっ、私、行く場所ないんですよぉっ。私を哀れと思うなら拾ってやって下さいよぉぉっ、私、私の身体を修繕してくれる人がいないと生きていけないんですうぅぅっ。って、もはや死んでるんですけどぉっ。うううっ、このままでは わたしネズミの肉とかいって売られちゃったりしちゃうよぉおっ、でっも、賞味期限はとうの昔に切れているから食中毒なんか起こしたりなんかしてぇ。きっと第一番目の被害者は能登 源十郎とかいう名前なんですぅぅっ!!」
必死の形相で脅迫めいた泣き落としを始めた彼女を見つめつつ、人形師 能登 源十郎と呼ばれた男は、どこか悟りきったような顔で、ただ深々とため息をついたのだった。




