人造人間現る その3
「で、博士っていうは」
「うううううっ、私、私 博士に捨てられたんですぅ、交通事故にあわれて五体がバラバラになったところの最愛の彼女をツギハギして生きかえらせてみれば、あーら不思議、できあがったものは生前の記憶のズッポ抜けたあたしみたいな脳ミソスカタン女になったんできっときっと絶望してしまわれたんですぅ、ううううっ。わたス、どうじようがど思ってとりあえず誰かに人生相談しようかと思ったんですけど考えてみたら私、博士しか知らないんです。でもってかたっぱしから道を歩いているお方々に声をかけてみていたんですけど、なんか途中から相談料とかなんだかとかいうお話になってきてお金を払えと言われたんですけど、私 お金なんか持ってなぐでぇ、ううっ、じゃあ身体でって言うことになったんですけど、私、やめて下さいって言ったんですけど、無理矢理服脱がされたりしたものですから、ううっ、身体のパーツがはずれちゃって、ひどいですよね、私を置いて逃げ出して。まったく、まだ相談事も聞いてもらってないのにいぃぃ、それに散らかしたら元に戻すのが常識っていうもんです。それでしかたがないからなんとか自分で元に戻そうとしたのですけれど身体の下半身を支えているところの服がボロボロになっていて、しょうがないから上半身だけで這いずりまわりながら声をかけて、ようやっとあなたに話を聞いてもらえたなと、そういうわけなんですぅぅっ。これであなたにまで両腕を持っていかれたまま見捨てられたりしたのなら今度こそは口を使ってでもすがりついて呼びとめなくてはならなくなるところでした。でもでもっ、口を使ってしまいますと話しかけられなくなるですし、今度は首がもげてしまいますです、どうしましょう」
「で、結局なんの用なんだ」
まぁ、確かに彼 能登 源十郎といえども生首に必死の形相で足元にくらいつかれたなら問答無用で踏みつぶすかも知れないか、とか思いつつ、彼はとりあえず 辛抱強く同じセリフを繰り返す事にした。
「ううっ、とりあえず私を修繕して欲しいのですけど。無理ですよねぇ。だからとりあえずは私の残りのパーツを集めて下さいぃっ。ううっ、今朝方目が覚めたら生ゴミ置き場にいてですね、寝ぼけたのかなぁとか思ってお家に帰ったら置き手紙があってですね、それには
『僕はもう疲れたよ、すまないが探さないでくれ。
追伸:身体の修繕とかは自分でなんとかできるように設備は残していく、それでもだめなときは能登 源十郎とかいう人形師に頼め、困った妖怪とかを受け入れてくれるそうだとか言う話を古い知り合いから聞いたような気がせんでもない。』とか書かれていてですね……、
そうだっ! 今 真っ先に思いついたんですけどその能登 源十郎だとかいう人形師、知りません。知らなかったら捜すのを手伝って下さい。お願いしますよぉぉっ。今はあなただけがお頼りなんですうぅぅっ……」
「…」




