人造人間現る その2
「で、なんの用なんだ」
「ううっ、だから警察なんて呼ばないでくださぁあいってばぁ、ううっ、これは死体遺棄事件とかじゃぁ、内容の示す微細な事実はともかく、ないんですってばぁー」
「だから、何の用だといっている」
能登 源十郎は片方の足を彼女の胴体から離れたらしい両腕に握りしめあられたまま、地面の上にどっかとあぐらをかくと頬杖をつきつつ彼女にかまってやることにした。
「ううっ、おねがいでずから逃げないで私の話を聞いて下ざいってばぁ、落ち着いてわだぢのはなじをぎいでぐだっ、
す、ぱかんっつ!
「名前は」最初に戻って再び懇願と嘆願を続けそうな彼女のドタマをはたいたばかりのゴムゾウリを持った男が、そいつで肩をトントンと投げやりげに叩きながら不愛想に彼女に向かってそう言っているのに ようやく彼女は気がついた。
「あうあうっ?」
「で、あうあうさんがなんの用なんだ」
「えーっと、驚いたり騒いだりとか気絶したりとか、そーいうのやったりとかはしないんですか?」
「…、肝試しとかいうのならよそでやってくれ」
「ああっ、ごめんなさいいっ、待ってて下さい。置いていかないで下さいってば、見捨てないでやって下さぁぁい。ここであなたに見捨てられたならとてもとても私が困るんですぅぅ」
「それで、あうあうさんが何の用なんだ」
「ううっ、あうあうさんじゃなくて小夜子さんなんです。話を聞いてくれてありがとうございます、ううっ、朝っぱらからずーっとずーっと声かける人達に驚かれたり気味悪がられたり警察ざたになりかけたり、そのほかいろいろとなんやらかんやらでとても困っていたところなんですぅー、…ところでお兄さんの足のところの私の両腕返じでぐだざぃぃ、このまんま腕がもげたまんまだと這いずることもできないんでどうしょうかなーと、とてもとても困っていたところなんですぅー、ううっ、でも私、わたし博士に捨てられたなのだから両腕を返してもらってもくっつけられないです。ううっ……」




