余
私は考えました。源十郎様の『神無は』家族だという例の一言です。そうです、あのときは冷静さを失ってしまっていましたが。よくよく考えてみれば家族というものはある意味恋人なんかよりも深い深い繋がりを持つ者同士です。恋人は別れてしまえばただの他人ですが、家族は遠く離れていてさえいてもしっかりとした繋がりの糸を持つ者同士の事です。そして初代、人形師 源十郎に創られた私が家族ということは、つまりこれが何を意味するかと言えば、つまり私は源十郎様の妻だと言うことです。普段なにかと憎んでばかりの初代 源十郎の事も今の源十郎さまに出逢うために自分が生まれて来たのだと思えば許せそうだった。「と、いうことで今日は、うるさいのもいなくなったことですし、ようやく屋敷で久々にふたりっきりになれました。というわけで妻としのつとめを果たしにいかねばなりません。いざゆかん、愛の、…」 言って源十郎の寝室の扉をあけ、彼の元へと飛び込もうとして、神無の身体が目の前でまさにいまからコトに及ばんとしているもう一人の存在を認めて凍りつく。
「えーと、ですね、つまり、なんていうか、あれから二人は激しく愛しあったりしたなのわけですが、やっぱ博士の体力が持たなかったりなんかしたわけなので、で博士と二人の今後を相談したその結果、精力のある若者に協力していただくことにしましょうとあいなったわけなんですが…」その人物は馬乗りになって男の着衣を引っぺがしながらのほほんとそう言い放った。
「…なんで源十郎様なわけ、精力だけがあり余っている若者なんて、巷にゴロゴロと溢れかえっているでしょうが、返答と次第によっては細胞の一片まで燃やし尽くすわよ」自分の衣服を脱ぎ捨てつつ器用に源十郎を押さえ込んでいる小夜子を睨みすえつつ神無が問いつめる。
「その理由は単純明快です。欠陥持ちの活きている死体の私を安心しきって任せられる御方等博士以外には源十郎様しか見つからなかったからです。とりあえずは見知らぬ他人よりは知っている他人とそういうことなんです。あと、博士の言によると『秘法書”まぐどぅらむ”、使ったのは私、流出させたのはそちら、そのぶんの責任は分担しようじゃないか、わはははは』だそうです。と、そのようなわけで当初の予定通り私が二号とそういう事で、…ちなみに当然、博士公認です。あーとーはー、私のような娘を相手にしてくれる殿方など博士の他には源十郎様しか私には思いつかなかったものですから、…ぽっ《青面》」
「いやぁぁぁっ、聞きたくないぃぃぃぃぃっ!!」