不死への夢
「…、う、あぁぁぁ、ちょっとまってください撃たないでくださいぃ、ちょこちょこっと待って僕の話を聞いてください、秘法書”まぐどぅらむ”には死体に生命を吹き込み甦らせる方法しか載っていなかったんです。生者を生きながら不死にする方法は未だ”世界”にはありません。あの秘法書に記載されている方法は一度死んだという事を”世界”自体に認識させる事で”世界”を欺むくんです。理解して下さいってば、だから”お願いですから、一度死んで下さい”っていったのは必要な手順で、最大重要事項なんですってば!!」
「…、三日やる。その間にそれ以外の方法を考えたまえ」苦虫を噛みつぶしたような声音で老人は最後通牒を突きつけた。
「ちょ、ちょーっと、待って下さい。せめて半年、いや、一年以上時間を下さいよ」返答は無言と銃口だった。
「…、わかりました。では、せめて小夜子に会わせて下さい」観念して、博士はそう言った。
*
再会はガラス越しだった。これでは逃げる事もできないな、となんとかして逃げ出す方法を算段中であった博士は思った。しかし、どうやって最初の一声をかければ良いのだろう。なにせ自分は彼女を文字通り捨ててしまった男なのだ。
「ああっ!? 博士お元気でしたかぁ、たった半日あわないだけでずいぶんと血色もよろしくなったようで、ゴハンちゃんと食べてますかぁ、ゴミの日は間違えると近所のオバサン方が大挙して押し寄せやってきてご近所迷惑ですよ、だからって知り合いの科学者のように無断で半機械化して従順化しちゃダメなんですよ」
悩む間もなく、喜色満面といった様子で小夜子は彼にいつものように話しかけてくる。
「小夜子…」