不死の夢
「わかっているんですか!?、不老不死とは”世界”の摂理に反する出来事です。それは人間として存在する以上、望んではいけないことなんです!!」
博士は目の前に鎮座する老人相手に熱弁を振るっていた。屈強な男達に囲まれていながらもそこに怯んだ様子がかけらも見あたらないのは弁舌に夢中になると周囲の事情が見えなくなるタイプだからだろう、と男達はそれを強者の余裕を持って受け止めた。
「結城 小夜子」
「そりゃぁぁっ、もっち論。あれに懲りに懲りて今度こそ死なない彼女が欲しいかなぁっとちょこちょこっと思ったただけじゃないですかぁ、実践して何が悪いんですか!! ちなみに本当に生き返ったというのはわりと予想外の出来事でした。まぁ、それはともかくよく言うじゃないですか、嫁は丈夫な子に限るって」老人がボソリと漏らした言葉にも博士は微塵の迷いもなく自説を展開した。
「…、やれやれ、話にならんな、貴様には選択権など始めからないという事をいいかげんに認識したまえ」言うと老人は一点を指さし、彼に見るようにと命令した。
「すいませぇぇーん、博士っ、捕まってしまいましたなんですうぅぅ、LivingDeadだからなんとかなるかも、とも思われたのですが、やはり基本性能の差はいかんともしがたかったですね。結論! やっぱ、死なないだけじゃダメでしたぁぁぁぁぁっ!!」老人が指さした先の画面で、縄でぐるぐる巻きにされた小夜子さんがいまいち緊迫感のない事をのたまわった。
「では、最愛の彼女の細胞の一かけらまでも研究対象として我々に提供するか、自ら進んで私に不老不死の秘術を授けるか好きな方を選びたまえ、だいたい貴様があの秘法書を処分しなければお互いこのような無駄な手間をかけずにすんだのだ」
「…わかりました。では、一度、死んで下さい」
彼がそう言った瞬間、殺意が銃口にのせられて博士にのしかかる。