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聖女の私にできること  作者: 三ツ陰 夕夜
第五章 相愛

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第四十八話 幸太郎先生と外傷患者

「はい、おばちゃん大丈夫そうだね」

 幸太郎先生の腕は、一人目の患者さんを診ている時にすぐに証明された。

 患者さんの状態を確認していく手際は木村先生と同じくらい手馴れていて、患者さんからも信頼されているようだったから。

「じゃあ、痛みが強くなったり、目眩がするようなら教えて。薬ですこーしだけ吐き気するかもだけど、それも我慢しなくて言っていいから」

 目線を合わせ、分かりやすいスピードで話しているのを見ると、凄く勉強になる。

 ちょっとだけ、尊敬してもいいのかもしれない。

 そんな風に考えながら観察していると、早くも二人目の診察が終わる。

 この部屋の患者さんはあと一人。

 外傷の患者さんはいないので私の出番はなさそうだった。

「おじいちゃーん、朝の診察の時間だよー!」

 最後のおじいちゃんは耳が遠いようで大きめの声で話しかけている。

 そういう細かい気遣いができるのも、良いお医者さんという感じだ。

「おじいちゃん?・・・っ!聖女ちゃん、草順先生呼んできて!」

 おじいちゃんの様子を見ていた幸太郎先生が突然叫ぶように指示を出す。

 その声を聞き終わる前に、私は走り出していた。



 その後、おじいちゃんは草順先生の薬ですぐに容態が回復した。

 隣の患者さんが言うには、糖尿病の治療中だったにも関わらず、お見舞いの家族が持ってきた大福を食べてしまったらしい。

 「しばらくは面会謝絶だねぇ」と笑う幸太郎先生。

 先程まで草順先生と難しい顔をしながら薬を処方していたとは思えない、力の抜けた顔だ。

「じゃあ、気を取り直して次は外傷の患者さんね」

 おいでおいでと手招きをされる。

 木村先生に以前「患者さんと接する際は、例え相手が重症であっても不安を与えぬように笑顔を作るものです」と言われたことを思い出す。

 なるほど、幸太郎先生のこのチャラさにも意味があったのか。一人で納得しながら幸太郎先生の後に続いた。

 外傷の患者さんの部屋は、先程の部屋と違いたくさんの布団が敷いてあった。

 傷の程度に違いはあるだろうが、全員どこかしらに包帯が巻かれていて痛々しい。

 ある程度重傷と軽傷には分けてあるようで、幸太郎先生が端の方から診察をしていく。

「おはよー、おっちゃんすっげぇ怪我だね。男の勲章って感じ」

 念の為患者さんの容態と怪我の程度を確かめてから、幸太郎先生は私にバトンタッチした。

「左上腕ね、骨まで見えてるけど大丈夫そう?」

 私だけに聞こえる声量で、簡潔に怪我の状態を伝えてくれる。

 患者さんにも私にも気遣ってくれる凄く仕事のできる上司という感じだ。

 頷きで返事をし、おっちゃんと呼ばれた患者さんの前に膝を着く。

 いつもは木村先生の真似をしているのだが、今日は幸太郎先生の真似をして笑顔を作ってみた。

「今から私が治します。すぐに終わるので安心してくださいね」

 ただ治すだけでなく、安心を与えられる存在。

 私の中で目指す聖女像にまたひとつ目標が増えた瞬間だった。



「聖女ちゃんってまじで聖女なんだね!」

 泊まり患者の診察と治療が全て終わり、お昼ご飯を食べていた。

「あのピカーってやつ、俺もやってほしー!」

 遅い昼休憩となってしまったので、他の先生方はとっくに午後の診察に入っており、幸太郎先生と二人での食事だ。

「あ、怪我すれば治してもらえるのか!」

 正直煩かった。

「じゃあ、俺怪我したらすぐ聖女ちゃんとこ来るからお願いね!」

 尊敬する上司から、仕事中だけは尊敬する上司に格下げしてしまうほどに鬱陶しかった。

「ちょっと考え事があるので黙っててください」

 思わず辛辣な言葉が出てしまう。

 考えたい事があったのに、隣でずっと喋られていては邪魔でしょうがなかったからだ。

 幸太郎先生が驚いた顔で黙ったのを確認してから、先程の、治療中の事を思い出す。

 聖女の業が、明らかに強くなっていた。

 いや、強くという表現は少し違うか。光そのものの眩しさはあまり変わっていなかったが、光の質が明らかに変わっていた。

 そして、怪我が治るスピードも明らかに早くなっていたのだ。

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