表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の私にできること  作者: 三ツ陰 夕夜
第四章 宴

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/56

第三十九話 理解と許容

 僧正様の心を読んだ私は、一瞬で後悔することになる。

 この真面目顔の僧侶の男は、卑猥な事を考えてらっしゃったのだ。

 こんな真剣な話の時に。

「馬鹿じゃないんですか!!!?」

 思わず魂の叫びが漏れる。

 顔が燃えているんじゃないかと言うくらい熱い。

 そんな、取り乱す私に、僧正様はまたいつかの笑い声を上げた。

「ハッハッハッハッハッ!」

 仕返しが成功した事に喜ぶ姿は、全ての鎧を脱いだ後のそのままの彼自身のように見えた。

 彼の笑い声が収まるにつれて顔の熱も引いていく。不服ではあったが、まぁ、ご理解いただけたようなら何よりだ。

「この様な男で幻滅されましたか?」

 喉の奥に笑い声を残したまま彼が言う。

 なんだか負けたような気分だが、こちらは謝罪に来た身だ。下手に出て差し上げるべきだろう。

「幻滅とかはないんですけど・・・」

 卑猥な考えくらい成人男性なら抱くこともあるだろう。そのこと自体はまあ看過できる範囲内だ。

 そんなことより、大切な事を聞かねばならないと思った。言い出しづらい内容に自然と歯切れが悪くなる。

「その、気持ち悪いとは、思わないのですか?心を読まれてしまうんですよ?」

 この力を大きな声で言えない、最大の理由だ。

 気持ち悪いと言われても仕方がない力だった。でも、この人に気持ち悪いと言われてしまえば、立ち直れそうになかった。

 彼は笑顔で私を見ていた。心を読んでいないのでどういう返事がくるか分からない。不安だった。

「私も、聖女様のお心なら多少分かりまするゆえ」

 想像もしていなかった返答に頭の中にハテナが浮かぶ。

 何を言っているのだこの人は。

「聖女様は私の顔がお好きでしょう?」

 言われて、そういう事かと、少し納得する。要は私は表情を読みやすいということか。

「この声で、お耳元で囁くと欲情してしまわれますでしょう?」

 「馬鹿なんですね!」と心の中で叫ばざるを得なかった。お美代さん!この人全然「いつも爽やか」じゃないよ!煩悩の塊だよ!

 誘惑の仕方が手慣れすぎていたけど、この人やっぱり悪い人だ。しかも禁欲と真逆の意味で。

 ジト目で僧正様を睨みつけてやった。物理的な距離は保ってくれていても、さすがにおふざけが過ぎ過ぎている。

 私の不満を受け止めて、彼はまた愉快そうに笑っていた。

 でも、こういうやり取りができるのが、実は少しだけ嬉しかった。

 「戯れが過ぎましたね」と彼は笑い終えると、少しだけ真面目な顔に戻る。

「実は、聖女殿にそのようなお力がある事を、私は(うす)らと感じておりました」

 なんて言われて、素直に驚いた。そんな素振りは全くなかったからだ。

 この人は本当に頭が良いのだろう。草順先生のように私の態度を基に気づいてしまっていたということか。

「ずっと読まれていたとは予想外ではございましたが」

 今度はからかうように、緩む口元。

 その話はもう謝ったのだから忘れて欲しい。ずっと変な態度を取っていた僧正様にだって原因はあったと思います!

 言い訳をしながらも、顔は冷静さを保っていた。保っていたと思う、この辺りまでは。

 「それに」と続けた僧正様が、急に怖いくらいうっとりするような表情を浮かべたのだ。まさに妖艶という言葉そのものの顔に、腰の辺りがゾワゾワと落ち着かなくなってしまって、でも顔は逸らせなくて。

 私の心臓に悪いのを知っててこういうことをしてきている。確信犯というか、もはやドラキュラか何かだ。

「読ませぬようにすれば良いだけの話です」

 思わず目がいってしまった唇から、囁くように吐息交じりの言葉が紡がれる。

 強い。強すぎる。

 人間としてのレベルが違いすぎるこの人に、私は一生叶わないんだろうと思った。



 二つ目の僧正様へ伝えたい事は、「この力を使って殿をちゃんと守ります」という内容だったのだが、いまいちピンと来なかったのかそれとも私が頼りないからか、彼の反応は微妙なものだった。

 まぁでも伝えられたからいいか、と挨拶もそこそこに御堂を後にした。

 あれだけ頭がいいのだから、放っておけばどうにでもしてくれるだろう。

 そう考えていた私を部屋の前で待ち構えていたのは、少し不安気な顔のお美代さんだった。

「何やらお取調べがあるとの事で、姫様もご同席なさるようにとの事です」

 主犯の三人以外にも何人か関係者が見つかった話しは聞いたが、都度処罰しているのだと言っていたはずだ。

 わざわざ城に呼んで取調べをするということは、重要な何かしらがあるのだろうか。

 それに私も同席なんて、求められる理由が全く思い当たらない。

 でも悩んでいても仕方ないし、時間もあんまりない。なので大至急お美代さんに、殿の前に出るための服に着替えさせてもらう事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ