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聖女の私にできること  作者: 三ツ陰 夕夜
第四章 宴

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第三十七話 聖女の決意

 この世界での宗教について、以前木村先生に聞いたことがある。

 神も仏も信じられているという話で、聞いた限りは限りなくあちらの世界の日本と同じ価値観だった。

 中でも主流の宗教は、死後善人は極楽に、悪人は地獄で罪を滅ぼした後極楽に行くというもので、確かあちらの仏教も同じような考えだったのを思い出した。

 悪人は罪を滅ぼすまではどこまでいっても悪人である。そんな考えが根底にあるからなのか、人々の犯罪者への仕打ちは時にやりすぎなのでは無いかと思うほどだった。

 指を切り落としたり、晒して石を投げたり。奉行所もあったが、公平であってもひとつひとつの罪は重く、どのような罰が与えられるかという話を聞いた時は思わず顔をしかめたほどだ。

 そして、悪人である罪人は治療行為を受けさせて貰えないのが普通らしい。

「そのような価値観もいつか変わると良いのですが」

 そう哀しげに語った木村先生に、つられて哀しくなったのを思い出す。



 この世界での価値観を考えれば、僧正様の言うことは最もなのだと思う。

 けど、それはおかしいと、私は思うのだ。

「治したとて、殿への謀反を企てたとあらば死刑となるやもしれないのですよ?」

 静かな瞳が私を見つめる。

 確かに、そうかもしれない。

 あの場で毒を盛るというのは殿への犯行と同じ。狙っていたのは別の人だったなんて言い訳は通用するわけが無いだろう。

 それでも、私は治したことを後悔していない。

「私は聖女です」

 初めて、この言葉を口にした。

 勝手に与えられた力、勝手に与えられた称号。それでも、使い方を選んだのは私自身だった。

「善人も悪人も私には関係ありません。たとえ人を殺めていたとしても、私に助けられるのであれば誰であっても助けます」

 ハッキリと口にして初めて、自分の決意がクリアになる。

 それは僧正様への宣誓にも似ていた。

「全ての命は私の前では平等です」

 私はこの世界で、聖女として生きていくのだ。



 あれから一週間経った。

 宴での事件の後、狙われていたかもしれない私は城からの外出を禁止されていた。

 あの場にいた犯人は三人。信介先生と、重鎮が一人と、警備の主任が一人。

 殿を亡き者にして菊千代様を使い傀儡政権を築きたかったらしい。

 まぁ、どこにでもありそうな陳腐で身勝手な犯行動機など、もうどうでもいいが。

 直接聞きはしなかったが、周りの反応を見る限りその三人は恐らく死刑になったのだろう。

 犯行に関わった者たちも、見つかり次第罰を受けているらしい。

 「残党に狙われるやもしれませぬゆえ」と木村先生に言われてしまっては、大人しく城での退屈な時間を過ごすしかなかった。

 退屈とはいえ、一つだけ良かったこともある。

 仔猫だ。

 以前から目撃されていたハチワレの仔猫は、母猫とはぐれてしまった子だったらしい。

 ガリガリな上に足に怪我しているのを保護したが、怪我は聖女の業で治すことができ、図らずも動物も治せるのだということが分かった。

 仔猫は怪我が治るとすぐに元気になって、もりもりと餌を食べた。

 でも、元々は野良猫だ。逃がしてやった方がいいのでは無いかと考えた。

 決意して開け放った戸から出ていった仔猫が、三十分もせずにネズミを捕まえてきたのを見た時には、ホッとして少し泣いてしまった。

 家族が一人増えたような気すらした。

 そして、「お玉」というご利益がありそうな名前を付けられた仔猫は、これから何度も何度も私の心を救ってくれることになるのだ。

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