表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の私にできること  作者: 三ツ陰 夕夜
第三章 お城暮らし

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/56

第二十六話 ハチワレ

 ふらつく私を支えながら、僧正様は歩き出そうとする。おそらく、彼の部屋に向かって。

 でも、その時、視界の端を横切ったものを私は見逃さなかった。

 仔猫だった。

 白黒のハチワレが、あちらの世界の愛猫の姿とよく似ていた。

「・・・!」

 もう戻れない思い出に、一瞬で頭がクリアになる。私は、私はこんな事をするために転生した訳では無いのだ・・・!

「は、離してください、人を呼びますよ」

 お腹にグッと力を入れながら、キッと僧正様を睨みつけた。今日はちゃんと意思表示をしたでは無いか。合意の上だと勘違いしてたなんて言い訳は通用しないはずだ。

 体は密着していた。綺麗なお顔はすぐ近くにあった。そしてその、探られるような視線に数秒耐えると、唐突に「分かりました」と解放してくれた。

 やけに素直で、少しだけ拍子抜け。

 体が離れても、心臓はまだドキドキしている。でも今日は、自分の力でこの人に勝ったのだ。

「そのようなお顔をなさらないでください」

 僧正様は反省している子犬のような顔でそう言っていたが、絶対に反省していないのは分かっていた。

 許すなんて口が裂けても言うものか、お美代さんにもこの人には気をつけるように言わないとな!

 そう心に誓った私は、大きく息を吸ってから足早にその場を後にした。



 引越しの日はあっという間に終わり、その翌日。

 城で朝食を取り終えた私は、医療所へと出勤していた。

 出勤時間が1/3以下になったことで、朝の時間に余裕ができたのには本当に助かった。

「おはようございます!」

 元気よく医療所へ入る。

 いつもより早く出勤したのでゆっくりできるかと思っていたが、何やら先生方がザワついていた。そしてその中心には、普段医療所では見ない顔の男女が立っていた。

「聖女殿!」

 男性の方が、大袈裟に驚きながらこちらを見る。あの四角い顔には見覚えがあった。

「あなたに治していただいた園田です。その節は誠にありがとうございました」

 そう、園田先生だ。確か木村先生を庇ってお腹を切られていた、医療所での患者第一号。

 傷が治ったあとは自宅で療養していたはずだが、もう回復したのか。

 最後に見た時よりふっくらとしている頬を見ると、歳の割に生命力が強いのかもしれない。

 そんな園田先生と外国人のように握手で挨拶していると、木村先生がその後ろからひょいと顔を出した。

「今日からまたこちらで働いて頂けることになりましたので、挨拶をしておりました」

 園田先生はうんうんと頷く。私より頭二つ分背の高い彼は、肩幅も広く、主に力仕事で頼りになりそうだ。

 そして、「それから」と木村先生が誰かを呼ぶ。

 現れたのは、やけに見覚えのある見た目の初めましての女性だった。

お凛(オリン)と言います!父共々お世話になります」

 父?とお凛さんの隣に立つ園田先生の顔を見る。

 なるほど、目と鼻がそっくりで、ひと目で親子と分かるほどだ。だから初めてなのに見覚えがあったのか。

「お凛さんは、聖女殿の話を園田先生から聞いて、ぜひお役に立ちたいと申し出てくださったのです」

「こんな男所帯の中に乙女が一人なんて信じられませんもの!先生方は気が利かなすぎるんですよ!」

 どうやら、医術を学ぶと言うより、私をフォローしてくれようと名乗りを上げてくれたらしい。

 同年代とは思えない気の回し方に、彼女の優秀さが垣間見えた。

 園田先生とお凛さん、この二人が増えたことで、医療所でのお仕事がより一層楽しくなる気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ