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聖女の私にできること  作者: 三ツ陰 夕夜
第三章 お城暮らし

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第二十四話 城の案内

「姫様は、宴にはいらっしゃるのですか?」

「宴?」

 荷物が少ないため引越しもあっさりと完了し、城の案内をしてもらっていた時だった。

 お美代さんが思い出したように口にした「宴」とは、殿の就任お披露目パーティのようなものらしい。

 その説明を聞いて、すごく違和感があった。

「え、殿って、城主になったばかりなの・・・?」

 あの、もう十年は城主でいるかのような立ち振る舞いは、どう考えても就任したての雰囲気ではない。

「正式にご着任されたのは、四ヶ月ほど前であらせられますね」

 四か月ほど前というと、私がこの世界に来る二ヶ月くらい前か。

 ・・・いや、おかしい。確か医療所は殿の肝入りの政策と聞いていたが、あそこはそんなに最近できたものではなかったはずだ。

 難しい顔をして考え込んでいると、察してくれたお美代さんが補足情報をくれた。

「あ、ご着任はそうですが、それより以前から御父上様の名代をお務めでしたので」

「なるほど」

 それであれば納得がいく。名代としてそこそこ長い時間務めていたというわけか。代わりを務めていたということは、殿のお父様は具合でも悪かったのだろう。

 もしかして、殿のエセ医療撲滅政策もその事に関係してるのかもしれない。

「ご存知ないようでしたら私が聞いておきますね!お衣装のご用意もございますので!」

 公式な場ではやはりそれ相応の格好が必要になるのだろう。一番最初に殿に拝謁した時は貸衣装だったため、手持ちの服は普段着の三着のみ。それも、全てお美代さんのお下がりだった。

 荷物を片付ける際にそれをバッチリ確認してくれていたのかと思うと、心強い味方を得たなぁとしみじみと思った。



 そんなほのぼのとした雰囲気もつかの間。

「あちらが御堂です。今は道明僧正様のお住いとなっています」

 僧正様という言葉に反射的に体に力が入る。

 おそらく西の端、私の部屋から殿のお住いを挟んだ向こう側に、他とは違う作りの建物があった。

 あちらの世界で法事の時に見た建物とよく似ている。

 ここに、あの人がいるのかと思うと、明るい気分も一瞬で台無しになってしまった。

 しかも、意外と近いし。

 そんな憎々しい気持ちの私とは裏腹に、お美代さんは楽しそうだ。

「僧正様、お坊様なのにお美しくて素敵ですよね!姫様もお知り合いだとか!」

 本当に、勘弁して欲しい。

 そりゃああの綺麗な顔面をもってすれば、こんな風に女の子にキャーキャー言われもするだろう。私もお美代さんと同じ立場であったなら「僧正様素敵♡」くらいは言っていたかもしれない。

 あくまでも、同じ立場であったなら、だ。

 初対面から得体の知れないアピールを立て続けざまにされている身からすると、あれはもう厄介な存在でしか無かった。

「知り合いといえば、そうだけど・・・」

 あの人の所業を思い出し、どうしても歯切れの悪い返事になってしまう。

 純粋に目をキラキラさせるお美代さんを見ると、なんとも言えない複雑な気分だ。

 本当であれば、ここら辺で切り上げて部屋に戻っていれば良かったのだ。

 が、先日御堂の脇の茂みに仔猫がいたという話に、つい見てみたい気持ちが湧いてしまい、お美代さんと二人で見に行くことにしてしまったのが軽はずみ過ぎる判断だったんだと思う。

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