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聖女の私にできること  作者: 三ツ陰 夕夜
第二章 聖女の力

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第二十話 草順先生

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「ワシも、聖女の業が見てみたい」

 そう殿が言い出したのは二日前の昼だったらしい。

 すぐに医療所に連絡が来て、迎賓のために医療所の片付け兼大掃除が始まり、終わったのが昨日の夕方。

 人手が充分とはいえ、日常業務をこなしつつの大仕事はなかなか骨が折れた。

 だが、綺麗に片付きホコリも全て払われた医療所はとても気分が良い。頑張った甲斐があるというものだ。

「このような手筈となりますゆえ、先生方もよろしくお願い致します」

 今日の朝の集会はいつもより入念にスケジュールを確認していた。

 殿が作った医療所とは聞いていたが、運営費用も出してくれているらしく、出資者が来るならこの気合いの入れようも頷ける。

 木村先生が、学校の先生のように一日の流れを説明し、ほかの先生方は優秀な生徒という体で聞いていた。私も生徒の中の一人だ。

 全ての情報共有が終わり、先生方が解散する。悲しいことに私は今日も調薬の小間使いだ。

 「殿にお見せしますので、力の温存をお願いいたします」と木村先生に言われれば仕方がないのだが、一昨日から軽症者の治療ばかりでろくに力を使っていなかったため、なんとなく居場所がない感じというか、役に立ててない感じがしてしまって落ち着かない。

 そんな思いと裏腹に、今日のボスである草順先生は次々と私に指示を飛ばしていく。

 この先生はクールというか、あまり感情を表に出さないので何を考えているか分かりにくい。

 まぁ、分かりにくくはあったが、きちんと「ありがとう」を言ってくれるところは好感が持てた。

「この薬って、この大きさじゃないといけないんですか?」

 コロコロと丸薬を丸めながら疑問に思ったことを口にしてみる。

 草順先生のお手本通りに丸めているのだが、自分が患者なら飲むのに勇気がいるサイズだった。

「前は三つに分けていましたが、数を数えるのが苦手な患者が多いのでそうなりました」

 淡々とした口調で答える先生。愛嬌はないが、聞いたことは嫌がらずに答えてくれるので意外と面倒見がいいのかもしれない。

 それなら・・・と、私は思いついたアイデアを試してみることにした。

 使うのは大きめの紙と包装紙と、ノリと、筆も使うか・・・。

「これならどうでしょう!」

 数分で形になったそれを高々と掲げると、草順先生はわざわざ手を止めて確認に来てくれた。

 こうやって部下のアイデアを無下にしないでくれるところはすごく嬉しい。上司に欲しいタイプだ。

 私が作ったそれは、ざっくり言ってしまえば大きな紙に粉薬用の包装紙をいくつも貼り付けてあるだけの代物で、包装紙にはいつもと違い日付と「夕食後」の文字が書いてあるというものだった。

 その包装紙をぺリッと剥がして開くと、小さな丸薬が三つ出てくる。

 あちらの世界のお薬カレンダーみたいなものだ。

「夕食の時にこれを剥がして食事と一緒に置いておけば、飲み忘れないし数も間違えないんじゃないでしょうか?」

「・・・少しお待ちください」

 なかなかの力作だったのだが、草順先生には刺さらなかったらしい。少し難しい顔で部屋から出て行ってしまった。

 ダメかぁ・・・と、ため息をついてお薬カレンダーもどきを見つめる。

 少し愛着が湧いてしまったそれを脇に置く。没だったとしてもせっかく作ったものをすぐに捨てるのはためらわれた。

 仕方ないので、また丸薬を大きめに丸めて。なんてしていると、思っていたよりもすぐに草順先生が戻ってきた。

 何故か、後ろに木村先生を引き連れながら。

「こちらです」

 草順先生は、私の方をチラリとも見ずに先程のお薬カレンダーもどきを示した。

 さすがに口数が少なすぎて何をしたいのか分からない。使ってはいけないものを使ったりはしていないし、怒られることはないと思うが・・・。

 木村先生は真面目な顔でカレンダーを見つめた。指を伸ばして個包装の剥がしやすさや、カレンダー全体の大きさを見ているようだ。

「なるほど、このようにすれば」

 漏れ聞こえてきた言葉は、危惧していたより好意的なものだった。これは意外と好評なやつっぽい。

 そして、木村先生は草順先生と目を合わせて頷くと、私の方を向いた。

「これは、本当に素晴らしいものでございますな」

 いったん没だと思っていたアイデアを称賛されると凄く嬉しいものだ。

 そんな感じで筆頭医師にお墨付きをもらった私の作品は、幾度かの改良を加えられた後「薬表」として医療所に正式採用されることになるのだが、それはまた別の話。

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