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聖女の私にできること  作者: 三ツ陰 夕夜
第二章 聖女の力

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第十五話 山田先生

 結果として、内臓破裂の患者さんの治療は成功した。

 治療中はあんなに不安に思っていたが、治し終わると「もう大丈夫だ」という手応えを不思議と感じた。新たな発見だった。

 木村先生が患者の状態を確認しオッケーを出してくれたので、次は肩を負傷した患者の治療を再開する。

 こちらはすんなり終わり、そのまま次の、頭を負傷した患者さんの治療まで終えると、今まで感じたことがないくらいの疲れが襲い掛かってきた。重い布団をかぶせられたかのように全身が重く、しんどい。

 同時にひどい眠気もしたが、頭を振ってなんとか追い払う。

 木村先生は、私が二人目の治療を終えた際に「次の方の治療が終わりましたら、しばしここでお休みください」と言い残して場を離れた。おそらく軽傷者の方へ向かったようだが、できることなら私も軽傷者を診たかった。

 気だるい頭で木村先生はどこかと見回していると、傍らに背の高い男性が立っていることに気づいた。

 山田先生だ。

「ここにいろと言われだろう」

 私より頭ひとつ分高いところにある仏頂面が面倒くささを隠しもせずにそう言うと、チラッと明後日の方向へ目線をやった。

 つられて同じ方向へ目線をやると、ここよりも酷い血溜まりの中にしゃがみこむ木村先生が見えた。

 あそこが事故現場そのものなのだろうか?

「見ない方がいいぞ」

 山田先生の言葉に何を?と視線を返すが無視される。気になってもう一度木村先生の方をよく見ると、先生の足元に何かが落ちていて・・・。

「っ!」

 落ちているものに気づいて慌てて目を逸らす。良くは見なかったが、あれは、多分もう人の形をしていない人だった。

 既に手遅れだった人がいたのだろう。勝手に全員助けられるつもりになっていた自分への不甲斐なさが湧き上がってきて、唇をギュッと噛み締めた。

「根性はありそうだな」

 上の方からあまり感情の乗らない渋い声が聞こえる。

 私が気付くようにわざとあんな言い方をしたんだとしたら、なんて性格が悪い人なんだろう。

 疲れている時に精神的なダメージまで追わされて足元がふらつく。しゃがみ込んだ私に、山田先生は更なる追い打ちをかけた。

「患者を増やすなよ」

 えぇ!分かっていますよ!もちろんですとも!

 心の中でぶっきらぼうに返事をしながらも、体はゆっくりと地面に吸い込まれていく。

 今はもうただただ眠たくて仕方がなかった。



 目を覚ますと医療所だった。

 力を使いすぎるとあんな風に眠くなるのか。

 またひとつこの力への理解が深まったのは有意義だった。が、この医療所にもあんなに性格の悪い人がいるという事実は、できることなら知りたくない情報だった。

 布団から起き上がると、服の乱れがないことを確認し立ち上がる。

 どこに片付けていいか分からない布団を軽く畳んでから部屋を出た。

「聖女様!お加減はいかがでしょうか?」

 廊下に出ると昼食を配膳中の郷広先生と出くわした。

 今がお昼だとして、眠ってしまったのは一時間くらいということか。

「元気です。でも、様はやめてください」

 同僚からの様付けはさすがに居心地が悪すぎる。

 本当は聖女呼びも止めて欲しいところではあったが、これは身から出た錆なので諦めていた。

「では、聖女殿とお呼びしますね」

 お兄ちゃん然とした態度がとても心地よい。郷広先生は誰かと違って親しみやすく、性格もすごく良さそうだ。

 ない物ねだりだとは分かっていても、こういう先生だけだったら良かったのになぁと、心の底から大きなため息をついた。

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