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聖女の私にできること  作者: 三ツ陰 夕夜
第二章 聖女の力

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第十三話 医療所勤務三

 医療所を手伝って欲しいと言われた時はもっと酷使されるものと思っていたが、木村先生は本当に重傷な患者しか任せる気はなかったらしい。

 何人目かの患者の診療が終わっても、私の出番は本当に荷物持ちと助手だけだった。

 医療所内の人手も十分らしく、新しい職場は人手不足とは縁遠い超絶ホワイト企業のようだ。

 とは言いつつ、木村先生の診察を見学しながらちゃんと医療のお勉強はしている。

 専門的な知識はさすがによく分からなかったが、今のところ「患者の話をよく聞くこと」と「患者の主観は信用し過ぎない」ということは心のメモに書き留めた。

 緊急ではない外来は比較的早く閉めるらしくて、おやつの時間にはいったん受付を終わらせていた。これ以降は緊急性があるもののみ受け付けるという事だ。

 まだ泊まりで受け入れている患者への対応や薬の在庫確保などの雑事は残っていたが、これで今日の仕事はほぼほぼ終わりということだろう。

 今日のおやつは使用期限が切れそうな生薬を使った焼き菓子らしい。

 食事は決まった場所でとるが、おやつは各々の場所で食べるらしく、いちばん若い中性的な見た目の先生が配りに来てくれた。

郷広(サトヒロ)と言います。これからよろしくお願いいたします」

 年は私と変わらないくらいだと思うが、優しいお兄ちゃんという感じだ。

 木村先生と郷広先生と私でおやつを囲むように座ると、三人分のお茶を入れてくれた木村先生が「さてと」、と話を切り出した。

「聖女殿は今まで数十人は町人を治しておいでと伺っておりますが、仔細をお聞かせいただけませんか?」

 これは早いうちに話さなければと思っていた事なのでありがたい。

 やはり木村先生は気が回せるイケおじいちゃんだ。

「今分かっていることだけになってしまいますが・・・」

 重々承知の上だとは思うが、念の為の前置きをつける。これまでの経験から判明した事実と、そこからの予想を分けてできるだけ分かりやすく説明していくと、改めてこの力の凄さに気付かされた。

 木村先生は難しい顔をしながら、郷広先生は目を丸くしながら、一度も遮ることなく聞いてくれた。

「そのような事が現実にあるなんて、凄いことでございますね」

 早くその力を見てみたいと興奮したように身を乗り出す郷広先生とは対照的に、木村先生は静かに口を開いた。

「・・・炎症を治せるというのは、存外幅広く役に立つかもしれませんね」

 炎症なんて痛みだけしか思いつかなかったのだが、何か考えがあるらしい。やはり筆頭医師の名は伊達じゃない。

 そして、知識があるだけでなく、人格も出来上がっているのがこの老医師の凄いところ。

 私と郷広先生がピンと来ていないことに気づくと、知識が浅い二人にも分かりやすいように解説してくれた。

「たとえば、脳に悪い物質が入り込むとそこで炎症が起きてしまい、最悪死に至ります。これはその悪い物質のせいではなく炎症による死と考えられているのです」

 脳内に、インフルエンザ脳症という言葉が浮かんだ。あちらの世界でそんな言葉を目にしたことがあったが、あれも治せるかもしれないのか。

「他にも炎症自体が原因で不調をきたす事はままありますゆえ、そういった症状の患者が診察に訪れた際には、効果があるか確かめさせていただきましょう」

 ありがた過ぎる提案に「はい」と頷く。視界の端で郷広先生もつられて大きく頷いていた。

「ところで、聖女殿の業には使用回数などの制限があるということはございますかな?」

「制限ですか・・・?」

 そういえば、考えたこともなかった。今まで多くて一日に五人を治してきたが、力を使って疲れたのは園田さんの時だけだった。

 それをそのまま伝えると、木村先生はまた考え込む。

 そうか、木村先生の前で使ったのは園田先生の時だけだから、あまり回数を使えないのだと勘違いしていたのか。

「回数でなければ、重度の差か・・・あるいは時間か・・・」

 少しの間ブツブツと考え込んでいたが、さすがにこの大ベテランにも人智を超えた力は予想が出来なかったようで、明日からは実験がてら毎日何人かずつを治療しましょうという話でこの日は終わった。

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