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聖女の私にできること  作者: 三ツ陰 夕夜
第一章 聖女転生

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第十話 出会い

 服の感じから、その人がお坊さんのようであることは気づいていた。

 いたのだが。

 命の恩人の姿に、私は心底驚いた。

 まさか、こんなにも綺麗なお坊さんが存在するなんて、思ったこともなかった。

 男らしさのある目元に、すっと通った鼻筋。唇は少し薄いが形が整っており、その綺麗な顔が一番映えるであろう微笑みを浮かべていた。

 好きな男性のタイプを聞かれたらこの人だと迷わず答えるくらいに、あまりにも魅力的過ぎる見た目だった。

「あ、ありがとうございました」

 ニヤけそうになるのを必死に抑えながら目を逸らす。顔が赤くならないように平常心を保とうとしたが、声は少し上ずってしまったかもしれない。

「お役に立てましたなら光栄にございます」

 澄んだ声色、品のいい言葉に、穏やかで落ち着く喋り方。

 見た目だけでなく声もいいなんて、出来すぎてないかと警戒したくもなる。

 警戒したところでどうしようもないのだが。

「ご気分が優れぬようでしたら部屋を用意させます故、どうぞこちらへ」

 ゆっくり立ち上がりながらそう言うと、綺麗なお坊さんは私をどこかへ案内をしようとする。

 思わずフラッとついて行きたくなるような衝動に駆られたが、そんなことをしに来た訳では無いとグッと堪えた。

「足が、痺れてしまっただけですので大丈夫です!お昼ご飯の時間なので失礼します!」

 少しヤケクソ気味に返事をすると、元気なのを強調するように勢いよく立ち上がりそのまま元々向かっていた方向へ歩き出した。

 あんな、魔性という言葉がピッタリの色気の塊のようなお坊さんが実在するなんて・・・。喜んでいいのか怖がった方がいいのか分からず情緒がぐちゃぐちゃになりそうだった。



「次回よりは足が痺れた際にはきちんとお申しくださいね」

 城の門を潜りながら木村先生に釘を刺されてしまった。ああいう外廊下は意外と転んで重傷を負うことが多いのだそうだ。

「・・・気をつけます」

 お福さんはお母さんのようだったが、木村先生はさながら保育園の先生だ。

 二人とも過保護気味に面倒を見てくれるので、少し恥ずかしくもなるが、知らない世界で生きていくことを考えると本当に凄く運が良かったのだと思おう。

「あの、一つお聞きしてもいいですか?」

「なんでしょう?」

「私を助けてくれたお坊さんって・・・」

 口を開いたはいいが、その後何と続けるかで迷った。

 何者ですか?とかなんて名前ですか?とか、そういうことではなく聞きたいことはもっと本質的なことだったからだ。

道明(ミチアキ)様の事ですね」

 私の考えを知ってか知らずか、木村先生はあの人について教えてくれた。

「あのお若さで僧正様となられたとか。弟君(おとうとぎみ)であられる殿とも良いお付き合いをされていらせられますので、私も懇意にさせていただいております」

 殿が弟で、あの人、僧正様が兄なのか。ちょんまげに髭のオジサマと剃髪の爽やか系イケメンを浮かべて比べようと思ったが、余計な感情が浮かびそうだったので緊急で消し去った。

 けど、どう考えても逆だと思う。

「僧正様、がお若いのは分かりますが、殿はお若くはないのでは無いですか?」

 なるべく失礼にならないように訊ねると、先生は「やはりそう思われますか?」と言いつつフフッと笑った。

 歩く足は止めずに目だけでこちらを向くと、いたずらっぽい顔を作る。

「殿はあれでまだ二十九であられます」

「二十九、ですか・・・?!」

 思わず復唱してしまう。短い時間ではあったが、直接会って話をした結果どう若く見繕っても四十歳前後だと思っていた。

 さっき消したばかりの殿の顔をもう一度思い出す。ちょんまげと髭と、豪快な笑い方。

「二十九歳?!」

 この世界の歳の数え方があちらの世界の数え年と同じなのは確認済みなので、二十九歳とは産まれてから二十七、八年しか経っていないという意味だ。

「あのようなお立場ともなられますと、年若いことが不利になることもありますので」

 木村先生のこの態度から見て、あの年齢詐欺に一役買っているのだろう。

 若作りならぬ年寄り作りということか。

 その技術を使うことは一生なさそうではあったが、好奇心から今度時間のある時にでも聞いてみようと思った。

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