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聖女の私にできること  作者: 三ツ陰 夕夜
第一章 聖女転生

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第九話 城主面談と

 城主様とのお話が始まって数分で早くもピンチ。

 そんな、絶体絶命にも思えたピンチを救ってくれたのは、我らが木村先生だった。

「お恐れながら、その娘は何らかの事故で記憶を無くしていると、そう聞き及んでおります」

「誠か?それは難儀であったな」

 誠ではなかったが、下手に口を開くとボロが出そうなので黙ってコクコクと頷く。

 先生がいてくださって本当に助かりました!このご恩は医療所で沢山働いて返します!

「であらば、ここはひとまず聖女殿と呼ばせてもらおう」

 神様と会話していた時もそうだったが、偉い人というのは「~していいですか?」ではなく「~しますね」の形で喋る生き物らしい。

 まぁ、呼ばれ方なんてよっぽどじゃなければなんでもいいのだが。

「聖女殿は知らぬやもしれぬが、ワシは医療というものを格別に重んじておる」

 木村先生は城主様の隣で大きく頷きながら聞いている。この話は以前お福さんに習っていたので私も先生を真似して大きく頷いた。

「故に、エセ医療というものへの憎しみが深いのよ」

 エセ医療という単語を口にした瞬間、城主様の言葉が僅かにピリつく。私に向けられた感情ではなかったが、特定の誰かのことを言っているようだった。

 確かに、インターネットが発達したあちらの世界でだってエセ医療があったくらいだ、物事の情報源といえば口コミに頼るしかないこの場所でエセ医療が流行ってしまったらそれは大惨事だろう。

 それも考慮した上でエセ医療撲滅を掲げているのであれば、この人は凄い人なのかもしれない。

「聖女殿の術とやらがエセであったなら容赦はせぬぞ・・・と、言うつもりであったのだが、それは杞憂であったな!」

 ガハハと豪快に口を開けて笑う。父と同じくらいの年に見えたが、笑っている姿を見るとこの城主様意外と若いのかもしれない。

 城主様はひとしきり笑うと、今度は、最初に感じた威厳を脱ぎ捨てた人懐こそうな表情で喋りだした。

「話は全て木村から聞いておる。あの医療所はワシの肝入りでな、是非とも聖女殿にも力を貸してもらいたい」

「精一杯頑張ります」

 呼び出されたと言われた時は何事かと思ったが、なんのことは無い、就職先の社長との顔合わせだったらしい。

 私の返事を聞くと、城主様は満足そうに立ち上がって、入ってきたのと同じ襖の向こうへと消えていった。



 嬉しくないサプライズも終わり、「医療所で昼餉にしますか」と言う木村先生と部屋を出た時だった。

 痺れに痺れた足がなかなか言うことを聞いてくれず、そのまま外廊下から中庭の方へ倒れ込んでしまったのだ。

 感覚のほとんどない足は役に立たず、いつもよりきっちり袖のある服を来たせいで両手も上手く使えない。

 終わった。

 二度目の死をも覚悟した。けど私を抱きとめたのは、中庭の地面ではなくやたらいい匂いのする服を着た男性の胸元だった。

「お怪我はございませぬか?」

 左上の方から、品のいい声が聞こえる。

「あ、すいません!」

 抱き止められてる!そう気づいて瞬時に上体を起こした。

 事故とはいえ見ず知らずの男性に抱きしめられたままというのは、色々と良くない。

「聖女殿!お怪我は?!」

 駆け寄ってくれた木村先生に大丈夫ですよと笑顔を作る。

 まさか痩せ我慢の正座がこんな大事になるとは思ってもいなかった。

「ご無事なようで何よりでございまする」

 抱き止めてくれていた男性の声が頭の上に降ってきた。いけない、焦って命の恩人へのお礼を忘れるところだったと、お礼を伝えるため改めてその人に向き直った。

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