ついてくる影
ユソン文化財団の本社を出た瞬間からだった。
風はなかったが、私の髪がしきりに揺れた。
清潭洞のきらびやかな街、ガラス窓に映った私の後ろ姿。通り過ぎるかのように近づいては止まる、すれ違う人々。
私は静かに携帯のカメラを起動し、後ろを映した。何もなかった。しかし、確信した。
誰かが私をつけてきている。
「おかしいくらいに電気の消えた廊下で、室内灯が一つずつ点いていく感じだったの。」
漢南洞のカフェでユリムに言った。
彼女はラテのカップを握りしめ、目を丸くした。
「え?ウンビお姉さん、それ、本当に怖いよ。気のせいならいいけど…。ううん、今日は確かにおかしかった。
財団でヒョン・ドユンに会ってからずっとそうなんでしょ?」
私は頷いた。
ヒョン・ドユンとの対面、彼の鋭い眼差し、そしてあの言葉。
「作家が消えた後。」
その言葉は私の頭から離れなかった。イ・スヨン、チョン・ソア、そして名もなき人々。
彼女たちの絵は単なる芸術品ではなかった。彼女たちは私を呼んでいた。
「ユリム、私…。誰かに見られている気がする。財団を出てからずっと。」
ユリムはカップを置き、首をかしげた。
「じゃあ、本当に誰かがつけてるんじゃない? ウンビお姉さん、これ、危ないと思う。カンチーム長もずっとおかしな態度だし。
それに、ヒョン・ドユンって人も、すごく怪しい。」
彼女の言う通りだった。
カンチーム長の警告、ヒョン・ドユンの眼差し、そして絵の中の声。すべてが私に向けられていた。
しかし、止まることはできなかった。イ・スヨンとチョン・ソアの痕跡は、私に何かを伝えようとしていた。
その夜、
家に帰ると、机の上に見慣れない宅配便の箱が置かれていた。
小さな紙箱、リボンもなく、雑に巻かれたテープ。送り状には差出人も、連絡先もなかった。
私は心臓がどきんと音を立てるのを感じながら、慎重に箱を開けた。
中には、私がスケッチしたヒョン・ドユンの顔が白黒プリントで入っていた。
深く窪んだ目元、シャープな顎のライン。そしてその下には、手書きで書かれた一文。
「お前はすでに彼に似てきている。止めなければ、次はお前の番だ。」
手が震えた。
その絵が、まるで鏡のように感じられた。私が彼を描き続けることで何かに蝕まれていることを暗示するかのように。
私はスケッチブックを広げた。
ヒョン・ドユンの顔、イ・スヨンとチョン・ソアの肖像、そして彼女たちの後ろにぼんやりと立つシルエットたち。そのすべてが私に向かって近づいてきていた。
その瞬間、携帯にメールが届いた。差出人不明。
「C-13倉庫。今夜。監視カメラは切っておく。」
私は一気にメッセージを削除した。しかし、頭の中で数日前にカンチーム長が通りすがりに言った言葉が蘇った。
「元々、財団にC棟はありませんでした。最近になって新しく登録されたんです。倉庫の名称も非公式ですよ。」
隠された空間。
監視者。
そして誰かの静かな手助け。
私は徐々に気づき始めていた。財団の中には二つの流れがある。一つは私を引き込もうとし、もう一つは私を押し出そうとしている。
決心はすぐについた。
C-13倉庫。そこに答えがあるかもしれない。私はユリムに電話した。
「ユリム、私…今夜、財団にもう一度行こうと思うの。C-13倉庫っていう場所に。」
ユリムの声が焦ったものになった。
「え?ウンビお姉さん、本気?一人で行くの?危ないって言ってるのに!私も一緒に行く!」
「ううん、ユリム。今回は私一人でやらなきゃ。でも…もし私が遅くなったら、美術館のデータベースを確認してほしいの。C-13倉庫に関する記録、何でもいいから。」
ユリムはため息をついて言った。
「わかったわ、探偵チョン・ウンビ。でも、本当に気をつけてね。それと…帰ってきたら、今度はプルコギじゃなくて韓牛をおごってくれるってことで、オッケー?」
彼女の冗談に私はふっと笑った。しかし、心臓はますます速く鼓動していた。
夜11時、私は清潭洞の財団本社へ向かった。
建物は闇に沈んでいた。ロビーを通り、非常階段を通って地下へ降りた。C-13倉庫は公式の地図にはない空間だった。
しかし、廊下の突き当たり、錆びた鉄の扉の前に貼られた小さな表札が目に入った。
C-13。
扉を押すと、冷たい空気が私を包んだ。中は暗かった。懐中電灯をつけると、埃をかぶったキャンバスが壁に沿って並んでいた。
すべて「作者不詳」として分類された作品。イ・スヨン、チョン・ソア、そして名もなき人々の肖像。
私は慎重にスケッチブックを取り出した。指先が震えていた。あるキャンバスの前に立つと、馴染みのある電流が脳に走った。
目の前がかすみ、私は新しい空間に吸い込まれていった。
暗い部屋。窓のない壁。そして机の上に置かれたポラロイド写真。引き裂かれた顔、ぼやけた名前。
イ・スヨン、チョン・ソア、そして…「ヒョン」という文字。
そしてその後ろに立っている男。ヒョン・ドユン。
彼はペンを握っていた。彼の手はゆっくりと、しかし正確に写真の上の名前を消していった。
「消されないということは、忘れられることより残酷だ。」
彼の声が空間に響いた。私は彼の視線に近づこうとしたが、体が動かなかった。
その瞬間、彼の目が私を向いた。
「チョン・ウンビさん、なぜここにいる?」
私は息を止めた。彼の声は夢の中と全く同じだった。冷たく、鋭かった。
「お前もすぐにこの絵になる。」
目を開けると、私は倉庫の床に座り込んでいた。懐中電灯が転がり、壁を照らした。
一枚のキャンバスが目に入った。チョン・ソアの肖像。彼女の瞳は私を見つめていた。
「彼を信じないで。」
彼女の声が再び響いた。私はスケッチブックを広げた。たった今見た幻影が紙の上に描かれていた。
ヒョン・ドユン、そして彼の後ろに立つ女性たち。
私は震える手で鉛筆を握った。彼の隣に書き記した。
「お前もすぐにこの絵になる。」
その言葉は警告だった。しかし、誰が送ったのだろうか?ヒョン・ドユン?それとも…私を引き込もうとする誰か?
家に戻った私はユリムに電話した。
「ユリム、私…無事に帰ってきたわ。」
ユリムの声は安堵に震えていた。
「よかった、ウンビお姉さん!で、何?C-13倉庫で何か見つけたの?」
私はため息をついて言った。
「絵よ。全部、女性たちの肖像だった。そして…ヒョン・ドユンがそこにいたの。絵の中に。」
ユリムは息をのんだ。
「え?じゃあ、あの男が本当に…このすべてを知ってるってこと?ウンビお姉さん、これ、すごく危険だよ。カンチーム長に話すべきじゃない?」
「だめ。」
私はきっぱりと言った。
「カンチーム長は…信じられない。彼の警告、ずっとおかしかった。まるで私を監視しているみたいだった。」
ユリムはため息をついて言った。
「わかった。じゃあ、私たち、これからどうする?データベース、確認してみる?C-13倉庫に関する記録、探してみるわ。」
私は頷いた。
「うん。それと…ユリム、もし私がまたおかしくなったら、私のスケッチブックを必ず確認して。そこにすべてがあるから。」
ユリムは笑って言った。
「わかったわ、探偵チョン・ウンビ。でも今度は韓牛じゃなくてお寿司をおごってくれるってことで、オッケー?」
彼女の冗談に私はふっと笑った。しかし、心はますます重くなっていった。
影の中の私
その夜、私は再びスケッチブックを広げた。ヒョン・ドユンの顔、イ・スヨンとチョン・ソアの肖像、そしてC-13倉庫で見た幻影。すべてが絡み合っていた。
私は鉛筆を握り、新しいスケッチを始めた。今度は自分自身を描いた。キャンバスの前に立つ私、そして私の後ろに立つ影たち。イ・スヨン、チョン・ソア、そして名もなき人々。
そしてその後ろ、ぼんやりとしたシルエット。ヒョン・ドユン。
「お前はすでに彼に似てきている。」
宅配便の箱の中の言葉が頭の中を巡った。私は本当に彼に似てきているのだろうか?絵を描きながら、彼らの秘密に近づきながら、私も少しずつ消されているのだろうか?
私は窓を開け、ソウルの夜を眺めた。清潭洞の光は相変わらず冷たく輝いていた。
しかし、その光の中、私は影を見た。私についてくる、私を包み込む影を。
イ・スヨンとチョン・ソアはなぜ私を呼んだのだろうか。
ヒョン・ドユンはなぜ私を消そうとするのだろうか。そして…私は本当に次になるのだろうか。
私はスケッチブックを閉じながら決心した。C-13倉庫の秘密を暴かなければならない。
ユソン文化財団の影の中へ、彼女たちの痕跡を見つけ出すために。
しかしその瞬間、ドアの外から足音が聞こえた。小さく、慎重な足音。私は息を止めた。ドアの隙間から影がよぎった。
誰かが私を見ていた。そして私はもう、その影の中に完全に入り込んでいた。




