名前のかけら
名前のかけら
「『ヒョン』っていう名前で、何か思いつく人いる?」
私はスケッチブックの上で、引き裂かれたポラロイドの一部をユリムに手渡した。かすかに浮かび上がった二文字、「…ヒョン」。その下にはぼんやりと滲んだユソン文化財団のロゴが、まるで秘密を隠すかのように不完全だった。
ユリムはスケッチブックを受け取ると、しばらくためらった。彼女の目は紙の上をなぞり、どこか不安げだった。
「たぶん…財団の法律顧問に、ヒョン・ドユンという人がいるわ。」
彼女は慎重に口を開いた。
「事務局ではかなり有名よ。財団内部でも核心人物だし、外部メディアにはほとんど出ない人。名前以外に特に情報もないの。」
「ヒョン・ドユン。」
私はその名前を心の中で繰り返した。たった二文字がパズルのピースのようにぴったりはまる気がした。だが、そのピースはまだあまりにも小さかった。
「顔は?」
私は息を整えて尋ねた。ユリムはスマートパッドを取り出し、検索を始めた。しかし、ヒョン・ドユンに関する情報は途方もなく少なかった。プロフィールには「ソウル法科大学首席卒業」「国際芸術法研究所運営」「ユソン文化財団顧問」という、整えられた経歴だけがあった。そして、たった一枚の白黒の証明写真。
私は手を止めた。
「この人。」
写真の中で、私はスケッチの中の男の眼差しを見た。冷たく、鋭く、すべてを見通すような目。
「…そうよ。この人だわ。」
ユリムは私の声の震えに気づいたのか、心配そうな目で私を見た。
「ウンビお姉さん、本当にこの人なの?じゃあ…イ・スヨンとチョン・ソアの絵と関係があるってこと?」
「分からない。でも…この人、ただの顧問じゃない。何かを知っているわ。」
私はスケッチブックを閉じ、息を整えようと努めた。ヒョン・ドユン。ユソン文化財団。そして絵の中の女性たち。これらすべてが一つの影の下で絡み合っていた。
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数日後、私は再びユソン文化財団本社へ向かった。今回は公式な名目があった。「法的諮問」名目での略式質問。美術館と財団間の展示契約に関する質問という口実だった。だが、私の本当の目的はヒョン・ドユンと対面すること、そして彼の眼差しの中から手がかりを見つけることだった。
清潭洞の財団本社は相変わらず冷たかった。ガラスと鋼鉄でできた建物は、日光を反射して鋭く輝いていた。ロビーに入ると、前回と同じ緊張感が私を包んだ。
受付の職員がタブレットを確認して言った。
「チョン・ウンビ ドセント様、こちらへどうぞ。」
会議室へ案内される途中、私は息を整えながら周囲を見回した。壁にかけられた寄贈作品の写真の間で、イ・スヨンの肖像画が再び目に留まった。彼女の瞳は相変わらず私を追っていた。
会議室のドアが開いた。静かな足音とともに一人の男が入ってきた。濃い灰色のスーツ、整えられた髪、穏やかに伏せられた目元。
ヒョン・ドユンだった。
「ドセントのチョン・ウンビさん、でいらっしゃいますね?」
彼の声は低く、丁寧だった。まるで外交官のように、すべての言葉が計算されているようだった。
「はい、はじめまして。」
私は立ち上がり、彼を見つめた。彼はスケッチの中と全く同じ目で私を見た。冷静で正確で、一度も感情を表に出さない目。
「いくつか、お聞きしたいことがありまして。」
ヒョン・ドユンが先に口を開いた。
「数日前、財団の収蔵庫に行かれたと伺いました。作者不明の作品群に、どのようにして興味を持たれたのですか?」
瞬間、空気が凍った。彼の質問は穏やかだったが、鋭い刃のようだった。私は努めて微笑みながら問い返した。
「絵が興味深かったんです。まるで生きているようでしたから。」
「生きている、ですか…。」
彼はしばらく沈黙した後、頷いた。
「そのような感想を持たれる方は、珍しくありませんね。」
私は目を細めた。「珍しくない」という言葉。それは、絵に触れた人が私以外にもいるということだった。
「もしかして、あの絵についてもっとご存知ですか?」
ヒョン・ドユンは微笑んだが、彼の瞳は冷たいままだった。
「正確に申し上げますと、私はあの絵の『その後』についてのみ知っています。」
「…その後?」
「作者が姿を消した後、です。」
彼の返答はあまりにも正確だった。私はわずかに指先を握りしめた。
イ・スヨン、チョン・ソア、そして名もなき女性たち。彼女たちの失踪は単なる偶然ではなかった。
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その夜、私はユリムと共に再び美術館の収蔵庫へ向かった。カンチーム長の目を盗んで忍び込むのは危険だったが、止めることはできなかった。チョン・ソアの絵、あの赤い抽象画が私を呼んでいた。
収蔵庫は相変わらず静まり返っていた。蛍光灯の下、チョン・ソアのキャンバスは赤が滲んだ混沌とした色彩で満たされていた。だが、私はその中に何かを見た。
ユリムは私の隣で囁いた。
「ウンビお姉さん、これ本当に大丈夫なの?カンチーム長にバレたら私たち本当に大変なことになるよ。」
「分かってる。でも…この絵、何かを語ろうとしてる。」
私は手袋を外し、慎重にキャンバスの縁を触った。瞬間、電流が指先を伝って広がった。
目の前がかすみ、赤い霧に包まれた空間が広がった。
無表情な女性たちの顔が浮かび上がった。イ・スヨン、チョン・ソア、そして名も知らぬ人々。彼女たちの後ろには、あの男、ヒョン・ドユンのシルエットが立っていた。
そして今度は、新たな細部が目に飛び込んできた。キャンバスの隅にうっすらと刻まれた一文。
「消えないということは、忘れ去られることよりも残酷だ。」
その隣にはイニシャルがあった。
「HY.D.Y.」
「ヒョン・ドユン…?」
ユリムが私の隣で呟いた。彼女も同じものを見ていたのだ。
「あの人、この絵に直接触ったんじゃない?」
私は黙って頷いた。彼は単なる顧問ではなかった。彼は知っていた。いや、見守っていた。絵の中の女性たち、彼女たちの失踪、記憶の断片、そして…影の存在。
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収蔵庫を出て、私たちは漢南洞の馴染みのカフェへ向かった。ユリムはラテのカップを置き、深刻な表情で言った。
「ウンビお姉さん、これ本当に危ないわ。ヒョン・ドユンが絵にイニシャルを残したとしたら…彼はただの財団顧問じゃない。何か大きなことに巻き込まれてる。」
「そうよ。そして…彼は私を知ってる。財団で私に会うなり、私が収蔵庫に行ったことを知ってたわ。」
ユリムの目が大きく見開かれた。
「何?じゃあ誰が私たちを監視してるの?カンチーム長?それとも…財団全体?」
私は首を振った。
「分からない。でもイ・スヨンとチョン・ソア、そして他の女性たち…彼女たちは皆、財団と繋がってる。そしてヒョン・ドユンはその中心にいるみたい。」
ユリムはため息をつきながら笑った。
「分かった、探偵チョン・ウンビ。じゃあ次は?ヒョン・ドユンに直接乗り込んで問い詰めるつもり?今度はサムギョプサルじゃなくてプルコギ奢ってくれるなら、オーケー?」
彼女の冗談に私はふっと笑った。だが、心は重かった。ヒョン・ドユンの眼差し、彼の言葉…。




