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ドーセントの目《絵の記憶》  作者: プロトリアン
14/15

歓迎の残滓



両手で額を押さえた。息が切れ、目の前が真っ白になる感覚には慣れていた。だが、今回の幻影は違った。


スケッチブックに描かれた空間――瑞草洞の地下保管所、点滅するモニター、赤い目の男。その視線は単なる幻影ではなかった。誰かが意図的に私を描き込んだような、生々しい存在感があった。


「私が描いたのが…本当なら?」


冷たい空気が肩をかすめた。ミョン検事の作業室は静かだったが、私の心臓は依然として速く脈打っていた。


「こんな能力を一人で耐えてきたんですね。怖くなかったですか?」


低く響く彼の声に、私は顔を上げた。ミョン検事は机の前に立っていた。彼の表情は揺るぎなかったが、瞳には温かい重みが宿っていた。


「怖かったです。」


私は正直に答えた。


「でも今は…少しだけ怖くないです。」


彼は静かに笑った。何も言わずに向けられた微笑みだったが、その中には確信が込められていた。堅固で、崩れない信頼。


「これからは一人で怖がらないで。僕がいるから。」


その言葉は誓いのように私の心をゆっくりと包み込んだ。彼の声は柔らかだったが、その裏に隠された決意が私の恐怖を溶かした。私はしばらく彼の目を見つめた。その視線は単なる慰めではなかった。実体のある約束だった。


---

手がかりの連結


その瞬間、ミョン検事の携帯電話が震えた。彼は短く画面を確認すると、机の上からファイルを取り出した。彼の表情は素早く引き締まった。


「ウンビさんが描いた空間、昨夜通報された行方不明者のCCTV最終座標と一致します。」


私の息が止まった。彼は図面を広げながら言葉を続けた。彼の指は図面の上を素早く動き、情報を連結させた。


「財団が運営する瑞草洞地下保管所。3年前に閉鎖されたと思われていましたが、今も一部の出入り記録が残っています。セキュリティカードなしでアクセスした痕跡もありますし。」


彼は再び私を見た。今度は優しさではなく、決断力のある眼差しで。


「今すぐ出発しましょう。ウンビさんの絵がそこで見たことを示しているなら…僕たちがこれ以上遅れる前に見つけなければならないものがあります。」


私は思わず頷いた。恐怖はまだあったが、不思議と怖くなかった。ミョン検事の言葉――「僕がいるから」――が私の内側でしっかりとした根を張った。彼の冷静な判断力、素早い対応は私を前へと引き寄せた。


「行きましょう。」


私の声は震えずに鮮明だった。


---

瑞草洞への旅程


ミョン検事のSUVはソウルの夜景を切り裂き、瑞草洞へと向かった。車内は静かだったが、彼の存在が空間を満たしていた。彼はハンドルを握りながら言った。


「瑞草洞保管所は財団の秘密施設の一つです。NP-PROJECT-Ⅲのデータバックアップと実験ログが保存されている場所と推定されます。チャン・ピルラ博士の痕跡もそこにある可能性が高いです。」


私はスケッチブックを握り、彼の言葉を聞いた。彼の声は落ち着いていたが、言葉の一つ一つに力が込められていた。


「ウンビさんの幻影、正確でしたね。前回の城北区でも、今回の瑞草洞でも。その能力…あなたが考えているよりも強力かもしれませんよ。」


彼は横目で私を見ながら微笑んだ。その微笑みは軽やかだったが、私の胸を軽く叩いた。私は窓の外に視線を向けながら言った。


「ただ…ドセントとしての直感です。絵は物語を語ります。私はそれを読むだけです。」


「その直感、信頼できますね。」


彼の返事は短かったが、真心がこもっていた。私は彼の横顔をっと見た。端正なシャツ、鋭い顎のライン、そして落ち着いた眼差し。彼のカリスマは知的であり、その裏に隠された優しさは私を安心させた。


---

地下保管所の門


瑞草洞の閑静な路地の突き当たり、古びたビルディングの前に車が止まった。一見すると普通の商業ビルだったが、ミョン検事は地下駐車場へと車を走らせた。


「ここからは気をつけなければなりません。財団の監視網がある可能性が高いです。」


彼はトランクから装備バッグを取り出した。セキュリティカードハッキング装置、懐中電灯、そして拳銃。私は彼の手にある銃を見て一瞬たじろいだ。


「必要な場合にだけ使います。」


彼は私の表情を読み取り、低く言った。


「あなたを守るために。」


彼の言葉が私の恐怖を覆った。私は頷きながらスケッチブックを握った。私の超能力、絵を通して記憶を見る能力。それがここで鍵となるだろう。


地下3階、エレベーターが止まった。暗い廊下の突き当たりに鉄扉があった。扉の上にはかすれた文字が書かれていた。遊星文化財団 – セキュリティ区域。ミョン検事はハッキング装置を取り出し、扉のセキュリティパネルに接続した。画面が点滅し、数字が素早く変化した。


「コードが複雑ですね。少し時間がかかりそうです。」


私は扉を見つめながらスケッチブックを開いた。手が自然に動いた。鉄扉の向こうの空間が描かれた。モニターがずらりと並び、その中にはイ・スヨン、チョン・ソア、そして私の顔が浮かんでいた。そしてその中心に、赤い目の男が立っていた。


「ウンビさん、大丈夫ですか?」


ミョン検事の声が私を現実に引き戻した。


「ここ…私が以前見た場所です。幻影の中のあの空間。」


彼は頷きながら言った。


「では、あなたが鍵かもしれませんね。覚えてますか。チャン・ピルラが言った『進入コードは記憶』。」


私はスケッチブックを握りしめ、目を閉じた。幻影の中の数字が浮かび上がった。7-1-9-3。


「7193。コードです。」


ミョン検事は素早くコードを入力した。扉が「カチッ」という音を立てて開いた。彼は私を見つめながら微笑んだ。


「あなた、本当にすごいですね。」


彼の褒め言葉に私の心臓が軽く跳ねた。しかしすぐに緊張感が私たちを包んだ。扉の向こうは暗い廊下だった。


---

## 保管所の秘密


廊下を進むと、冷たい空気が肌を刺した。懐中電灯の光が壁を照らした。古びたサーバーラック、散らばった書類、そしてモニターがずらりと並んでいた。まさに私が幻影で見た空間だった。


ミョン検事はモニターの一つを点けた。画面にNP-PROJECT-Ⅲのロゴが浮かび上がった。


「データバックアップサーバーです。チャン・ピルラのログ、被験者記録…すべてここにあるはずです。」


私はスケッチブックを開き、部屋の中を描いた。モニター、サーバー、そして隅に置かれた古い箱。その中にはテープがあった。V-02ではない、新しいラベル。V-03 / 最終報告書。


「あれです。」


私は箱を指差した。


ミョン検事は箱を開け、テープを取り出した。彼はテープをポケットに入れながら言った。


「これは後で分析しなければなりませんね。今は…もっと奥へ進む必要があります。」


その瞬間、廊下の奥から金属音が聞こえた。誰かが近づいてきていた。ミョン検事は私を壁の後ろに引き寄せた。彼の手はしっかりとしており、彼の息遣いが私の耳に触れた。


「静かに。」


彼のささやきは低かったが、落ち着いていた。


足音が近づいてきた。黒いスーツの男たち、赤い目ではなかったが、彼らの動きは財団のエージェントであることを物語っていた。


ミョン検事は私の手を握り、ささやいた。


「僕が合図したら、あの出口に走ってください。わかりましたね?」


私は頷いた。彼の手から伝わる温かさが私の恐怖を覆った。


---

ユリムの応援


エージェントたちが通り過ぎると、私たちは慎重に出口へ向かった。車に戻った私はユリムに電話した。


「オンニ、大丈夫?瑞草洞に行ったって?本当に無事なの?」


彼女の心配そうな声に私は微笑んだ。


「うん、大丈夫。ミョン・ジェソン検事と一緒に行ったの。V-03テープ見つけたよ。」


ユリムはため息をつきながら言った。


「本当に、オンニはスリラーの主人公だよ。でも今度は私も一緒に行くから。原州に行く前に私たち、クロッフルでも食べようよ。私がおごる、どう?」


彼女の冗談に私は笑い出した。


「わかった、ユリム。一緒に行こう。」


---

約束の重み


闇が深く垂れ込めた作業室、V-03テープを手に持ったミョン検事の横顔は静かでいて決意に満ちていた。古いプレーヤーにテープが挿入される瞬間、短い静寂の中で私は彼の低く、真剣な声を聞いた。


「これがチャン・ピルラの最後のメッセージである可能性が高いです。そして…あなたの次の手がかりです。」


画面が点灯し、不気味な光の中でチャン・ピルラの顔が浮かび上がった。彼女の眼差しは、まるで長い間私を待っていたかのように、意味深長に私を貫いた。


「ウンビ、あなたは記憶の証人だ。G-系列保管庫に行きなさい。そこにすべての答えがある。」


彼女の声が途切れると同時に、再び静寂が作業室を包んだ。私は息を止め、ミョン検事を見つめた。彼の瞳には揺るぎない確固たる信頼が宿っていた。その信頼は私の胸の奥深くに入り込み、未知の道への恐怖を取り除き、強力な勇気を植え付けた。


「原州に行かなければなりません。準備はいいですか?」


彼の質問に私はためらうことなく頷いた。私の答えは彼に対する変わらぬ信頼であり、一緒ならばどんな困難も乗り越えられるという確信だった。


「準備できました。あなたがいますから。」


私の言葉に彼の口元に温かい微笑みが広がり、その微笑みは暗かった作業室を明るく照らした。その瞬間、私は悟った。このすべての戦いは、もはや一人で背負う孤独な旅ではなかった。彼の手を握り共に進むならば、どんな闇の中でも、どんな危険が潜んでいようとも恐れることはないだろう。私たちの運命的な約束は、そうして固く心に刻まれた。

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