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ヒーローを追いかけまわすタイプの悪役令嬢に転生してしまったけどキャラ変したいです  作者: 園内かな
それから

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2.


 インタビューが掲載された新聞は特別号として販売され、とても人気が出たらしい。

 だから他にも色んな新聞から取材をお願いされたり、私をモデルとした本を売りたいって希望もあったけれど、そういうのは全部断った。

 私は目立って自分の功績を残したいって感じじゃないのよね。

 これからから出産もあるし、あまり動きたくないわ。


 そんなことを思っていたら、屋敷にリーシャオが尋ねてきた。

 ミリセントも同行しているから、何となくどういう話かは分かる。

 私は二人を迎えいれ、マドレーヌにもジェシカにも下がってもらって、三人だけで話すことにした。

 ミリセントがニコニコして話を始める。


「ごきげんよう、エリザベス。大分お腹が大きくなってきたわね」

「そうなの。張りもあるしトイレも近くなるし、あんまり動けないけど赤ちゃんが生まれるのは楽しみだわ」

「こんなに母性が溢れてる様子を見ると、腐った話をするのは憚られるわね……」


 多分、密かにサークル活動をしている同人誌の話をしたいんだろう。別に構わないわよ、と言う前にリーシャオが口を挟んだ。


「やめろ、そんな話は聞きたくねぇ。それよりマホチカの話だ」

「マホチカ。そういえば、三年経ったわね」


 一番最初にマホチカの話を聞いたのはナインヴァンス城での狩猟祭の時だった。

 懐かしい~!

 まだ私もミリセントも、セリーヌ姫も結婚してなかった時だ。三年って今から思えば、あっという間だったわね。


 とにかく、その時に『魔法使いの誓いというゲームは三年後に始まる』と教えられたのだ。

 だったらついに、王宮で動きがあったのだろうか。

 そう思ったのだけれど、リーシャオが口にしたのは予想外の話だった。


「ヒロインであるルチアは王宮のメイドになっていない」

「そうなの。やっぱり、展開が変わったからかしら」

「それには、以前エリザベスの侍女だったステイシーの存在が大きいようだ。ステイシーは王宮の侍女として頭角を現している。女官にも認められる有能さらしい。それで、新入りを雇う必要が無かった」

「へーっ! ステイシーは、公爵家に戻るのはやめると言っていたわ。結婚相手が見つかったら私のところに来たいって言っていたけれど、もしかして三角関係のヒロインになるのかしら」

「さあな。今のところ、去る者は追わず来る者は拒まずといった様子だが」

「ステイシーったら。でも華やかな宮廷恋愛劇だったらそうなるのかしら」


 歴史的に見ても、そういう場所は色々入り乱れているものね。

 私がそう思いながら言うと、リーシャオは断言した。


「とにかく、もうゲームは始まらない。魔王も降臨しないし、王太子は結婚して子供まで居る。この国は安泰だろう」

「良かったわねえ、二人とも」


 ミリセントはモブだから関係無いけれど、私とリーシャオは死ぬ場合もあったのだ。

 というか、本来なら私はゲーム開始前に死んでいた筈なのだから。

 それが、前提から変わったのだから本当にめでたいことだ。私もニッコリして、お腹を撫でながら言う。


「本当に。良かったわ」

「……お前が新しい命を生み出そうとしているなんて、いつ見ても不思議な光景だ」


 リーシャオが私のお腹を見ながら言う。


「そうねえ。ゲームとこの世界とは、似ているけれど違うってことかしら。あ、お腹さわってみる?」


 私の誘いに、ミリセントは予想通り「触ってみたい」と言う。

 リーシャオはそんなのお断りだと言いそうだと思っていたけれど、彼も私のお腹にそっと触れた。


「良かったな」


 そうポツリと呟いて、彼は去って行った。

 残ったミリセントと、ノンカフェインのハーブティを飲みながら話をする。


「結局、リーシャオはサイの国に戻らないのかしら」

「総合病院の仕事があるでしょ。すぐには戻れないわよ」

「やる気になってくれて嬉しいわ。ミリセントも」

「私だって、サイに行けるものだったら行ってみたいわ」


 その言葉に、思わずニヤニヤしてしまう。


「またまた。そんなこと言って、ヴィクトルお兄さまとなんだかんだ上手くいっているんでしょう」

「そうでもないわよ。だってヴィクトルさまは私よりエリザベスの方が好きなんだもの」


 結婚前や結婚当初はあっけらかんと言っていたその台詞なのに、今は拗ねた表情に見える。

 私はニヤニヤ笑いが止まらないまま、教えてあげた。


「ヴィクトルお兄さまは、ミリセントが病院設立のお仕事にかかりきりで屋敷にほとんどいないって文句を言ってたわよ。たまには一緒に居てあげたら」

「……っ、エリザベスがそう言うなら」

「ふふっ。じゃあ今日はもう屋敷に戻ることね」

「うーん、この後病院に行こうとしてたのに。アリスも病院で頑張ってるわよ。クリスと二人、良い感じに見えるわ」


 私は呆れて言った。


「またそうやって、すぐカップリングを作るんだから」

「本当だって。アリスは助けられたことをすごく恩義に感じていて、クリスのこと大好きだから。それに三年経ったから、すっかり健康的になって。美人で成長著しいわよ」

「私もアリスに助けてくれてありがとう、大好きって言われたことあるもん」

「なんで張り合うの」


 ミリセントとは義理の姉妹になったし、前世の記憶もあるしですっかり打ち解けて仲良くなった。

 じゃあまた来るわ、と言ってミリセントは帰っていったけれど、どことなくソワソワしていたのは見間違いではないだろう。


 ふう、と一息つくとスマホにシーラからメッセージが来ていたのに気付く。

 新作の『魔神と魔法使い』の連載中原稿が出来たというお知らせだ。

 これがまた、アランさまをモデルにして書いている冒険譚でとっても面白くて評判になっている。すぐに舞台化してほしいって声も上がっているけれど、とりあえず完結してからよね。


 シーラは結局、公爵家の侍女を辞めて専業になっていた。

 そして今住んでいるのは、以前のアランさまのお屋敷。そこにアリスと、以前ソフィアの下級メイドとしてそこで働いていたキャシーっていう女性と住んでいるのだ。

 勿論、シーラがアリーズ先生ということは内緒のままなんだけれど、勘が鋭くて富と権力を持っている人のうち数人はお屋敷に出入りしているらしい。


 セリーヌさまとか。セルジュ先生とか。何故か、ヴィンス先生も行き来があるらしい。

 セルジュ先生がストーカーみたいにならないことを祈りつつ、私はあまり口を出していない。

 シーラだったら、上手くあしらえるでしょう。

 後でゆっくり読ませてもらうわ、と返事をしていると扉がノックされた。


「はい」

「ただいま、エリザベス」

「アランさま! おかえりなさい」


 以前、アランさまが音もなく同じ部屋にやって来てびっくりして飛び上がってしまった。だからそれ以来は、移転をドアの外に一旦してもらってノックしてから入室してもらっている。

 心臓に悪いもん、びっくりしすぎて。

 私が立ち上がって迎え入れようとすると、彼は急いで隣にやって来てくれる。


「動かないで、危ないから」

「少しは動かないといけないのよ」

「後で、一緒に散歩をしよう。それでいいだろう」

「ええ」


 アランさまが優しい瞳をして、お腹を撫でてくれる。


「いつも思うが、自分が子を成せるとは思っていなかったから不思議な気分だ。まだ目の前の幸福が信じられない」

「まあ。結婚してもう二年くらい経つのに。うふふ、アランさまったら」


 そう言うと肩を抱き寄せられた。彼の温もりを感じて嬉しくなる。


「本当だ。生きていてくれて、ありがとう」

「ふふ。こちらこそよ。私、幸せだわ」


 それに呼応するように、お腹の中でこぽこぽと胎動を感じる。

 本当なら無かった未来が、今は在る。


 気付いた時にはヒーローを追いかけ回すタイプの悪役令嬢に転生したかと思ったけれど、本当はアランさまはヒーローではなかった。魔神になるいわゆる悪堕ちするキャラだった。

 私も、悪役令嬢ではなくスタート時点で既に死んでいるキャラだった。


 そんな私たちがお互いに想いあっている。

 キャラ変は成功したんじゃないだろうか。

 そんな風に思う麗らかな午後だった。



おわり

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