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ヒーローを追いかけまわすタイプの悪役令嬢に転生してしまったけどキャラ変したいです  作者: 園内かな
それから

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1.


 三年後。

 私はとある条約締結の場に同席していた。

 私の病院開設の事業がいよいよ、という段階で三つの商会が共同出資する条件がようやく決まったのだ。


 その三つとは、病院の根幹システムや機材などを担当するサンポウ商会。そして経理などお金周りの担当をするウォード商会。最後に、薬剤を担当するリーシャ商会。

 この三つの商会が共同事業として総合病院に関わるっていうんで、王国内では病院が作られる前から結構な評判になってる。


 私は調印式だけ同席して、その後の事業発表は皆にお任せする予定よ。

 調印式は、ウォード商会が持っているホテルで行われるので、エスコートをアランさまにお願いして一緒に参加した。


 結婚してからアランさまはとても過保護で、今日も完璧なエスコートの跡、調印式の部屋に入るとすぐに座るように椅子を引いてくれた。部屋はとても広く、いくつもテーブルがあって椅子も無限にある。

 私も甘えて座らせてもらう。既に部屋に入っていたロナルドが一番に挨拶に来てくれた。


「エリザベスさま、おめでとうございます」

「こちらこそ、おめでとうよ。これから大変と思うけれど、頑張ってね」

「いえいえ、私も部下に任せてのんびりやっていきますよ」

「実際に病院が始まると、試行錯誤で運営していかなきゃいけないと思うから大変よ」

「そうですねえ。でもこれが最初の病院で、後はずっと続いていく歴史的な事業だと言われたら、そりゃやりますよ」

「うふふ」


 その次に来てくれたのは、リーシャオだった。


「まさかまたMRみたいなことをするとはな。今回は立場が悪くないが」

「あら、前は悪かったの?」

「悪かったなんてもんじゃねぇ、どいつもこいつも人の足元見やがって……!」


 これはまた、面白リーシャオになるやつだ。

 私はクスッと笑って言った。


「今度また、詳しく教えて」

「そうだ、他にも話があるんだ。またな」


 そして最後に来てくれたのはウォード商会のハーバート翁だ。立身出世の人で、裸一貫から商売を成功させ巨大商会を築き上げた、伝説のような方だ。

 高齢なことから、あまり人には会わないようにしているらしいので、私も今日が初対面だった。お年寄りだけれど、エネルギッシュでかくしゃくとした大柄な男性だった。杖をついて歩いてきてくれるから、立ち上がろうとすると制止された。


「初めまして、ハーバート。わざわざ来てくださってありがとうございます」

「エリザベスさま、一度お会いしたいと楽しみにしておりました」

「まあ、ふふ。銀行経営のノウハウを活かして、病院のこともやって頂けるのはありがたいわ」


 私とハーバート翁が挨拶を交わすのを、ロナルドとリーシャオが聞いている。

 そろそろ調印式の時間だ、という時にハーバート翁が言った。


「実は、私の孫がエリザベスさまにインタビューをしたいと言っていましてなあ」

「インタビュー?」

「はい。魔道具の業界新聞で勤めていて、普段は魔道具に夢中で他には何も目を向けない、困った孫息子なんですがねえ。エリザベスさまと共同事業をすると聞くと、会う時は同席させてほしい、インタビューをしたいと何度も懇願されました」

「あ~……」


 何かの業界新聞の、コラムに私の記事が載っていたっていうのは聞いたことがある。結構前で、まだ私の悪評が高かった時。それでも中立の記事を載せてくれてたらしいって。

 それって、ひょっとしてハーバート翁のお孫さんが書いてたってこと?

 そんなことを思い出していると、ハーバート翁は私が断る方向で居ると思ったらしい。


「無理にとは言いませんが、普段は我儘の一つも言わずに、私に便利な魔道具を勧めてくる可愛い孫なのです」


 魔道具オタクの人っぽい。まあ、ハーバート翁の孫だしそんなおかしな人でもないだろう。

 私は頷いて請け負った。


「構いませんよ、お受けしましょう」

「おぉ。ありがとうございます。では、ネイサンをここに」


 ウォード商会のしごできっぽい男性従業員がサッと動いて別の部屋に移動する。そしてすぐ戻ってきて、眼鏡の若い男性を連れてきた。ひょろっとして、頼りなさそうだけれどきっとこの人はオタクだ~。

 魔道具オタクだからハーバート翁の商会に入るでもなく、好きなことをしてるから魔道具の新聞とかいうニッチな世界に行ったんでしょう。

 孫息子と思われる彼は、はにかんで挨拶をした。


「初めまして。ネイサンと申します」


 すると、ずっと私の傍に立っていたアランさまが口を開いた。


「貴方を見かけたことがある。スマホの打ち上げの祝宴でだ」

「えっ」


 驚く私に、ネイサンは頭をかいてもごもご言った。


「あぁ~。挨拶もせず、直接話もしてないのに、覚えてらっしゃるんですね。あの時は知り合いの職人に、どうしても連れて行ってほしいから家族ということにしてもらって行きました……」

「エリザベスに近付こうというそぶりを見せていたので、覚えていた。身分を偽装して入っていたのか」


 すごっ。アランさま、記憶力良すぎない?

 先週の夕飯だって思い出せないのに、何年も前の人の顔なんて覚えられるわけないよ~。


「流石、アランさまは記憶力も良いんですね」

「興味のあることだけだよ」

「まあ、うふふ」


 私が照れ笑いしている間にも、アランさまはテキパキ仕切ってくれる。


「エリザベスの体調のこともある。インタビューは手短にしてくれ。これからすぐやるのか?」

「はい、出来れば」

「では、契約締結の後、記者会見が終わるまでの時間で。そういえば、貴方は記者会見には参加しなくて良いのか」

「そこは別の記者が行っているので大丈夫です」

「分かった」


 というわけで、三つの商会が協力するという契約の調印式を行った後、私はすぐにインタビューに応じたのだった。



***


 とある魔道具の業界新聞に、とある魔術伯夫人の特別インタビューが掲載された。

 夫人がインタビューを受けたのは初めてのことなので、新聞は完売が続出。後日再販されるという創刊以来の出来事となった。



-------------


 次々と新しい魔道具を製作し、世に送り出すヒットメーカー。実業家であり、元公爵家の令嬢であり、間もなく母にもなるエリザベス・バーテルス魔術伯夫人。しかし本人は、気負うところのない自然体の人物だった。


――先ず、総合病院設立、おめでとうございます。

「ありがとうございます。思った以上に早く設立出来たのは良かったわ」


――病院内では、どのような魔道具が設置されるのでしょうか。

「身体の内部を診察する為の道具が多いわ。でも私は、あまり詳しくないの。兄とその夫人の、ミリセントが色々考えてくれたのよ」


――これまで、たくさんの魔道具を開発されてきましたが、どのように思いつくことが多いですか

「したいことを思いついたら、こんなことが出来ないかしらって誰かに尋ねるの。最終的には、工房の親方に丸投げね」


――工房の職人たちの士気も高いようですが、それをまとめる秘訣はなんでしょうか。

「秘訣、うーん。やっぱり、道具を作るのは職人さんだから任せてしまうことと、何か困ったことがあれば解決する為に、他の人に聞きに行くとか、実際に動くことかしら」


――今回、三つの商会が共同事業に携わるのも、そのような意識からでしょうか。

「それは、色んな人を巻き込んだ方が病院事業は上手くいくんじゃないかって思ったからなの」


――色んな人とは?

「先ず、王太子殿下と王太子妃のセリーヌさまね。名誉総裁にセリーヌさまになって頂いたの。これからの医学研究と、医療に携わる人たちを養成するのには王族の方々にも援助して頂かなきゃ」


――初めての試みですが、すんなり受けて頂けたのでしょうか。

「それは、折を見て頼んだのよ。王太子殿下のご子息が先日、お生まれになったでしょう。そのお祝いの時に、この子が健やかに育つ為には病院組織も医療関係者も必要だから、作っていきましょうって」


――エリザベスさまも間もなく出産ですが。

「ええ。勿論、このシュルマン総合病院で産むつもりよ」


――病院は身分と富のある者しか行けない場所だという批判もありますが。

「一つ目の病院だから、そういう部分もあるかもしれないわ。これからたくさん作っていって、地方でも王都と同じ治療を受けられるようにすることが目標なの。それとは別に、貧民救済施設として無料の医療施設である養生所を作る予定よ」


――次はどんな魔道具を開発したいと考えていますか。

「開発したいのは、本当にたくさんあるの。ありすぎて、手が回らないくらい。親方にも職人たちにも、もっと色々なものを創りたいって言われるんだけれど。作った後、実際に運営したり販売したりすることも考えなきゃいけないじゃない。それで次々と色んな人にお仕事を任せることになってしまうのよね」


――例えば、どんなものでしょう。

「以前、魔道具の車椅子を作ってもらったことがあるの。魔力で操作する、足の不自由な人が移動出来る道具よ。それを元に、魔道車を創れないかって聞いたらうちの天才職人がすぐ試作品を作ったのよね。そこから、じゃあ魔道二輪車も出来るんじゃ? って試作品を作っていたら、ロイ魔術伯が興味を示してきて。今ではうちの工房に入り浸ってテストパイロットになってるわ」


――素晴らしい采配ですね。

「私は本当に、何もしていないのよ。作ってほしいものをお願いしたら、出来上がってくるのだもの。そして出来上がったものについても、身重の身体じゃ動けないから、商会だったり他の方にお願いして何とかやってもらっているの」


――本日はありがとうございました。

「ええ、ありがとう」



 高い身分と、次々と実績を積む才能にも関わらず、エリザベス夫人は常に謙虚で前向きな人物であった。これからの魔道具開発にも期待が寄せられる。


次回最終回

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