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ヒーローを追いかけまわすタイプの悪役令嬢に転生してしまったけどキャラ変したいです  作者: 園内かな
告発と断罪

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2.


 アランさまの告発に対して、ソフィアはまだぶりっ子と弱々しいフリをやめない。

 これだけ証拠があるのにだ。ひょっとして、こっちが間違っているのかと揺さぶられる。


「そんな! アランお兄さま、信じてください! 本当に、違うんです」


 でも、アランさまはとっても冷静だった。流石だわ。


「ついでに、エリザベスに対する殺人未遂も告発したい。ソフィア嬢は風の魔法で突風を起こし窓を突然開けると同時に、身体を操る魔法でエリザベスを階段から落とした。幸い、エリザベスは無事だったが少しでも打ちどころが悪かったら死んでいただろう」

「あの時のことも、わざとだったのね。やっぱり……」


 するとランベールが疑問を挟んだ。


「その動機は何だ? 監禁と殺人未遂など、支離滅裂に見えるが」


 それには私が答えた。


「その動機は、ズバリ、アランさまを手に入れることね」

「しかし五年前はほんの子供だろう。たかだか恋愛沙汰の、子供の想いで人身売買と監禁までするか?」


 ランベールの疑問に、アランさまも眉間に皺を寄せ納得は出来ない様子を見せる。


「普通はそこまでしないでしょう。ですが、今までの事柄の全てがそれに収束する」


 私も口添えした。


「そうよ。ゴシップ記事で、私は下げられ彼女は純愛みたいに書かれたりしたのも、扉に呪いをかけられたから犯人は私とか冤罪をかけられたりしたのも、全部アランさまを手に入れる為でしょう。私を追い落としたくて仕方なかったみたいね」

「それが一番辻褄が合う、つまりは動機ということか。そのほう、申し開きはあるか」


 ランベールがソフィアに問いかける。

 すると、彼女は私を憎しみの瞳で睨みつけた。


「何故、貴女が選ばれるっていうの。アランお兄さまは、私のものなのに! 今すぐ身を引きなさいよ」


 多分、魔力を封じる手かせが無かったら、私はソフィアに呪い殺されていたかもしれない。それくらいの気迫が感じられた。

 けれど、私だって負けられない。堂々と胸を張って宣言した。


「そんな姑息な手ばかり使って、ちゃんとアランさまに気持ちを伝えなかったからこうなるのよ。私ははっきり、告白したもの。そして、受け入れてもらったの」

「きっと卑怯で姑息な手を使って、アランお兄さまの気をひいたに違いないわ。アランお兄さま、お願いよ。昔のお兄さまに戻って!」


 すると、アランさまは冷たい瞳でソフィアを見下ろした。


「魔力を目当てに子供を監禁して利用するなど、私がこの世で一番嫌悪するものだ。貴女を軽蔑する。幼い私を同じような目に遭わせた犯人そのものではないか」

「アランお兄さま! お願い、私を守って。愛しているのよ……」

「私が愛するのは、エリザベスだけだ」

「そんな! お兄さま!」


 アランさまがきっぱり言ったのに、ソフィアはまだ諦めない。

 ランベールが無表情に指示した。


「生憎、公国の犯罪を我が国で裁くことは出来ない。容疑者たちは公国へと移送する。衛兵よ、この者たちの身柄をヴァランシ公国へと移すように」

「ハッ!」


 連れて行かれる間も、ソフィアとバルバラは私を憎悪の瞳で睨みつけていた。

 でも、二人が犯罪者として裁かれるならザマアだわ。

 ちゃんと罪を償わして、私とアリスにごめんなさいしてほしいものね。



 画面の向こうでは、アリスが引っ込んでまたセルジュ先生に戻った。


『アラン魔術伯の屋敷内の、他の使用人たちにも順次取り調べに協力してもらう予定です。余罪も全て追及します』

「そうね。もう危険は無いのよね? 皆が無事ならそれで良いわ」

『……はい。王都でお帰りをお待ちしております。それでは、失礼いたします』


 一瞬の間が気になったけれど、本当に大丈夫かしら。まだ危険があるのかしら?

 皆には無理しないでほしいわ。

 そう思っているうちに、映像は切れた。

 ようやく一件落着し、ランベールが皆に言う。


「朝食前に騒がせたな。ゆっくり食事を楽しんでくれ」


 ふ~、やれやれ。私も朝ごはんにしようっと。

 そう思っているとアランさまが苦々しく口を開いた。


「ロイめ、いつの間にか姿を消しているな」

「え、あら。そういえば」

「今回の件で色々、暗躍していた筈だが。しかし証拠を残すような真似もしないか。厄介だな。排除しておくか……」


 小さな声で呟くアランさまに、不穏なものを感じた。


「あの、アランさま、危ないことはしないでくださいね」

「勿論だ、エリザベス。しかし、放っておくと危ない人物に釘を刺しておくことも必要なんだ」

「釘を刺すより、普通にお話しした方が良いと思いますよ。あの方はアランさまが大好きで、私に取られて悔しいみたいですから」

「……気持ちの悪いことを言わないでくれ、エリザベス」


 本当なんだけれど、あんまり言うとミリセントみたいに様子がおかしな感じになるかもしれないので控えておいた。


***


 朝食後、ランベールに呼び出されてアランさまと一緒に特別室に向かった。普通に王宮の執務室くらいの部屋が用意されていて、流石王族って感心したわ。

 そこにはセリーヌ姫と公国のお役人たちも居て、ソフィアの処遇をどうするかって話をアランさまとしていた。

 私が口を出すのも違うなと思って黙って聞いていた。


 結局、ソフィアたちは王国に出禁処分。今後、こっちには入国させないようにするみたい。

 そして、公国では侯爵位のおうちを将来継ぐ予定になっていたけれど、その資格も失うことになるだろうと聞いた。

 ソフィアが言う。


「正直、信じられないわ。あんなにか弱くて純真そうな令嬢が、子供の頃から計画的に人を害していたなんて」

「人は見かけに寄らないってことね。でも、証拠を度々残してくれて助かったわ。これで計画も完璧だったら、追放も出来なかったもの」


 私がやれやれといった雰囲気を出すと、ランベールが意地の悪い顔をした。


「ところでアランはどのように責任を取るつもりだ。貴様が後見人をしていたのだろう。もう少し屋敷内に目を配っていれば、哀れな少女は監禁されずに済んだかもしれない。監督不行き届きだ」


 なんでそんな、アランさまの責任になっちゃうの?!

 酷いこと言わないでほしいわ!

 私がキーっと反論しそうになるのをアランさまは優しく制し、冷静にランベールに向き合った。


「そう言われると思い、実績を作ってきました」

「実績とは?」


 すると、アランさまは驚くことを口にしたのだ。


「欲望の魔神を討伐した」

「えーっ!」


 思わず大きな声を出してしまう。

 欲望の魔神って、あれよね。リーシャオとミリセントが言っていた、アランさまを魔王にするっていう災いの神よね?

 だったら、もうアランさまが魔王にある可能性はない?


 色々聞きたいけど、今はランベールとセリーヌ姫もいる。後で聞こう。

 そのランベールも、流石にびっくりしたようだ。


「欲望の魔神だと? まさか!」

「本当だ。魔神の宝玉も角も、既に魔術師団長に提出済みだ。討伐は昨日完了し、そのまま此処に来たから報告書は今朝に出しただけで、まだ口頭での報告はしていない」


 その言葉に、私も思い当たる。


「あっ! 朝食の前に仕事があるって言ってたのって……」

「そうだよ、エリザベス。あの後、部屋に戻って魔神についての報告書を書いて提出した」


 その言葉に、ランベールはイライラとした様子で尖った声を出した。


「エリーの部屋に行く前に、先に報告するべきだろう。魔神だぞ! 神話級の厄災討伐を何だと思っているんだ」

「今こうやって報告する方が、ソフィアの件がうやむやになるでしょう」

「流石アランさま。よく分かっていらっしゃるわ」

「エリーは黙ってろ……!」


 ランベールのその言葉に、何故かセリーヌ姫が反応して「うふふ」と楽しそうに笑みを漏らした。

 私は小首を傾げて尋ねる。


「セリーヌさま、どうかなさいましたか」

「ふふっ。いいえ、何でもないわ。さて、私もお父さまに報告しなければいけないから戻るわ。そのまま王都に帰ります。エリザベス、またお話しましょうね」

「はい! よろしくお願いいたします……」


 セリーヌ姫をモデルに、ランベールっぽい王子とのラブロマンスを書いたことは、もうバレていると思う。そのことに悪感情は無さそうだけど、後から仕返しされなきゃいいな~。


「それでは皆さま、ごきげんよう」


 優雅な一礼をして、セリーヌ姫は退室していった。

 ランベールがアランさまに命じる。


「後日、貴族院でも報告しろ。それまでに冒険譚のように耳障りの良い物語をまとめておけ」

「分かりました」


 それで私たちもお役御免で帰れることになった。



 ランベールの執務室を出ると、ステイシーが待っていて私に深々と頭を下げた。


「エリさま、本当に申し訳ございませんでした」

「そんなに謝らなくていいわよ。本当に私の姿だと思って証言しただけなんでしょうし。でも、どうしてそれをロイに伝えたの?」


 ステイシーは頭を上げて、戸惑った様子を見せた。


「それが。ロイ魔術伯に質問されて応えたのは確かなのですが、その後、何故かそれを証言しなくてはいけないという義務感にかられたのです。そうしなければ落ち着かず、居ても立っても居られない気持ちでした」

「それって……」

「それも精神感応の一種だろう」


 私の疑惑に、アランさまが応じる。

 ステイシーは目を見開いて、頬を引き攣らせた。


「そんな。何も感じませんでした。恐ろしい……」

「ステイシーは私の関係者と思われているから、色々巻き込まれるのかもね。ステイシーが戻って来れるように、お母さまに頼んであげる」


 すると、ステイシーは少し逡巡を見せた後、それでも首を横に振った。


「今戻っても、エリさまのお側でお役に立てる能力は無いですから。もう少し、王宮で色々教わって、エリさまに仕えられるようになるまで頑張ります」

「まぁ~。偉いわ、ステイシー。成長しているのね」


 若者の成長を見守る先輩目線よ、完全に。

 私は腕組みをして優しい瞳でステイシーを見下ろし、うんうんと頷いたのだった。



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