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ヒーローを追いかけまわすタイプの悪役令嬢に転生してしまったけどキャラ変したいです  作者: 園内かな
激情

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35/97

1.


 先日は、優しくエスコートしてもらって散策をしながら話していた敷地の奥を、今日はぐいぐい手を引っ張られる。

 足がもつれそうになりながら、私は必死についていった。


「アランさま、どうかされましたか?」


 足の長さが違うので、歩幅も違う。そんなに広い敷地でもないが、息が上がりそうになる。

 後ろからマドレーヌが声を掛けて、アランさまを諫めてくれた。


「アランさま、エリザベスさまに無体を働かないでください」

「話をするだけだ。姿が見える範囲に居るからその辺りに居ろ」


 マドレーヌがこちらを見るので、私は引きずられながら言った。


「そこに居て。二人で話をしたいの」


 ようやく到着したところで、アランさまは私にキツい視線を向けた。


「被験者と距離が近すぎる。いつもあんなにベタベタとしているのか」

「クリスとジェシカのこと? 懐いていて可愛いでしょう」

「貴女は、私とソフィアのことは穿った見方をして疑うのに、彼らには平気で触れるのか。私はあんな風にソフィアと触れあったことなど一度もない」

「それは、はい……」

「それでも、新聞に記事を書きたてられる程だ。あの様子を見たら、貴女はもっと酷いことを書かれるだろう」

「あっ、そうですね。気付きませんでした。注意してくださってありがとうございます。これからは気を付けます」


 つい甘えられて可愛いから撫でくり回してしまったけれど、そう言われたらそうだ。閉じられた空間では、皆が私に優しいけれど、世間は私に悪意を持っている。

 私が悪く書かれて、皆まで記事になってしまったら気の毒だ。

 私が頭を下げて礼をすると、アランさまはくっと顔を歪めた。


「違う。そうではない。いや、それもあるが。彼らとあんな風に触れあってるのを見て、私はとても嫌な気持ちになったんだ」

「えっ、ひょっとして、嫉妬ですか? 子供たちなのに」

「もう大人だ。少なくとも、ソフィアと私が暮らし始めた時よりはずっと」


 ソフィア、ソフィアってちょっとムカっとくる。

 しかし、彼は何とも思っていないソフィアと噂を立てられている。それなのに私が呑気に子供たちときゃっきゃウフフとしてたら彼もムカついたのかもしれない。

 私にも反省すべき点はあるだろう。


「アランさま、私の気持ちはアランさまだけにあります。子供たちは懐いて可愛いから、つい甘やかしてしまいました」

「それは、彼らに貴女への好意があるからだろう。本当に想いを寄せられたらどうするんだ、あの少年に」


 アランさまって純真だなあってちょっと思ってフフッと笑ってしまった。

 彼がムッとなったので、私は慌てて弁明する。


「私、子供だからって純真だとか正直だとは思っていませんの」

「は? どういう意味か分からない。彼らには、貴女に対して本当に好意がある」

「ふふ、アランさま。私、今回魔力が不安定な子供を集めるにあたって、条件を出したんです。それは、経済的に困窮している家庭の子供であること。こちらが賃金を払っている限り、優位に検査を出来るからです」

「貧しい子なら、何より貴女に好意を抱くだろう」


 その言葉に頷いた。


「そうです。私はまず、あの子たちの衣食住を整えました。食うや食わずの生活をしていた家族ごと、温かく広い家に住まわせ、美味しい食事を食べさせ、清潔で新しい衣服を着せたんです。それから、この検査の依頼主として姿を現しました。身分も財産も、何もかもを持っている公爵令嬢の私です。どうなるか、分かりますでしょう」

「……心酔、もしくは崇拝するだろうな」

「今の彼らは、私に見捨てられたらもう生きてはいけないと思い込んでいる状態です。だから、必死で私に好意を伝え、媚を売っている。でも、そんなことをしなくても生きていけると教えてあげるのが次の目標です」

「どうするつもりだ?」


 彼の問いかけに、私は考えていたことを披露した。


「一度世話をしたからには、最後まで面倒を見ます。私がこれから彼らに与えるのは、教育や礼儀作法。つまり、働いて暮らしていくにはどうすれば良いかという分野です」


 この回答に、アランさまはハッとしたようだった。


「独り立ちさせる為の、指南か」

「はい。何がしたいか、どのように暮らしていきたいか、まだ本人たちも分かっていない段階です。魔法の能力を伸ばしてあげたいですが、全く違う分野に挑戦したいかもしれない。これから探していって、背中を押してあげます。成人する頃には、きっと独り立ち出来るでしょう」


 アランさまは深々と溜息を吐いた。


「後見するというのは、ただ守って庇護して、不自由ない暮らしをさせておけば良いことだと思っていた。貴女の考えは素晴らしいものだ。全く、エリザベスには敵わない」

「ふふ、ありがとうございます。私、あの子たちに好意を伝えられる度に、嬉しいし可愛いけれど、物悲しい気持ちにもなりますのよ。そんなことを言わなくても、ちゃんと世話はするのに、って。苦しい生活を助けてもらった子供は、その大人に傾倒するのでしょうね。哀れなことです」

「あぁ、そうかもしれない。私も、分かる。そして、私は仕事にかまけて、物質的に満たすばかりで屋敷やソフィアの教育を放置してしまったようだ」


 おぉ。私に触発されて、アランさまもソフィアの教育を考え始めたようだ。


「先ずは、ソフィアさんの体調を良くすることですわ。この計測が上手く言って、魔力量を調整出来るようになれば、その後の独り立ちの準備も容易いでしょう。体調が良くなったからって急に放り出すのも不憫ですから」

「その通りだ。エリザベス、本当にありがとう。実は、今から王都を離れなければいけないんだ」

「えっ!」


 突然、遠くに行くような話をされて驚く。しかし、彼は安心させるように私の頭を撫でてくれた。


「王国の最南端まで行かなければいけなくなった。しかし、この遠征が終われば仕事量も調整出来る。新しい屋敷を見に行こう」

「はい! 連絡、出来たらしてくださいね」

「勿論だ」


 そう言うと、アランさまは額に口付けをくれた。

 あーーー! おでこにちゅーしてもらっちゃった!

 一気にポーっとなる私に、彼は優しい声で伝えてくれる。


「遠征の前に顔を見に来れて良かった。エリザベスの考えを知ることも出来たしな。遠征が終わって帰るのを、待っていてくれ」

「はい……」


 ボーっとしたまま、帰りはエスコートをしてもらってゆっくり表まで帰る。

 最後に抱擁までしてもらっちゃって、アランさまが馬車で去っていくのを見送った。

 気付けば、今日は何の検査もしていないうちに結構な時間が経っている。


 私は修練堂の中に入っていくと、なんだかみんなが気まずそうに黙っていた。

 アランさまと堂々といちゃついちゃったから、みんな目のやり場に困っていたのかもしれない。

 今日の数値はどうか尋ねようかと思うと、先にジェシカが口を開いた。


「エリザベスさま。私、今日は魔力が不安定だから、放出はやめておきます」

「そうね。バタバタしてしまったし、今日はもうやめておきましょう」

「……僕も、今はちょっと集中出来なさそうです。今日はやめます」

「ええ、無理はしないで」


 言いながら、珍しいなと感じる。クリスはいつも魔術行使をするところを見て欲しがるのだ。そろそろ魔力量が少なくなっていても、見て見て~と構ってほしそうにするのに。

 でも、こういう日もあるだろう。私は提案した。


「では、雨も降りそうだし今日はもう解散しましょう」

「はい。エリザベスさま、お見送りします」

「エリザベスさま、馬車までエスコートさせてください」

「まあ、ふふ。クリス、大丈夫よ。エスコート無しでも歩けるわ」


 やっぱり、彼はアランさまがエスコートしてくれていたのを見ていたのだろう。それで提案してくれたのだろうが、本当に健気だ。

 そんなことをしなくても、私は機嫌を損ねないし大丈夫だよって教えてあげたい。今はまだ、口で言っても理解出来ないだろうけれど。

 馬車に向かっていると、ぽつぽつと小雨が降って来た。


「皆も、早めに帰るのよ」

「はい! 今日もありがとうございました、エリザベスさま」

「エリザベスさま、ごきげんよう」


 馬車の中にマドレーヌと二人で乗り込み、屋敷に戻って行く。


「ねえマドレーヌ、今日はリーシャ商会のライナス会長と少しは打ち解けられたと思わない?」

「ハ。しかし、気になったのはあの護衛です。苛立ちを隠しもせず、あんなに大きな態度の護衛など、騎士ならば考えられません」

「異国の方だから、そういうのは気にしない風習なのかしらね。でもその後、アランさまとお会い出来たのは嬉しかったわ~」

「ハ……」


 デコちゅーされちゃったもんね。帰りを待っていてくれって言われたし。アランさまが帰ってきたら、新しいお屋敷をもう決めてしまって~、と考えているとスマホから着信があった。

 私が登録している人たちには、通話はよっぽどのことがない限りしないでほしいと頼んである。普段の連絡は文字メッセージのみだ。

 誰からだろう、と見てみればメルヴィス工房の親方からだった。

 一体何かしら? 電話に出てみると、親方の慌てた声がしている。


「お嬢さま! 大変だ!」

「どうしたの、親方さん」

「クリスとジェシカが、魔法の打ち合いをしてる!」

「えっ……」



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