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ヒーローを追いかけまわすタイプの悪役令嬢に転生してしまったけどキャラ変したいです  作者: 園内かな
被験者たち

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2.


 テストが進むにつれ、私はクリスとジェシカと仲良くなった。

 というか、二人がとても私に懐いてくれて、すごく可愛い~。可愛くて仕方がない。もし私に妹と弟が居たらこんな感じで可愛がるかもしれない。ヴィクトルお兄さまが私を猫可愛がりする気持ちが少し分かってしまった。


 二人とも、私の姿を見つけるとパッと顔を輝かせ走って寄ってきてくれる。

 話している最中もニコニコとしてくれる。

 例え私が雇い主だから愛想よくして営業をかけているとしても、とっても嬉しい。

 二人はしきりに、これからも私の傍に居る為にはどうすれば良いかという話を聞いてきた。


「エリザベスさまの侍女になることは出来ないんですか」


 ジェシカの言葉に、少し考えてから答える。


「今の私の侍女というのは、公爵家に務めているということなの。特に専属の侍女は居ないし、交代で仕えてもらっているけれど、私は公爵家を出るつもりだから誰も連れて行くつもりはないわね」

「では、アランさまのお屋敷に雇われたら良いですか?」

「あー……、それは……、ちょっと、まだ分からないわ……」


 言葉を濁しまくってしまう。

 アランさまのお屋敷に住むつもりはない。新しい家も探している。

 でもアランさまが多忙すぎて新居探しも止まっているし、婚約の話もちっとも進まない。父も兄も、まだ反対しているようで最近は顔も合わせない。母は、そこまで強硬に反対はしていないけれど様子見状態だ。

 まあ、婚約の話はこのスマホ活動量計の成功で何とか進めたい。

 クリスも質問する。


「僕も、エリザベスさまに直接雇用されたいです。何でもします!」

「クリスは、やっぱり魔力量が多いし魔術も上手いようだから、そちらの道に進むと良いんじゃないかしら。魔術を学べる魔法学園があるらしいし、行ってみない?」

「でも、エリザベスさまのお傍に居たいです……」

「私の傍に居るにも、知恵と実力は必要よ。有能な人じゃないと、雇わないわ」

「はい! 有能になります!」

「じゃあ学園のこと、前向きに考えておいて。学費は、奨学金なんかで考えたら良いかしらね。無利子で貸し付けるけど、将来稼げるようになったら返してもらう制度よ」

「分からないけど、頑張ります!」


 奨学金、この世界では無いのかな? 篤志家が寄付って形だったらあるかもしれない。

 でも、いいよいいよで全部あげるのはちょっと違う気がする。

 タダだと悪いものが寄ってきそうだし、将来返却しなければという形で勉学を頑張ってもらうのが良いだろう。

 私はジェシカにも訊ねた。


「貴女も魔法学園で学ぶ? 知恵と技術は、将来きっと役立つわよ」

「私は、あまり魔術が好きじゃないので、使いたくないんです……」


 あっ、これは盲点だった。

 使えるからといって、好きとは限らないのだ。

 それに、魔術は便利だと私は思っているけれど、今の貴族階級だと使うのは忌避されている。


「そうね、無理には勧めないわ。やりたいことをするのが一番だもの。今すぐは、将来何をしたいかなんて決められないでしょうしゆっくり考えて」

「私、やっぱりエリザベスさまの侍女になりたいです! 公爵家で雇って頂けないでしょうか」

「口利きはしても、いいけれど……、公爵家の侍女って身分も必要だし審査も厳しいから、どうかしらねぇ。侍女になる為の行儀作法をどこかで先に身に着ける方がいいかも……」

「お願いします、エリザベスさまのお傍に居たいんです」

「………………」


 まあ、私が『この子を専属の侍女にするわ』って言っちゃえばそれは通るだろう。

 しかしそれだとヤバ侍女になるのではないか。ステイシーの悪夢がよみがえる。

 アランさまの屋敷だって、能力が無いのにクレモン夫人が家政婦長の座に付いているから、荒れているのだ。彼女はソフィアの乳母だったから、完全なる縁故採用。後々困ったことになる確率が高い、縁故採用はお断りしたい。

 私がたっぷり無言になってしまうと、クリスが注意する。


「エリザベスさまを困らせるな。お前じゃ侍女になれないって言われてるの、気付けよ」

「……貴方は黙って魔法学園にさっさと行くことね」


 なんだか険悪な雰囲気になってしまった。


「ジェシカ、大丈夫よ。私の傍に居ることにこだわらなくても、やりたいことを見つけて働けるよう、援助してあげるから。先ずは何をしたいか、どんな仕事が向いているか、ね。ゆっくり探せばいいわ」

「エリザベスさま……」


 ジェシカが瞳をうるうるさせて、私にそっと寄り添った。

 可愛くて、ついよしよしと頭を撫でてしまう。


「エリザベスさま! 僕も!」

「まあ、クリスまで。甘えん坊ね」


 頭をずいっと差し出してくる彼は、まだ子供っぽい風貌で身長もそれほど高くない。

 でももう少しすると背が伸びて手が届かなくなるんだろうなとは感じる。

 両手に花、ならぬ両手に子供でそれぞれよしよししていると、マドレーヌの咳払い攻撃が始まった。


「エヘン! 二人とも、貴婦人に近付かないように」

「そうねえ。もうすぐ大人になってしまえば、こんな風には出来ないものね。でも、今だけ、ね」

「エリザベスさま、嬉しい。私、ずっとお傍に居たいです」

「エリザベスさま! 僕はエリザベスさまが大好きです!」

「二人とも、ありがとうね」


 子供とはいえ、生活がかかってくるとすごい媚売ってくるんだなあと思う。

 でもそれは、貧しい生活環境やこの国の身分制度のせいであって、彼らは何も悪くない。

 私はそんな二人を可愛いと思いつつ、少しの物悲しさを感じるのだった。



 その日は曇天で、今にも降り出しそうな空模様だった。

 私はいつものように修練堂に向かい、門の前でマドレーヌのエスコートで馬車から降りた。


「これはこれは、エリザベスお嬢さま。お久しぶりにお会い出来、とても光栄でございます」

「あっ、ライナスじゃないの。どうしてここへ……」


 そこに立っていたのは、リーシャ商会のライナスだった。背後には、いつもの黒衣の騎士もいる。東洋系の顔立ちなので、ついつい親しみを感じるのだが彼からは拒絶の雰囲気しかない。いつも厳しい顔でこちらを睨んでいる。


 そういえば最近は、ライナスからのコンタクトを無視していたなと思い出す。

 リーシャ商会の庭園へのお誘いや、商会主催の夜会へのご招待とか、お見せしたい商品があるとか、色々誘っては貰っていた。

 でも他に優先するものがあるし、特に欲しいものも無いし、と後回しにしていた。


「たまたま、通りかかったところでございます」


 いや絶対嘘だろ、待ち伏せしてたくせに。

 と指摘するのも野暮だ。


「そうだったの、偶然ね。これから、予定が立て込んでいるから失礼するわ」

「それは、サンポウ商会の社員が試験のせいで心臓発作を起こした一件と、関係あるんでしょうか」

「……! 何故それを……」


 あのおじさん、リンゼイ氏はあの後、病院に行ったものの大したことはなくて、検査しても経過観察となったと報告を受けていた。今まで通り、薬を持ち歩きながら無理はせず生活する、それしか方法がないらしい。

 こちらとしても、気を付けてとしか言いようが無くてそのままにしていた。

 だがそれが噂になっているとは。

 ライナスは妖艶ともいえる色気を、この道端で惜しげもなく振りまく。


「酷い噂ですと、お嬢さまが厳しい実験をさせたせいで、心臓発作を起こしたとか。勿論、そんなことは無いと思いますが」

「そうね、それは事実無根よ」

「ただ、お伺いしたいのは、医療の分野の魔道具でしたら私どもにお任せ頂けるというお話だった筈」

「……そんな話、していたかしら」

「ここで立ち話でもなんですから、詳しい話は私どもの店舗ではいかがでしょう。すぐ近くにございます」

「うーん、忙しいので、この中の事務所でいいかしら」


 押し負けてしまった。

 でも、ここでまた後日とか言ったら更に面倒くさいことになりそうで。とりあえず、説明すべきことは今のうちにしておくと良いだろう。




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