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13-9


 灰色の空の下、20メートルを超える鎧が動きだす。

 腕――長大な鉄骨を幾つも重ねたような質量が持ち上がる。巨大な物体とは思えない挙動。鎧がそのまま動くように滑らかに動くと、窮屈そうに周囲を薙ぎ払う。

 木造の建物は一瞬で瓦礫となり、激しい音を立てて大地に突き刺さる。


「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ」


 アッカが絶叫する。無理もない、目の前の存在が装着していた鎧が突如巨大化し、動き出す。

 それが敵意を持った存在であるなら、驚愕と警戒は生まれる。、


「魔導鎧≪マギウス・ガイ≫、だ」


 ケラウスが静かに言うと、ライカが早口で言葉を続ける。


「魔法使いが使う力で、鎧を自身の魔力によって巨大化させる力なの! あれは幻でもなんでもなくて、本物!!」


 同時に、鎧が腕を振り降ろす。

 ユートには届かないが、大地を抉る。飛び散る石と泥の感触――そして、圧縮された空気の流れが、現実であるとユートに告げる。


(巨大なロボット……いや、違う)


 迫りくる二撃目から逃げながら、観測する。

 脚部には推進器のようなものはない。巨大な物体が、足を上げて動いている。


「鎧そのものが、大きくなっているってことか!」


 ユートは振り返ると、銃弾を放つ。

 ガスショックバレットの衝撃が空気を揺らすが、巨大な鎧は一切動かない。

 再び、巨大な腕が動く。

 大質量が薙ぎ払われると、その衝撃だけでユートは吹き飛ばされそうになる。


「アニキィィィッ!!」


 オートマトンの一機が減速し、ユートの後ろまで下がる。

 四脚を動かしながら胴体を反転させるとシールドを展開。同時に、魔導鎧の腕が振り下ろされる。

 ユートは背中に、圧縮された空気と魔力の波を感じた。反射的に足に力を込めて速度を上げる。


 エネルギーフィールドと腕が接触する。

 巨大な物体から生まれる衝撃を前にしては、エネルギーフィールドでも耐えきれない。

 脚は地面に深々と押し込めれ、鋼の胴体も悲鳴をあげる。

 だが、時間を稼ぐことは出来る。

 それは一分にも満たない時間。だが、ユートたちが魔導鎧の射程から逃れるには十分であった。


 役目を果たした――

 金属が軋む音。そして、バラバラに弾ける音。

 シールド・オートマトンは胴体を大きくひしゃげさせ、地面に叩きつけられると、動きを止めた。


「くそっ、アッカごめん!」

「オレッチだけじゃない、アイツにも!」

「ああっ! 回収したら絶対に直してやるからな!」


 走りながら、ユートは通信を繋ぐ。稼いでもらった時間を無駄には出来ない。


「シーナ、エールを!!」

『分かっています! ユート、発砲許可を!』

「許可する!」


 同時に、ローターの音が空から聞こえてくる。

 ファイターが飛来すると、ガトリング砲が火を放つ。

 だが、その銃弾は空間に浮かび上がった障壁によって完全に防がれる。


(攻撃が、魔力による障壁で防がれる!?)


 魔導鎧は面倒そうに頭部を持ち上げる。鬼の角が円状に飛翔するファイターを指し示す。

 甲冑の奥で、何かが光った。

 魔導鎧は右腕を上げ、拳を握る。次の瞬間、腕が飛翔した。


「ロケットパンチ!?」


 ユートは思わず叫んでいた。記憶の中にある、類似した現象だった。

 まるでロケットブースターをもつように、気化したエーテルを噴き出しながら腕が飛んでいく。


「回避行動開始」


 エールは冷静に動かし、回避をする。

 だが、握りこぶしが開くと、危うく指が接触しかける。


 同時に、残された左腕が飛ばされる。

 左腕は右腕を掴むと、強引に投げ飛ばして軌道を修正する。


「変則的な機動を確認。回避に集中――集中――」


 ファイターユニットの目の前で、飛ばされた拳が、今度は握ってくる。

 仮に、捕まれていたら、ファイターの翼はもぎ取られ、地面に叩きつけらていただろう。

 エールは高度を上げて回避する。さすがに高度が上がると目視が困難になり、攻撃も正確性を失う。


 だが、そうなるとエールにも決定打はない。

 地上に残されたユートは、巨人を睨みつけていた。


 曇天に赤い籠手が飛ぶ。

 ファイターユニットは飛翔しながら回避するが、攻撃を出来る余裕は見えない。

 仮に反撃を出来たとしても、決定打にはならないだろう。


 状況は悪い。

 唯一の幸いとして、オニは空を飛ぶエールとの戦闘に集中し、民家の影に隠れたユートたちを気にしていないことだ。


「ライカ、魔法で援護は出来ない」


 ユートの提案に、ライカは首を横に振る。


「そうしたいけど、マナタイトの起動でいっぱい力を使っちゃったから……」


 ライカが目を閉じると、杖の先に光が集まる。

 だが、それはエーテルとして形にならずに散ってしまう。


「同じく、だ」


 ライカもケラウスも、額に汗を浮かべて消耗していた。

 ユートはマイトを見る。彼は申し訳なさそうに目を伏せる。


「僕の弓じゃ……」


 もっともな事だった。

 ユートは暫し考えると、ポーチを開く。

 中から取り出したのは、ペンダントだ。金色のチェーンの先には、水晶が付いている。


 作戦の前――昨夜、『仕込み』の時にケラウスから手渡されたものだった。


「ケラウスさん、アレをやります」

「……わかった」


 ケラウスはユートの顔を見る。

 やらなければならないこと、を目にした時にする、決意をのみ込んだ少年の顔がある。

 それを変えることは出来ない。ケラウスは静かに頷いた。


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