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13-2


 ワンドガルドの最東端、文字通り世界の果ての崖から黎明の光が立ちのぼる。

 短い眠りから覚めたユートは、その光を眺めていた。


(装備の確認も栄養の補給も終わった、あとは集合するだけだけど……)


 覚醒しきった頭で深く息を吐く。朝の涼しい空気が肌を撫でる。自分の身体が熱くなっていることを感じた。


(やっぱり、どこか気持ちの入り方がおかしいな。

 ワンドガルドに来てから、作戦の途中で遭遇戦に巻き込まれることはあった。

 だけど、本格的な戦闘を織り込んだ作戦は、久しぶりだ)


 腰に装備したリキッドメタルブレードと短銃を確認する。

 使い込まれた鞘を握り、その重さを確かめた時、不思議と落ち着いた。


(戦闘用に遺伝子を調整されて生まれた存在、か……)


 居心地の悪さに、思わず自嘲気味に笑っていた。


『ユート、そろそろ集合の時間です』

「わかった、すぐに行く」


 心に浮かんだ繊細な感情を押し殺し、シーナに返事をして歩き出した。


◆◆◆


 集合場所に設置されたローバーの周辺には、既にライカとケラウスが立っていた。

 他にはドリーとアッカ。そして、シールド・オートマトンたちだ。


 長方形の一メートルほどのボディに、四本の折り畳み式の脚部。マニピュレーターには棒状の発信機が取りつけられている。

 ドリーたちと大きく異なるのは、アイカメラではなくて一眼の大き目の丸いレンズのカメラが取りつけられていること。そして、『自我』を持っていないこと。


「ユートちゃん、この子たちは?」


 見慣れぬ機械を指さし、ライカは聞く。

 ユートは自慢げに口を開く。


「シールド・オートマトンって言って、防御用のフィールドを張って援護してくれるオートマトン――」


 そこで、ふと、オートマトンをどう説明したものかと考える。


(なんか適切な言葉はあるかな)


 ローバーで待機しているドリーを見る。最初に遭遇した時、自分はなんと説明しただろうか、場面を思い出す。


(確か、前にドリーを見た時に使い魔って言ってたな)


 迷っていた時に、ライカからそう言われて肯定した。


(本にも書いてあったけど、地上でオカルト的に使われている用語とほぼ同じ意味だった。なら、通じるかな)


 ユートはアッカとシールド・オートマトンを交互に見る。 


「オートマトンって言う、使い魔みたいなものなんだ。ドリーたちと同じだよ」

「へぇ~、じゃあ、この子たちに頼っても大丈夫なんだね」


 ユートは頷いた。


「うん、ちょっと見てて」


 そう言うと、傍でうろうろしていたアッカを呼び止める。


「アッカ、試運転も兼ねて指示をおねがい」

「合点承知!」


 アッカが合図をすると、シールド・オートマトンの一機が起動する。


「システム起動、エネルギーフィールド展開」


 機械音声が流れると、マニピュレーターから透明なフィルムが展開する。

 そして、そこに電流が流れると、エネルギーフィールドが展開した。


「よし」


 ユートは短銃を引き抜くと、フィールドに狙いを定めて発砲する。

 銃弾は問題なく発射された、だが、フィールドに触れると勢いを失い、地面に落ちる。


「このとおり、銃の弾丸程度なら簡単に弾き返せる」


 シールド・オートマトンはエネルギーフィールドの展開装置を装備した機体である。

 白兵戦時には、その名前の示すように盾として並べて防壁にする。平時には危険区域の閉鎖などに使用される。


「それじゃあ、守ってもらえるんだね!」

「そりゃ当然、ケラウスさんも」


 二人はケラウスを見る。

 しかし、返事はない。


「ん、ああ……」


 ようやく返事をしたが、それは半ば反射のようで、問いの答えになってなかった。


(心ここにあらず、か)


 明らかに、様子がおかしかった。

 それは、昨日も同じだった。


「本当に大丈夫?」

「悪い、まったく、心配かけちゃ世話ないぜ」


 顔に笑みを浮かべるが、それが空元気であることは容易に見て取れた。


「これでも名をもつ魔法使いだ、仕事はキッチリやる。それが大人としての矜持だ」

「……わかった」


 不安を飲み込んで、ユートは頷いた。


『ユート、改めて確認をします』


 同時に、シーナが話を切り替える。


『作戦を確認します。

 作戦に従事するメンバーは、まず、ユート、ケラウス、シーナ』

「うん、間違いないよ!」


 ライカが元気よく答えると、ユートも続く。ケラウスは神妙な顔をして頷いた。


『補助するコマンドはドリーとアッカ。

 ドリーは主にローバーの操縦を担当。アッカはシールド・オートマトンの操作、指揮します』

「おう、任せてくれ!」

「ボクとアッカの得意分野だね」


 コマンドの二機はマニュピレーターを上げて応える。同時に、待機している七機のシールド・オートマトンも整列する。


『エールは既に作戦領域となるクラベ村跡の周辺で待機しています。

 VTOLパックを装備したファイターユニットは主に索敵を担当。ただし、必要であれば発砲も許可する。

 もちろん、その承認はユートにお願いします』

「わかった」

『これより、ユートとオートマトンはローバーに乗り込み作戦領域へ移動。

 第一段階として、先行して任務にあたっている冒険者と合流します』


 今回の作戦は、二段階に分かれる。

 最初に、先行しているメンバーとの合流。

 合流後、村に突入してウォール・マナタイトの再起動。


『それと、二つ追加で』


 シーナが合図をすると、アッカがユートに棒状の機械を手渡した。


『ヒカリゴケの性質を解析して、試作型の魔力計測器を作成しました。こちらも使ってください』

「ありがとう、さっそく使わせてもらう」


 ユートは受け取った計測器をジャケットの胸ポケットにしまう。


『もう一つ、今回の作戦に合わせて翻訳ソフトのアップデートを行いました』

「うん、ちゃんと聞こえてるよ、シーナさん」


 ライカが元気に応える。意志の疎通は問題ないようだった。


『ええ、これでオートマトンおよび我々とも綿密に連携が行えます。

 ユート、仮に齟齬がある場合は、即時訂正をお願いします』

「わかってる」

「それに、作戦だけじゃないね。

 これからは、シーナさんとももっとお話が出来るね」


 その言葉に、思わずユートは口の端を上げる。


『……』

「(照れ)」


 ユートはわざとらしく、ねっとりとした言葉で言った。


『ユート、今のは何ですか?』

「普段の仕返し」

『はぁ~(クソデカ溜息)』


 ユートは笑い、ライカもつられる。

 しかし、ケラウスは渋い顔のままだった。


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