表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/280

12-9


 ずっしりとして、冷たい感触だった。


 ユートは許可を貰うと、ヒナワを手に取る。

 銃身には錆びも汚れもなく、木製の部品についても保護がしっかりと行き届いている。


「なあ――」


 チャチャをいれようとしたクラマは途中で言葉を飲み込むと、ムラマサの顔を見る。お互いに呆れ半分、優しさ半分の顔をしていた。


 暫くして、ユートは二人の視線に気が付くと、気恥ずかしそうに笑う。


「ありがとう、こんな保存状態のいいものは、地球――あー、トクガワの地でも見れないよ」

「こんな飾るぐらいしか価値のないモンでも、意外なところで繋がりがあるもんだな」


 意外、と言うのはユートも同じである。まさか異世界で、自分の世界では残っていないような文明の遺産を見つけるとは思っていなかった。

 銃は戦いの様相を変えた。刀剣や弓矢に比べて短い訓練で、圧倒的な殺傷力を発揮できる銃器は、産業革命以降の大量生産時代において戦場の代名詞とも言える存在となり、宇宙に出た時代でもユートのように常に携帯する人間がいる程である。

 そう、それほどまでに普及したものがある――

 同時に、一つ疑問がユートの中で浮かんだ。 


「……そう言えば、いいかな」

「おう、何でも聞いてくれ」

「銃が存在しているのに、それを使う人は見たことない。

 街を歩いていても帯剣している人は居ても、短銃を携帯している人は見たことがないんだ」


 ザッツのように冒険者でも銃を持っていない。西の街を歩いていた時も、剣を装備している人は居ても、銃は見たことがなかった。 


「そりゃあ、銃は武器としては弱いからだな」

「弱い?」


 思わずユートは声を出してしまう。クラマはその声の方が意外そうだった。


「意思無き力は大地に吸い取られちまうんだよ」

「あっ、そうか」


 意思無き力はワンドガルドの上では急激な減衰が発生する。それはエクステンションマッスルだけではなく、人間が扱う武器でも例外ではない


(俺が使うような銃でも満足な威力は出せないんだから、近世レベルの重火器じゃ使い物にならないのか)


 手に持ったヒナワを改めて確認する。銃身にはライフリングもない。威力も命中精度も未熟な銃器が、さらに減衰されるのだから、とても実用には耐えられなかったのだろう。


「だから、ちょっと工夫が必要なんだよな」


 そう言うと、クラマはユートに近寄るとヒナワを手に取った。


「これ、借りていいか? ちょっと撃ってみたいんだ」

「いいわけねえだろ! 今工房の在庫を持ってくるから待ってろ」


 そりゃそうか、と少女は肩をすくめた。


◆◆◆


 三人は蔵の外に出る。空で燦々と輝く太陽と、涼やかな風は気持ちよく出迎えてくれた。

 ケラウスは工房の中に戻る。すぐに銃を抱えて外に出てきた。

 長い銃身の銃。砲身と引き金以外は木材で出来ている。ヒナワの原型に比べると洗練されていて、弾も元込式になっている。


「ほら、うちの工房の最新式だ。じゃじゃ馬娘が乱暴に扱っても壊れないぞ」

「へいへい、わかりましたよっと」


 クラマは受け取ると壁に向かって構える。


「さて、それじゃあ」


 適当に構える。同時にマナがクラマの周辺に集まると収束する。

 次に、銃身からエーテルの塊が射出された。魔力の弾丸は空間を一直線に進み、工房の外壁に僅かな傷をつける。

 その一息の工程を、クラマは呼吸するかのように自然にやってのけた。


「エーテルを直接射出した?」


 壁にはしっかりと射撃痕が刻まれている。武器としての威力は十分にある。


「おう、その通り。魔法を練るより、純粋にエーテルを直接ぶつけるために使うんだよ。

 エーテルを射出するなら、術者の意思が乗ってるから簡易的な魔法として扱うことが出来る。

 こうやって、魔法の心得がある人間が武器として使うことならできるんだ」

「その割にはライカもクラマも使ってないけど」


 ユートはこれまで何度か魔法使いの戦闘をみてきた。ライカが使っているところは見た頃がないし、クラマも徒手空拳に魔法による加撃を中心としている。


「ああ、そりゃあそうだよ。だって魔法の弾を直接ぶつけるより、風の力を込めて魔法を放った方が早いし強い」

「あ、なるほど」


 言われてみれば、ユートも納得する。

 同じ魔法を使うなら、単純に撃ち出すよりも雷撃の性質を加えた方が早くなるし、ケラウスのように一瞬で発動できる。


「そう言うこった。だいたいの魔法使いが銃じゃなくて、杖を持っているのはそれが理由だな。

 うちの工房でも、補助武器で使う奴くらいしか注文は来ないな」

「なるほど……」


 ユートはようやく納得した。

 ホルスターに刺した銃を手に取ると、暫し考えこむ。


(魔力を銃弾として打ち出す、か)


◆◆◆


 その後、ユートは予定通り工房から追加の依頼を受け取ると、大八車に詰め込んだ。

 帰り際、工房の主と友人の少女は、また会おうと約束する。

 ユートも、それに快く応えるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ