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第二十五話 銃と自由

「出来た!」


 厳かな面持ちで目を見張る友の傍ら、神々しく黄金色に輝くステッキを眼前に翳し、先程までの歪んだ表情とは思えぬ晴れやかな笑みを浮かべていた。


「良かったな」


「うん、本当に。……ありがとう」


「貸しにしとくぞ」


「心に秘めとくよ」


「それで、どうするんだ?」


「何を?」


「名前だ、名前。大切だろ」


「あぁ、そっか、そうだな。これは一見、ギャンブル性があるようなサイコロみたいだし、ランダムランダム、えーとうーん。トリッキー、クレイジー」


「アトランダム。アトランダムはどうだ? ランダムとは異なり、規則性があり、限りなく合理性だ」


「うん、良いね、そうしよう!」


「じゃ、飯にしよう」


「そうだね、もうみんな起きてくる頃だろうし」

その先代の微睡んだ光景は瞬く間に移ろってゆき、様々な魔導道具で難なく不合理に勝利を遂げれば、大図書館に集う者らの集団心理に呑まれていった。


 それは次第に先代の張り詰めた神経を紐解かれると同時に絶たれた者たちとは深い溝を作り出して。


「……なぁ、それで、あれはどうなった? あの時は色々とキリが良くて完全に忘れ去られていたが」


「あれって何だよ?」


「さぁ」


「君だろ? 京介君」


「俺たちは完全に蚊帳の外ね、あーそうかい」


「あぁ、うん。駄目だったみたい」


「――――此処には無いんだな」


「いや、この世界には存在しないみたい」


「彼奴がそう言ったのか?」


「そうか」


「それってもしかして、火薬と鉱物?」


 惰性で交わしていた淡白な話題に釘刺す無神経な者によって皆の眠っていた神経が研ぎ澄まされる。


「貴方たち、まさか銃を作ろうとしているの?」


 そして、運悪く僅かな隙間から聞き耳を立てていたあの大人しげの少女が徐に扉を開き、狂気の沙汰を目の当たりにしたかの如く表情で凝視していた。


 更なる一挙動が淀みを漂わせる空気を尖らせて。


「あー! あー、こ、これはその軽い冗談だよ!」

「あぁ、そうだっ! ただ生存率を上げるだけだ‼︎」

「色々物騒だろ? 君みたいに弱くても勝てるようにさ」

「やっぱ武力が無きゃ、命が幾つあっても足らないからな」


「そう、ね。じゃあ――」


「ちょ、ちょっと!」


「ごめんなさい、私今気分が悪くて、失礼するね」

早々にそそくさと踵を返して姿を消してしまった。


「い、行ってしまった」


「だ、大丈夫だよね?」


「……」

「……」


 先代は静かに友人と視線を合わせ、颯と瞬いた。

次の瞬間には大浴場一帯に湯気が立ち昇っていた。


「まだ此処の大浴場を使ってたんだね」水面に浮かぶは、不思議と心なしか頬を緩ませる姿であった。


「あれ? そういえば31番のあ……すかさんは?」


「彼奴はお前と同じで大森林での行方不明のまま、奴らのしぶとい捜索でも見つからず、打ち切られた」そう告げられ、「出席番号の呪いはなかったんだ」と何故だか漏らした心情は穏やかなものであった。


「担当は?」


「お前の大好きなあの鎧とうざったらしい金ピカ野郎たちだ」


 友の何気ない言葉に波乱に物思いに耽り始めた。


「……」


「のぼせるぞ」


「うん」


 錬成一同が浴場から上がれば、見慣れた爪痕の鎧兵士が照明が絶えず点滅する薄暗い回廊で待ち侘びたと言わんばかりに凭れ掛けた背を壁から剥がし、鉄塊を引き摺るかの如く足取りで歩み寄ってくる。


「体を綺麗にして早々、すまないが、貴様らを投獄する」


「は?」

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