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ステータスブレイク〜レベル1でも敵対勇者と真実の旅へ〜  作者: 緑川
過去編

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第二十一話 火炙りと生徒との溝

「……」


 周囲を見渡せども、兵士一人さえ見当たらない。

先代は亡き者として扱われたのか、あるいは――。


 そんな懸念に正常な心が危ぶまれつつも向かう。

嫌々、異様なまでに騒々しさを響かせる王都へと。


 その道すがら、原因であろう人垣を目にする。


「ん?」


 恐怖を上回る好奇心に駆られた者たちの面持ちはあまりにも険しく、中には吐き気を催す阿呆まで。


 その一群に加わろうと、そっと隙間から覗けば、「……、ぁ、は?」燃ゆる焔の姿に戦慄が走った。


 そう年端も変わらぬ子供らが生きたまま丸太に括り付けられ、断末魔を上げて火炙りにされていた。


 奇しくも見覚えのある者にも思しき微かな影に、忽ち、杞憂が真実を帯び始め、刹那に目を背けた。


 きっと、違うのだと。ただの叛逆者に過ぎないのだと、何度となく自らを欺くように言い聞かせて。


 だが、そんな現実逃避を思わぬ形で茫然と手を拱く傍観者から引き止める悪魔の一言が告げられた。


「可哀想に、まだ此処に来て六日目だろうに」


「あんまり不敬なことを口にするもんじゃない、誰が何処で見てるか……おんなじ目に合っちまうぞ」


「……六日目。そうか、そうだったのか」


 魔力の充満の影響を直に受けた先代にとっては、著しい時差ボケに襲われても致し方無いのだろう。


「もう三日も、経って、経っていたのか」

己に瑣末な事柄を言い聞かせ、歩みを進めていく。


 決して振り返る事なく、ただ只管に――前へと。


 そして仄暗さに包まれた影に覆われ、行き着く。金網越しの代わり組み手を交わす生徒達の元へと。


「……これで、良かったんだ」


 その儚く消え入りそうな視線は自然と気付かせ、陽光の降り注がれた彼等を先代へと駆け寄らせた。


「お前何見てぇ……京介? なぁ、お前京介だろ‼︎」


「うん、そうだよ」


 無事に生還を果たした生存者に向けての第二声は、「遅えんだよ! 糞野郎」罵声から始まった。


「え?」


 視界は突如、玉座に跪かせる光景に移り変わり、「本来ならば大逆不敬とし即処刑される罪を認め、己の意志で帰還を深く評価し、特例で不問とする」

そう大層雲まで穿つ態度で見下ろし、告げられた。


「別にあんた方の為に戻った訳でも無いし、逃げた訳でもな――」


「黙れ!」


 無駄に打たれ強い先代が口走らんとするも、傍らの兵士が大地に顔面ごと突っ伏させ、次は牢へと。


 過去の先代は閉ざされた牢獄と縁があるようだ。


「何故、戻った?」


「貴方の為に」


「奴ら、あんな場所に居たんだな」


「あぁ、何年もよくバレなかったな。にしても、どう処理するつもりなんだろうな、また俺たちが派遣されるのは勘弁なんだが」


「いや、もう始末されていたらしい。大方皇族が居なかったから有益とされずに殺されたんだろうよ」


「へぇ、仕事が早いな」


「あぁ、恐らく北の連中の仕業だろうな。奴を囮に――」妙な会話は途切れ、鎧と交わす言葉が耳に。


「お前たちに自然で生き抜くイロハを学ばす為、我々は表面上は友好関係の北から得た情報を基に初めて足を運んだのだが、どうやら偽の情報を掴まされていたらしく、危険な魔物も多く生息する『メイズフォレスト』とと云う大森林の奥地へ向かわせてしまった。その際、お前と組んでいた生徒を含め、かなりの人数が命を落としてしまった」


「だから、こんなことに」


「あぁ、だが、あくまで一時的だ。時期に釈放される」


「ありがとうございます」


「…….それにしてもあの場所で行方不明に陥っても五体満足で生還とは、お前は幸運だったようだな」


「僕も結構大変だったんですよ」


「そうか、そう、だな。よく、よく生きて帰ってきた」


「はい……」


 一人の兵士が淡々と歩み寄り、怒号を飛ばした。


「王の命だ、出せ!」


「ハッ!」


 三度、夢の如く目まぐるしく断片的に移ろってゆく、あれからの日々。


 真っ先に友人と出会し、早々に肩に手を添える。


「互いに困ったら、助け合う。この言葉、忘れてないだろうな」


「うん」


「これからはお前からも、ちゃんと言いに来いよ」


「うん」


 視線と言葉を向けても生徒らに平然と躱され、同じ食堂で席を交わしながらも空気のように扱われ、友人とは中々に本音を打ち明けられずに気付けば、完全なる孤立に嵌められ、先代の弱腰では到底抜け出せない泥濘から悶々としつつも唐突に放たれる。


「よぉ、京介」


「あぁ、おはよう」


「身体は平気か?」


「うん、まぁね」


「そうか、じゃあな」


「じゃあ……」


 視界に入れる事さえ頑なに拒み続けていた生徒が何食わぬ顔で屈託のない笑みを浮かべ、平坦な会話ん繰り広げた。然も、過去が忘れ去られたかのように。

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