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夜光浴びる貴方へ  作者: 紫雪
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7.サラダとネットニュース

 席に座ってからも、さっきの余韻は残っていた。


 今までも、色んなニュースやSNSから、アンダーの情報を得ていた。本来家でするべきことが路上で、見られると恥ずかしいとされることが人を集めて、動画まで撮って。不埒であるとはわかっていた。


 けど、こうやって話を聞いたことは無かった。初めて、アンダーを怖いと感じた。


 お姉さんの友達も、きっと体を大切にしないで、金を得るための道具にしているんだろうな。


 染まっちゃいけない。


 ……お母さんたちにも、後でちゃんと連絡しよう。世間一般的には、そういう印象なんだ。心配させないようにしなきゃ。お兄ちゃんが送り出してくれたのが奇跡なくらいだ。


 休憩時間が終わり、バスが動き出した。もう休憩はないそうだ。


スマホで時間を確認すると、日をまたいでいることに気がついた。ああ、もうすぐなんだなって、少し寂しく思う。


 そうだ、星波から送ってもらったプレイリストでも聴こう。


 イヤホンを耳につけて、リンクを読み込む。ついでに、さっき買ったサラダとからあげも食べることにした。入れてくれたおしぼりを使う。


 サービスエリアも、舐めたもんじゃない。からあげをはふはふしながら再生ボタンを押す。


 流れてきたのは、以前私が好きだと言っていた歌手のものだった。それに、星波も気に入っている曲。


 意外と話聞いてくれてたんだなって妙に感心する。


 からあげを食べ終え、サラダの蓋を開ける。中にあるドレッシングをかけて、ばっかり食べとかいう懐かしいワードを思い出した。小学生の頃は良くないとか言われたけど、今なんか知ったこっちゃない。


 曲をバックグラウンドに流しながら、ネットニュースを開く。しゃくしゃくとサラダを食べつつ、ぼーっと画面を見ていた。


 しかし、速報に続く文字を見た瞬間、箸を持つ力が抜けた。


 指に引っかかって箸は落ちなかったものの、気づいたときには箸を机に置いて、両手でスマホを握っていた。


 一斉補導。過去に個人で補導されたニュースは何回も見たけど、これははじめてだ。


 タップして状況を確認する。


 アンダーでの一斉補導。絶望する間もなく情報が入ってくる。午後10時。逮捕者。アンダーの最高権力。30人が補導。


 私が到着する前で良かったとか安心することよりも、あの世界を目にする前に壊されたような感覚。


 バスに乗って、アンダーに向かっているのに、宙に投げ出されたような気がした。


 そんな中、ひとつの写真が流れてきた。野次馬のひとりが人混みの中から撮ったような写真。実際、SNSの投稿から引用されたものだった。


 警察2人に挟まれ、手錠をかけられ歩かされている人物。フードを被り、切れ長な目を伏せている。


 この人がアンダーの王様だったんだ、なんだ。


 関わらなくてよかったような顔をしている。けど、今回の補導はこいつを逮捕するのが本当の目的だったとか推測されている。


 私の世界を壊したのか。怒りが湧いてくる。


 写真を睨みつけて、ふと急にあることに気づいた。この写真、歩いていない。


 野次馬の頭で見えづらいけど、誰かと話しているようだ。カメラに背中を向けていて見えない。


 ダボッとした黒いパーカーを着ているように見える。季節的に違うようだけど、画質が悪くて分からない。


 白っぽい派手髪は明らかにアンダーなのに、警察に補導されているような様子は無い。元王様の両脇にいる警察も、咎める素振りは見せない。


 アンダーで補導されない人間、警察側なのか、ただの一般人で元王様を通報した張本人なのか。


 長髪からして女性?いや、周りの人と比べると背は高い。


 さっきまで持っていた怒りはすっかり消えた。代わりに、写真の投稿元を辿って人物の正体を突き止めようと好奇心が働く。


 元カノ説、親友説、新しい王様説。


 どれもあっているようで違う。


 「晒し系配信者なんじゃない?」


 目に止まったコメント。それに続いて、有名な配信者の名前、30を超えいい歳した配信者の名前が挙がる。


 「長髪だから女性配信者かも、アンダーの」


 ああ、ミラの名前もあがっている。幸い、補導されていることはなさそうだ。けど、ミラは喧嘩を仕掛けていくような人じゃない。


 もっと、正体は意地の悪いやつだ、きっと。


 そう思った、でも目が乾燥してきたことに気づき、しぶしぶスマホの画面を閉じた。


 アンダーまであと少し。

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