阿鼻叫喚
「で、今回はどうしたんだ?」
ダムはいつの間にか頼んでいたエールを飲みながら話の続きを促してきた。オレはあの時の事を苦々しく思いながら話し始めた。
何時も通り、そろそろ勇者ご一行が訪れると2,3日前から広報が回ってきていた。
今回は通常板寄り道しないで魔王倒す一択モードだ。
広報によると勇者様は男で年齢15歳、素直で此方の指導も熱心に受け入れ、この世界を救う使命に燃えているという話だ。
只、難点といえば回りに気に入った人間しか配置しない。ハーレムを築いているらしい。
まあ所詮男なんてそんなものだ。今までもそんな男、はたまた女は沢山来た。が実はその方が扱いやすい。周りが手八丁口八丁で丸め込んでしまえば、すんなりと事が運ぶ。
勇者、神官、剣士、魔法使い、弓使いの5名で動いている。
ご一行が来るのは昼下がり、神器が眠っている湖の中のダンジョン、その湖の近くの村に行かせるのが、この村の役割だ。
オレはのどかな田舎のしがない農夫。
牛を羊を育て、勇者に平和な村が魔王によって滅ぼされるかも知れないという恐怖を植え付け正義という名の名文を心に刻ませる。その平和な空気を感じさせなきゃいけないのに、その空気を一変させる事をオレはしでかした。
いやあれは決してオレのせいではない。
だって牛が蜂に刺され興奮してオレを追いかけ回すなんて有り得ないだろう?
オレはあまりの事態に村の中を牛と共に駆けずり回った。そのため村は一瞬にして阿鼻叫喚となった。
オレは叫び、牛は嘶き、土煙と、子供の泣き声に悲鳴、屋台は壊れ、荷物は散乱し嵐が過ぎ去ったようだった。
案の定、ダムはその話を聞いて腹を抱えて笑いだした。